不正咬合の由来(なぜ、歯並びが悪くなるのか?)
Why we get Malocclusion?
進化?
テオデシウス ドブジャンスキーは、形質、病気、疾患、行動のみならず、多くの現象を進化的視点から見なければならない理由を説明した。われわれには、病気や疾患のように不正咬合に罹患しやくする遺伝子がある。顔、顎、そして咬合という表現型は、遺伝子型が個人の成長の過程で、多くの微妙な環境要因によって影響を受けて表出したものである。しかし、咬合は、環境に対し生存するために進化させてきた遺伝形質が現代社会とは合わなくなっている。不正咬合のような形態が淘汰されないで残っているのは、疾患だとしても適応度を下がらなければ、あるいは、生殖に影響しないものであれば自然淘汰は改良しない。不正咬合の発端は、寒さに対する人間の適応であるが、適応はある種の妥協で、ある状況に対する改良は別の面で不利益を生む。たとえば、人類の二足歩行への進化は大きな脳を作ることを可能にしたが、胎児の脳が産道をとおりぬけるときに母子ともに苦痛をもたらし、頭を前方に向けて舌骨筋が緊張し下顎を後退させ、顎を狭くした。進化は矮小歯、欠損歯を解決策として用意したが、いかにして、歯科医として、このような不正咬合に対し治療に参加することができるかを考えた。

顔、顎、咬合という表現型は、遺伝子型が個人の成長の過程で、環境要因に影響を受けて表出したもの。咬合は、環境に対し生存するために進化させてきた遺伝形質が現代社会とは合わなくなっている。 咬合は、遺伝子の伝達を最大化するように自然淘汰が体を作ってきた挙句の妥協の産物である。残された子孫たちのもっている遺伝子の利益のために存在する。

ヒトは25万年前、アフリカに出現し、その後、脱アフリカを果たした。人類の集団間の環境の問題による淘汰圧がヒトの集団間の差異をもたらした。顔面などの形態も長顔、短顔があるように集団ごとに気候に合わせて熱をためたり逃したりするように進化した。ある時代の進化による解決が、ある時代には問題を発生させた。

人類発祥の地、東アフリカ、グレートリフトバレー、ヒトは25万年前、アフリカに出現し、その後、脱アフリカを果たし、集団間の環境の問題による淘汰圧がヒトの集団間の差異をもたらした。

不正咬合
咬合は、遺伝子の伝達を最大化するように自然淘汰が体を作ってきた挙句の妥協の産物である。残された子孫たちのもっている遺伝子の利益のために存在する。私たちがもつ感情も、自然淘汰によって適応的に作られている。不愉快な感情は、痛み、嘔吐に似た防御反応である。肉体的な痛みを感じる能力が、損傷を守るために進化してきたと同じように不安を感じる能力は、危険や脅威から身を守るために、筋痛、筋疲労が筋肉を使いすぎないように、顎関節症になることが、顎を使いすぎないように進化してきた。不正咬合は、悪い力やランダムな力によって生じるだけでなく、過去に働いた自然淘汰のせいで生じる。

浸透度
浸透度とは、特定の遺伝子をもつ個体のうち、その遺伝子が発現する頻度のことであり、必ず、不正咬合を誘発するような遺伝子があるとすれば、その遺伝子の浸透度が高い、完全な浸透度を有するということになる。一方、他の要因が多数絡まないと発現しないような遺伝子は浸透度が低いことになる。オーストラリアのハブスブルク王家は、マリー アントワネット、マリア テレサを出し、代々、下顎前突が遺伝した。ローマ皇帝のハブスブルク家は、何代にわたって骨格的下顎前突症が遺伝し、骨格的な受け口は浸透度が高いということになる。大山紀美栄(1989),ハブスブルク家の肖像(一),化粧文化,No.20,pp.84-93.

代々、下顎前突が遺伝したオーストラリアのハブスブルク王家 絶滅したホモハイデルベルゲンシス:額がないが顎が突き出て歯の萌出余地が多い。

破格と異常
個体変異という同じ種の中の差異があるが、固体変異のうち、大多数が同じ型で、数%がそれと異なる場合が破格とされる。破格はすべての人の体の中にあり、不正咬合もそれに属する。奇形とは、不正咬合という破格の中で口蓋裂のように生活に支障があるものを指す。

遺伝
犬種によって、顎が出ている犬同士をかけあわせれば、顎が突きた犬が、出てない犬同士を掛け合わせれば、顎が出てない犬が生まれるが、人も同様のことが生じ、たとえば、顎が後退した形質を持つ親から生まれた子供は同じ形質を持つと考えられる。

人類の革命
人における3つの革命がある。500万年前に生存していたオウストラロピテクスは、脳は、500ミリリットルで、ゴリラより少々大きい程度であるが、2足歩行していた。 レイモンド ダートは、1924年、南アフリカ共和国のタウングにある石灰岩の砕石場から出土したタウングベビーと呼ばれる子供の人骨の顎は、類人猿のように突き出しておらず、臼歯の咬合面は平坦で、犬歯は小さかった。大後頭孔が中央にあった為、二足歩行をする人類のものであると主張した。直立二足歩行していた人類の祖先のものであると考えて、「南の (Australo-) 猿 (pithecus)」という意味の(Australopithecus africanus)」を1925年に学術雑誌『ネイチャー』に発表した。ダートは、進化論を教えて大学を馘首された医師、ブルームと、南アフリカの4つの洞窟で、初期人類の化石を大量発見した結果、300-100万年前の南アフリカには、かなり多くの人類が住んでいたことを示したが、うそつき呼ばわりされ、熾烈な迫害をうけた。納得させるまで約4世紀半要したことになる。 アフリカのタンザニアの360万年前の地層から2足歩行の足跡が発見された。親指が前方を向き土踏まずがある。火山の噴火から逃れようとした時に足跡が残されたと考えられる。足跡を残したアウストラロピテクスアファレンシスの骨盤の中に、人類の骨の誕生の秘密が隠されていた。

アフリカのタンザニアの360万年前の地層から2足歩行の足跡が発見された。親指が前方を向き土踏まずがある 進化論を唱えて大学を馘首、迫害されるダートを擁護す流ブルーム
ヒトは脚のばねを利用して効率良く走る仕組みを得た。長時間走るのに必要なお尻の筋肉、大殿筋が進化し、この大きな大殿筋によって走っている最中も安定させることを可能にした。

人類の第1の革命:道具使用が原因?
220万年前の出現した1964年にタンザニアでルイス リーキーによって発見されたホモハビリスは、脳は、750ミリリットルになり、発見者のリーキーは顎の退化が始まっていて、人の第1の革命といわれる道具使用を始めていたことを示した。ホモハビリスはhandy man(器用な人)から由来し、オウストラロピテクスを滅ぼしたと考えられている。人直立歩行するようになったことで、手を使えるようになり、それが刺激で脳が発達し、新しい道具を考案し、さらに脳の発達した。実際、この石器を使い始めた頃と一致して、顎の筋肉の使用が減り、顎の筋肉が弱まり、顎の筋肉で抑制されていた頭の骨が遺伝子の突然変異で解放されて大脳化、顎の弱体化の変異が生じた。

HOX遺伝子
200万年前、ホモハビリスが道具を使い始めて、ヒトの文化もDNAをしのぐスピードで共進化した。1984年、HOX遺伝子が発見され、Stephen Jay Gouldの主張するカンブリア紀の爆発の説明が可能になった。HOX遺伝子にスイッチが入ることで、他の機能を持つ遺伝子にスイッチがはいり、体の部分が形成される。HOX遺伝子が突然変異をおこして劇的な進化が起こるのである。食べすぎ、ゲームをしすぎ、アルコールを飲みすぎ、噛まなない、口を開けている時間が多ければ、肥満、近視、アル中、不正咬合が誘発されるが、こうした状態が少しづつ進化するわけでなく、HOX遺伝子の存在によって変化はすぐにあらわれる。ブラキエーション、ナックルウォーキングしていた霊長類が、直立2足歩行する猿人に進化した背景も、HOX遺伝子の突然変異がある。

ホモハビリスの時代の石器使用で、顎の筋肉の使用が減り、顎の筋肉が弱まり、顎の筋肉で抑制されていた頭の骨がHOX遺伝子の突然変異で解放されて大脳化、顎の弱体化の変異が生じた。

ブラキエーション、ナックルウォーキングしていた霊長類が、HOX遺伝子の突然変異によって直立2足歩行する猿人に進化し、顎関節症,不正咬合をきたすようになった。

生後8か月後に首がすわり、頸前湾が出現

生後10か月後に首がすわり、胸後湾が出現 生後1年後につかまり立ちし、腰前湾が出現

人類の第2の革命:火の使用が原因?
19世紀後半、「固体発生は系統発生を繰り返す」と明言を吐いたヘッケルは、東南アジア方面で人類の進化が起こったと主張した。デュボアはこの説を信じ、軍医になってインドネシアに渡って発掘を行ない、発見した化石を「Pithecanthropus erectus」の学名を与えた。 ホモエレクトス(原人)の脳は大きくなり第2の革命といわれる火を使用し、焼いてやわらかくする為に、顎の退化がさらに進行した。

人類の第3の革命:農耕が原因?
我々の祖先であるホモサピエンスは、脳が1500ミリリットルになっていた。1万年前、大型動物の種は、殆ど食べつくした為に始まった農耕による定住生活は、運命は、土地に結びついているので簡単に離婚することが出来なくなった。マンモスは、1万2千年前にヨーロッパから絶滅した。多くの大型動物は毛を失い、日中狩りのできる長距離ランナーになったヒトの手によって絶滅した。 1万年前、大型動物の種は殆ど食べつくした為に農耕が始まった 。近代文明が発祥した理由に農耕にあるが、農耕によって、1つの作物に頼った結果、ビタミン、ミネラル不足、あごが退化し、不正咬合が始まったのかもしれない。

1万年前、大型動物の種は殆ど食べつくしてしまい、農耕、定住が始まり、不正咬合が始まった。 野生の稲は湿地に生えるが、水が枯れると種をつける性質があることを見つけた先祖は農耕を始めた。

哺乳類になると、歯の位置で歯種の分化が生じる。歯の位置はテコの原理で説明され、前方は顎関節から離れ開口ができるが咬合力は弱い。後方部は、開口量が小さいが咬合力が強く、多咬頭の臼歯に進化した。類人猿の臼歯部は直線的で、後方で狭まり、前歯部と臼歯部の直線があるが、ヒトは、放物線状で湾曲する。アファール人はその中間型、アフリカヌスは放物線状で、歯隙も10%以下に減る。ヒトでは、犬歯が退化し、犬歯の誘導によって、歯ぎしり、くいしばりなどの側方運動ができるようになる。八重歯は、側方運動が阻害され、咬耗、楔状欠損、あるいは、顎関節症を起こすことがある。犬歯はヒト化の過程で退化した新しい退化器官である。

ホモサピエンス:額があるが、顎が後退し、歯の萌出余地が少ない。

獲得形質の遺伝
1809年、フランスの哲学者、ジャン バティスト ラマルクは、著書の「動物哲学」で、良く使用する器官は発達し、それが不必要になったり、使わなくなれば退化するという「要不要説」、器官が発達したり、退化したりして形質が生まれ、それが子供に遺伝して、進化が生じるという「獲得形質の遺伝」を主張した。

ラマルクは、環境からの圧力が生物に対して途方もなく、長い時間働きつけることによって「用不用」が異なり、生物の形態は変化し新しい種が生まれるという自説をキリンで説明した。草が不足し、キリンの祖先は、木の葉を食べるしかなかなく、首の伸ばすことを余儀なくされ、何世代も首を伸ばすことを繰り返す結果、長い首を獲得したと考えた。当時の重鎮、ジョルジュ・キュヴィエらに攻撃され、不遇の生涯を送った。 ラマルクの器官は使用しないと退化するとなると、モグラの目は土の中で使用しなかったから退化したことになる。ヒトの尾てい骨は、ヒトの先祖がもっていた尾が使用しないために次第に小さくなり、退化したもの。噛む必要がなくなって退化した顎が子供に遺伝するということになる。

ラマルクは、器官は使用頻度によって、進化、退化すると考えた。
暗い土の中にいるモグラの目は退化した。

ルイセンコ裁判(1940)
1940年、ヴァヴィロフは、獲得形質は遺伝するとするネオ・ラマルキズム論を展開するルイセンコを批判して逮捕されシベリアに送られ、獄死した。ネオ・ラマルキズム論は一生懸命仕事すれば、報われるとしたいスターリンの思想に適していた。

ルイセンコ裁判、左端:ルイセンコ、右端:スターリン、パラノイアのスターリンはバヴィロフをシベリアに送った。 ルイセンコを批判してシベリアに投獄され、獄死した来日経験のあるヴァヴィロフ、見送った日本人に「サクラジマダイコン」と大声を発したという。

パウル カンメラー
パウル カンメラーはサンバガエルを3世代にわたって水中産卵させたところ、2代目でわずかに、3代目で第1指の瘤が発現したと発表した。つまり、水中で交接することでこの形質が獲得されたというのである。ところが公表された標本を他の研究者が検証してみたところ、この瘤はインクを注入されたものであることが発覚、実験は捏造であると指摘され、本人は自殺した。その後、サンバガエルの水中飼育に成功した例はなく、環境によって、親が得た獲得形質を子に遺伝子を通じて伝えることができない、親が獲得した、咬合、あるいは不正咬合は遺伝しないと考えられるのではないだろうか?

サンバガエル

ロバート チェンバース
ラマルクの死後、グレゴール メンデル(チェコ)という修道士が修道院の庭で豆を選んで栽培していた頃、ダーウィンも生物の勉強をしていた。1844年、生物は進化するということを書いた「創造の自然史の痕跡」という本が匿名で発表された。それに対し、宗教界は著者を調べあげ、吊るしあげようとしていた。それをダーウィンを震え上がらせ、進化論を唱えることを躊躇させていたという。

Gregor Johann Mendel Charles Robert Darwin

自然淘汰説
「ベイツの偽態」で有名なベイツとアマゾンで昆虫採集していた虫屋のアルフレッド ウォレスは、その後、ベイツを別行動し、インドネシアのイリアンジャヤに行き、昆虫採集旅行中に、環境が生物に生存に都合がよいものを振り分けるという「自然淘汰説」を思いつき、ダーウィンに手紙で説明した。 これと同じ説をしたためていたダーウィンは慌てたとされている。ダーウィンも、キリンの長い首の方が食物にありつき、選択されて子孫を残して増えていったのだと「自然淘汰説」を考えていた。自然淘汰とは、有利な変種が保存され、有害な変種は捨て去られることであるが、1859年に刊行されたダーウィンの「種の起源」によると、ある特徴が発達するのは、それを持っている方が、持たない方よりも都合が良いからだとしている。顎が小さい方が会話には都合が良い。あごが大きく、強い顎が必要が無くなっただけでなく、顎が小さい方が都合がよく選択されたのかもしれない。霊長空隙が残っていたら、会話に不都合になるはずだ。動物の雄は、交尾相手に自分の素晴らしさをダンスなどでディスプレイする。ヒトの男性は会話を使って女性にディスプレイするために、顎が退化する必要があった。ダーウィンは、案の定、宗教界から吊し上げられることになるが、ハックスリーは、攻撃を身代わりになってダーウィンを擁護した

虫屋のアルフレッド ラッセル ウォレスは、ダーウィンに自説、自然淘汰説を手紙で説明した。 Thomas Henry Huxleyは、教会のダーウィンへの攻撃の身代わりになって、擁護した。
ダーウィンによると、ある特徴が発達するのは、それを持っている方が都合良いからだという。顎が小さい方が会話には都合が良い。顎の前突、空隙は、会話には都合が悪かった。 ダーウィンの性淘汰説。ヒトの後退した顎、体毛の喪失、お椀型の乳房、大きいペニスは性淘汰に起因している?

ロナルド・フィッシャー(ランナウェイ仮説、フィッシャー仮説)
ロナルド・フィッシャーは、クジャクの雄の尾が長くなった理由を「ランナウェイ仮説」で説明した。雄の尾を少し長くする遺伝子に突然変異ができ、長い尾の雄を好む性質を雌に発現させる突然変異遺伝子ができ、この遺伝子をもつ雌は、尾の長いオスを産む率が高まって、この遺伝子が広まり、どんどん走るように(ランナウェイ)進化し、尾の短い雄は、雌に相手にされず、淘汰されていった。長くなると、生存しにくくなるデメリットと、雌にもてるメリットが釣り合ったところで、羽の長さが落ち着いている。顎が後退した異性を選択し、どんどん歯並びが悪くなったとも考えることもできる。提唱者の名前を採って「フィッシャー仮説」とも呼ばれる。

ロナルド・フィッシャーは、異性に好まれる性質を発現させる突然変異遺伝子は、広まっていくと主張した。

クジャクの雄の尻尾は雌に性淘汰されたように、顎が後退した異性を選び、不正咬合が広まる?

哺乳を効果的にするため?
哺乳類は、夜行性から昼行性になり、臭覚が退化し視覚の発達しだした。口裂が狭窄し、唇、頬が形成され、哺乳が効果的になったが、口腔容積が狭まり、ヒト化して、会話のためにさらに、せばまり、そして、咀嚼器官の退化が始まり、不正咬合を来すようになった。

哺乳類は、哺乳を効果的にするため、唇、頬が形成され、口裂が狭窄し、ヒトは会話のためにさらに顎が狭まった。

形質は融合されない。
ダーウィンは、両親から受けついだ形質は、子供の中で融合すると主張した。青い目の男と黒い目をした女から生まれた子供は、融合されない。目の色の形質が、黒、茶は優性遺伝し、灰、青は劣性遺伝する。ダーウィンは形質は融合されるとしたが、融合されないことが判明した。

ダーウィンは形質は融合されると述べたが、融合されない。黒、茶はの目は優性遺伝する、 灰、青の目は劣性遺伝する。形質は融合されない。

A.ワイスマン(1885)
1885年、A.ワイスマン(独)は、ダーウィン死後、体細胞と生殖細胞の間には一切の関係がなく、遺伝は生殖細胞だけを通じて行われることを明らかにした。固体の中で生じた形質の差が遺伝することによって種の中で蓄積していくと考えたダーウィンに対し、彼は、ネズミの尻尾を切り取り、切り取られたネズミが子孫に伝わらない。ワイスマンが唱えた生殖質連続説で遺伝子は不変であることを証明した。尻尾を切断しても遺伝子が変わり、生殖細胞に影響を与えることが起こらない限り「獲得形質の遺伝」はありえない。体細胞と生殖細胞との間には、一切関係がなく、遺伝は生殖細胞だけを通じて行われ、生殖細胞に影響を与えない場合は、遺伝されない。これによると、数代にわたって軟食をしても、遺伝子が変わらない限り、獲得した不正咬合は遺伝子しないことになる。不正咬合になったとしても、その人の子は不正咬合になるとは限らない。形質を子孫に伝えるのは、遺伝子だけだからである。

A.ワイスマンは、ダーウィン死後、マウスのしっぽ切りで、細胞と生殖細胞の間には一切の関係がなく、遺伝は生殖細胞だけを通じて行われ、獲得形質は遺伝しないことを証明した

メンデルの法則は1901年に「突然変異説」を唱えたド フリーズらによって1900年に再発見され、このメンデル遺伝学とダーウィンの自然選択理論が集団遺伝学によって融合を果たし、現代進化理論が確立した。遺伝学は、ダーウィンの理論のミッシングリンクを埋め、遺伝形質の形成や選択のしくみを明らかにした。自然による選択を受ける単位は遺伝子で、自然は適したものを選択すると説明した。遺伝形質とは、遺伝する形質で、形質発現とは、遺伝子の働きでその形質が発現することで、表現形とは、発現した特長である。形質発現は優性の場合と劣性の場合がある。どちらかが、優勢、一方が劣勢である場合、両者は、対立形質といわれるが、優性遺伝の場合、両親のうちのどちらか一方からその遺伝子を受けつげば発現する。片方の正常な対立遺伝子がカバーしてくれる場合は、遺伝子をもっている状態であるのでキャリアとされる。まぶたの二重は優性遺伝し、一重は劣勢遺伝するので、両親の一方が二重まぶたで、子が一重だったら、後、二重瞼になることになる。弥生人は、寒冷適応で一重まぶた、歯、顎が大きくなり、不正咬合になりやすい。20万年前、アフリカで誕生した祖先であるホモサピエンスが5万年前、アジアに進出し、3万年前、その1部がシベリアにむかった。-50°の中で顔や体を適応進化させた。顔脂肪が増え、顔全体が平坦になり、瞼も厚く、一重に進化した。神経が両側支配になり、ウィンクがうまく出来なくなった。寒いので、顔を微妙に動かさなくなった性質が日本人に受け継がれた。寒いので、顔を微妙に動かす必要がなく、神経が両側支配になり、ウィンクがうまく出来なくなったのも突然変異に起因している。 耳垢は外耳の表皮である。耳垢には、カサカサタイプとベトベトタイプがある。ウィンクができるできない人が居るが、ウィンクをできる人はべとべとタイプで、できないタイプは、カサカサタイプである。

寒いので、顔を微妙に動かす必要がなく、神経が両側支配になり、ウィンクがうまく出来なくなった

 

寒冷適応を受けた一重まぶたの人は、歯、顎が大きくなり、不正咬合がひどくなる傾向がある。まぶたの二重は優性遺伝するので、片親が二重だったら、一重でも後、二重になる

20世紀の初頭、メンデルの法則を再発見した3人の内の一人、ド フリーズ(オランダ)は、キリンの首を伸ばそう、像の鼻を伸ばそうとしたために伸びたのではない、獲得形質がキリンの首を長くしたのではなくたまたま長くなるような突然変異が生じたものが淘汰で都合よく適応して残ったのだとして「突然変異説」を唱え、ダーウィンの「自然淘汰説」を擁護した。ド フリーズは、獲得形質がキリンの首を長くしたのではなくたまたま長くなるような突然変異が生じたものが淘汰で都合よく適応して残ったと主張した。顎も突然変異で、後退し、狭くなった。

ド フリーズは突然変異説を唱えた。 体がくびれるようにして増殖していくイソギンチャクなどは、体細胞に起こった突然変異が次世代に伝わっていくが、受精卵でしか増えないような動物は、体細胞で起こった突然変異は遺伝しない

2003年のサイエンスでは筋肉を形成するミオシンというたんぱく質を作る遺伝子が機能しなくなったことで、脳の抑制がほどけ、大脳化が進み、顎が後退した。ヒトは、新たな遺伝子の獲得ではなく、遺伝子の退化によって不正咬合がもたらされた。

寒冷適応
20万年前、アフリカに誕生したホモサピエンスは5万年前旅立ち、4万年前、アジアに到着し、3万年前、シベリアに到達した。凍った肉を食べ、衣服に使用する動物の皮を噛んでなめしたため、歯が大きく、頑丈になった北方アジアの人が、日本に到達し、渡来系弥生人となった。在来の縄文人の歯は、柔らかいものを食べる文化に適応して歯が小さくなって、切端咬合になっていた 。

25万年前、脱アフリカを果したホモサピエンスが5万年前、アジアに進出し、3万年前、その1部がシベリアにむかい、-50°の中で顔や顎、歯、体を適応進化させ、顎、歯が大きくなり、朝鮮半島を経由して弥生人になり、縄文土器に触れて歯並びが悪化した?

食文化
2800年前、シベリアで、この特徴を獲得した先祖が日本にやってきた時、すでに、縄文人が住み着いていた。縄文人に渡来系、弥生人がまじりあった。彼らには、親知らずが存在している。江戸時代の人の歯列は、親知らずが入らなくなってさらに、顎が小さくなって退化が進んでいる。徳川家康の顔は短顔型をしているが、250年経った12代将軍の徳川家慶の顎は、後退し、上顎歯は前突し、長顔型になっている。将軍は刺身、炊き立てのご飯、庶民は、玄米を食べていたことに関係あるかもしれない。眼球の大きさは2.5cmで、両方で5cm、鼻腔、側頭筋が必要であるので、顔の幅は少なくとも9cmは必要になる

家康 家慶
家慶の頭蓋、下顎が後退し、上顎前歯が前突している

長期であっても、初期環境だけによって、本来人間が備えていないはずの構造上の装備が新しく獲得されるとは考えられない。現在、ラマルクの説は否定され、ダーウィンの説が妥当だとされているが、本来備えているはずの生得的装備が、環境上の悪条件によって退化、あるいは消失してしまうというマイナスの獲得は起こっている。食文化によって軟食化が進めば、顎が退化し、顎が狭くなり不正咬合に発展させる。

環境上の悪条件で退化などのマイナスの獲得は起こる。軟食化が進めば、顎が退化し、顎が狭くなり不正咬合を誘発する。

環境悪化?
最近の子供は、体が大きく性発達が早く、歯並びが悪く、多動症、注意力散漫、学習障害等が見られすぐに切れ易いといわれる。分子レベルでは1世紀前迄には存在すらしていなかった飲み水、空気等の取り巻く環境、そして、生活形態、習慣、加工食品の流行等の食習慣等が変貌し、歯並びは、それらが織り成す相加作用、あるいは相乗作用が遺伝のみならず影響されると想像されるが、不正咬合に至るルートを検証し決定要素を特定することは出来ないし、生体の感受性も理解されていないので、環境が影響しているとは言いきれない。成長期の小児は感受性の高く、一連の反応が開始され、永続的なプログラムが組み込まれ、根底にある生理システムが影響を受け、行動、習癖、かみ合わせ、成長の進路が決定されていると考えられるが、問題となる環境中の空気、水、食物が、体内に摂取、代謝されどのように影響するのか、遺伝、環境因子によって影響を受けて、発達の行き先を狂わせ、変化を余儀なくさせ、かみ合わせ、成長のみならず、社会行動に波及しているのか、環境によって免疫系が影響された結果生じる甲状腺ホルモン不足と小児の精神発達が結び付けられており、小児期における1種の精神発達とかみ合わせには、生物学的反応の共通点がある。なぜ、人は、それぞれ個性的な歯並びになったり、知能、運動能力に差が出現するのか?人は、それぞれの素質を持つ。素質が異なれば、同じ環境でも環境が及ぼす効果が異なってくる。歯並びにしても、遺伝と環境の相互作用を受けることになる。どんなところにすんでいるか、どんなものを食べるかなどのライフスタイルが、異なる個体が環境に働きかけ、異なる環境を招来する。環境が一定でも固体が異なればその効果が異なる。人は、遺伝と環境に影響をうける。可塑性のある成長期は特に、環境に影響を受ける。

R.ソーンヒル(米)、A.P.メラーらは、環境悪化が対象性の体の発達の阻害になることを発見した。

R.ソーンヒル(米)、A.P.メラーによると、体内の寄生虫によって対象性の体の発達の阻害になる。おっぱいが対象な女性は子どもをたくさん産んでいるという。対象性で、寄生虫(パラサイト)に強い、免疫力のある、子どもを多く産める女性を選んでいるという。チェルノブイリ原発事故後に、その地に住む燕の尻尾が非対称になっている。犬歯の対称性が喪失しているのは、チェルノブイリ同様、環境破壊、汚染が原因であるとした。チンパンジーの雌は、歯並びの良い雄を選んでいるという。

チェルノブイリ 環境悪化は燕の尻尾の非対称性に影響する

J.T.マニング(リバプール大学)は、オスの孔雀の玉模様の数が多いほど、配置も対称性であることを発見したので有名であるが、博物館に保存されているゴリラの標本では1850-1980にかけて100年以上の間に左右の犬歯の対称性がなくなって八重歯になっていることを発見した。特に20世紀初頭からの変化が激しくなっていることを見つけた。環境因子が不正咬合に起因の一因であるとも考えられる

マニングは20世紀初頭からゴリラの犬歯の非対称性に気付いた。 浪江町の耳なしウサギ

胎内環境?
胎児が母体内にいるとき、母親が病気に罹患すると、顔の発生、発達に影響が出て、顔に非対称性:Fluctuating Asymmetryが出現し、醜さの原因になることが示唆されている。Fluctuating Asymmetryとは、カニのはさみのように、すべての個体に一貫して左右差があるのではなく、個体によってバラバラであることをいう。これは、必ずしも寄生生物による影響ではなく、遺伝子の欠損、有害物質の影響で生じることもあるという。ガガンボモドキの研究で有名なランディ ソーンヒルによると、この原理は、人間にも当てはまり、顔が良いほど、体の対称性が高く、健康、運動能力、精子の機能にも相関していることを指摘した。

胎児が母体内にいる時、母親が影響を受け、顔の発生に影響が出て、顔に非対称性:Fluctuating Asymmetryが出現するという。

 

 

エピジェネティックス変異
ビタミン サプリメントの成分には、形質発現抑制を誘発するメチル基由来の分子が入っている。アグーチ遺伝子のスイッチをオフにされると、親よりも癌、糖尿病、不正咬合の発生率が低下することになる。母親への栄養の補給で、子どもの遺伝子そのものを変えることなく、発現の仕方だけを変えている。エピジェネティクス(後成遺伝学)によると、遺伝子設計は書き直せるという。2005年、マネル エステーリェル(スペイン国立癌センター)によると、一卵性双生児のメチル化パターンは、出生時が同時だが、成長につれて差が出現するという。双生児のエピジェネティックパターンに差が出現する原因は、化学物質、サプリメント、食習慣、喫煙などによって差が出現するという。

化学物質、サプリメント、食習慣、喫煙などによってエピジェネティックパターンの差が出現する。エピジェネティックな影響は遺伝子型を変更せずに表現型を変える

メチル化による改変が世代ごとに消去されないので進化ということになる。ラマルクが主張し、ダーウィンによって否定された親、祖父母が獲得した形質は子孫に遺伝していることが確認されている。メチル化の影響は、出生前に起きている。メチル化が起きれば遺伝子がオフになり、メチル化がなくなれば遺伝子がオンになる。メチル化は、どの遺伝子がオンになって、どの遺伝子がオフになるのかが今後の課題であるという。メチル化の強弱によってオフになりきらない遺伝子が出現する。悪い影響が子孫代々まで悪影響を及ぼす。形質が遺伝するのではなく、胎児のときの親の行動が子供の形質を決定することになるという。


バーカー説
表現型とは遺伝子型が形態として出現する型のこと。エピジェネティックな影響は遺伝子型を変更せずに表現型を変える。デイヴィット バーカーのバーカー説、節約型表現型説によると、胎児期に栄養が乏しいと、節約型の代謝を発達させて、エネルギーを蓄積するようになる。ジャンクフードは高カロリーだが、胚発生時に必要な栄養素がほとんどないので、妊娠1週目にジャンクフードを摂っていれば、外の栄養事情が悪いと受けとり、少ない食糧で生き延びられる体の小さな赤ん坊を作る。母親が妊娠初期に栄養不足だと、節約型の代謝をする小さな体の子が生まれ、脂肪を蓄積して太る。もし、親が柔らかい食餌していれば、それに適応した子どもの顎を作る。形質が遺伝するのではなく、胎児のときの親の行動が子供の形質、歯並び、顎を決定するかもしれない。

デイヴィット バーカーのバーカー説、節約型表現型説によると、胎児期に栄養が乏しいと、節約型の代謝を発達させて、エネルギーを蓄積するようになる

エピジェネティックな変化は生殖細胞系を通じて、何世代も伝達されるという。祖母が妊娠中に喫煙した人は母が妊娠中に喫煙していた人よりも多く喘息を発症している。女児が生まれる時、その女児はすでに卵巣に一生分の卵子を持っているので、卵子はあなたの母がまだ祖母の子宮の中にいる間に作られたものである。タバコを吸っていた祖母が娘の一生分の卵子にエピジェネティックな信号を送る。母性遺伝に関し、あなたの遺伝子型にあなたの祖母が得たメチル化の書き換え情報が加わる可能性が高くなる。寒い冬を経験した女性の孫も低体重で生まれる。獲得形質が遺伝したかのようにみえる現象のひとつがエピジェネティックス変異で、遺伝子自体は変異していなくても、その遺伝子をON/OFFさせることができるメカニズムのことで、一見その遺伝子が変異したかのようにみえる。エピジェネティックス変異は、生育環境の影響を受け、世代を通して遺伝する。これが、獲得形質の遺伝とは言えないのは、エピジェネティックな制御を受けるかどうかは、環境が規定するが、その制御を受けられる遺伝子かどうかは、最初から遺伝情報として決まっているという点で、厳密には獲得した形質が遺伝するわけではないことになる。正常に萌出する歯列を並べる遺伝子がオフにされ、不正咬合になる。

妊娠初期に母親がジャンクフードを食べていると、節約型の代謝をする小さな体の子が生まれ、脂肪を蓄積して太るようになる

メチル化
メチル化とは、メチル基という化合物が遺伝子に結合することで、DNA配列を変えずに遺伝子の発現作用だけがオフになる。つまり、遺伝子の発現抑制をもたらす改変をDNAのメチル化という。太ったクリーム色の雄と交尾した太ったクリーム色の雌は、痩せた茶色のベビーを産んだ。やせた茶色の子マウスのアグーチ遺伝子は、本来あるべき場所にちゃんとあって太ったクリーム色のマウスを作る指示を出す用意していた。妊婦マウスが食べたビタミンサプリメントの成分の1部が胎内の胚に届いてアグーチ遺伝子のスイッチをオフにし、形質を発現させなかった。その遺伝子に付着した化学物質が遺伝子の実行を抑制したのだ。

メチル化とは、メチル基という化合物が遺伝子に結合することで、DNA配列を変えずに遺伝子の発現作用だけがオフになる。つまり、遺伝子の発現抑制をもたらす改変をDNAのメチル化という

咬合、不正咬合が遺伝だというと、バイアスにかかっていると批判されなくなった。咬合すら遺伝子が持つ設計図に大きく依存するからである。遺伝子が形質を決定するが、環境や遺伝的要因が凌駕することもある。不正咬合は、犯罪者と同様に、遺伝子がまともであれば、生育環境は重要でないかもしれない。遺伝子が問題がある場合は、環境が大きく成否を分け、環境がよくないと、問題のある遺伝子を持った子どものリスクが高まることになる。遺伝的要素があると判れば、遺伝子を突き止め、染色体上の位置を確認し、最終的には遺伝子を分離し、身体の何がコードしているのか、どんな働きをもっているのか調べることになる。その人の形質は2人の親の遺伝子によって作られる。何世代もの進化の産物であり、生物36億年間の情報が集められている。体格も皮膚の色、髪の毛の太さ、色、歯の形、大きさなどが生まれながらに決定されている。体重の決定要因すら一番大きいのが遺伝である。ある種のタイプの遺伝子をもったマウスは、餌をほとんど与えなくとも太る。思考も遺伝子の産物であり、知能指数はほぼ遺伝する。ここの人の形質を特徴づけるもっとも重要な要因は遺伝子であることに疑問の余地すらない。

DNAの0.1%、1/1000、300万は違い、30億の塩基があれば、この違いは大きい。300万の違いは、身長、パーソナリティ、知能、口や歯の大きさ、形など、遺伝的な側面の多様性の原因となる。1988年、トマス J.ブチャード Jr.は別々に育った一卵性双生児は、とともに育った一卵性双生児と同じくらいよく似ているという結論を出している。遺伝子は体型、容貌を決定する力があるだけでなく、どう行動し、感じ、どんな人生経験するかまで影響を及ぼすことが示された。生まれが育ちを凌駕しているケースを次々発見されている。

不正咬合の原因は遺伝的か環境かは一卵性双生児の相関関係を調べることだ。相関関係は0.75だと遺伝率は75%になる。IQスコアの相違の内、3/4は遺伝子の違いに起因することを意味する。第2に一緒に育った、一卵性双生児と二卵性双生児を比較することだ。第3の方法は養子と親や兄弟姉妹を調べること。同じ親の養子になった者同士を比較することで、このタイプの組み合わせの相関係数は0.32である。遺伝的に無関係な子供たちが同じ親に育てられると別々に暮らした子供よりも32%余分に似てくることを意味する。一緒に育てられた一卵性双生児のIQの相関係数は0.86、別々に育った場合は0.75で、この差は、IQの違いの11%は共有した環境に起因することになる。

Barbara McClintock(1951)
1951年、Barbara McClintockはジャンピング遺伝子(正式名、トランスポゾン)がストレス時にジャンプし、転移することを見つけた。 マクリントックは、トウモロコシにおいて大きなストレスを受けると、DNAの特定の塩基配列をごっそりある場所から別の場所に移動させたり、時には活動中の遺伝子の中に挿入させたり、ゲノムの1部は大掛かりな変異を起こすことを見つけ、彼女が発見したこの転移遺伝子群はジャンピング遺伝子(正式名、トランスポゾン)と呼んだが、だれからも相手にされなかった。1980年代、トウモロコシ以外でもジャンピング遺伝子が発見され、彼女の功績が認められ、1983年、ノーベル賞を受賞したときは81歳になっていた。 トランスポゾンは、自分の遺伝子のコピーを作り、ゲノムの別の場所にコピー&ペーストをする。また、別の場所にカット&ペーストをする。たとえば、ショウジョウバエのジャンピング遺伝子が、その系統を強固に変え、飢え、高温、長い寿命を獲得する。マクリントックによると細胞レベルで対応しきれない圧力が内部あるいは外部からかかると遺伝子レベルで対応するのがこの転移だという。気温が高い、水が少ないなどが誘因になり、トウモロコシは生存のための変異に賭ける。変異すれば自然淘汰が適応する変異を子孫に残し、適応しない変異を断絶させるのが進化である。

Barbara McClintock トウモロコシは、気温が高い、水が少ないなどが誘因になり、トウモロコシは生存のための変異に賭ける

1987年、ジョン ケアンズ(ハーバード大学)は、牛乳嫌いの大腸菌に牛乳以外の食糧を与えないと大腸菌は乳糖不耐性という性質を克服するように変異する。大腸菌は、どの変異を起こさせたいかを選択することができ、獲得した形質は遺伝させるメカニズムを持っていると発表した。1988年、バリー ホール(ロチェスター大学)はケアンズの発表を追試し、大腸菌が乳糖消化能力がついたこの突然変異速度が急速に上がったことを超変異と呼び、大腸菌は生存のために平常時の1億倍の速度で変異することを発見した。乳糖以外にも食糧がない飢餓状態におかれると、変異速度を上げることが確認された。

牛乳を飲み続けると、大腸菌は、乳糖不耐性という性質を克服するように変異する。


大脳化?
口腔は、摂取器が、歯の成立とともに捕食器になり、哺乳類になると、唾液腺の発達、歯の分化とともに、咀嚼器に転じた。木の登った原猿類からニセザル類に、真猿類へと枝分かれした。体が大きくなった真猿類は、ブラキエーションをすることで、前肢と後肢の分化で四肢が独立して動かすことが可能になり、大後頭孔が横から下方に移動し直立する準備が整った。原猿類やニセザルは、夜行性で、臭覚に頼り、ツパイのような原猿類は、目が側方についているものは、視野が広いが立体視できないのであるが、樹上生活で目が前方に移動して立体視が可能になり、対象そのものの奥行きである立体像を認知できる視覚を得て、臭覚を捨て、視覚を選んだ為に、情報が多く入り、ヒト化を促し言語の使用に繋がり、処理する大脳の領域が増大していった。
狩猟性のヒトニザルのように直立した動物は、体に対して直角に胎児の頭の角度を維持し、歩行の際、頭が前に向くことが生じた。体を直立姿勢に保持し、手と足を別の仕事に分離し、脳を発達させた。

霊長類は、目を前方に移動させ、視力を発達させ、大脳化を促した。

霊長類は、特徴がないところが特徴といわれ、非特殊化の哺乳類である。特殊化しないのは、霊長類が生息した環境が森林という捕食者に攻撃を受けないで、生存することが可能な場所だったからである。ヒトの特殊化は、直立させ手が自由になり顎を使用を減らし、顎、歯の咀嚼器官の退化をもたらした。口腔の退化は、言語器官へと進化させた。その結果、不正咬合がもたらされるようになった。

二足歩行することで、自由になった手が使いかってのよい道具になったとして、ロンドン自然史博物館、ケニス オークリーは著書、「道具製作者としての人間」において、石器の制作と使用が人間の進化を推進したとする説を唱えた。ニコラス トスによると、石器作りには、すぐれた運動能力と認識能力の調和が必要なのだという。これらの石器には、食物、肉、食物の痕跡があり、石器を手にして、腐肉動物(スカベンジャー)漁りを始めて動物性蛋白質を手に入れることが可能になり、ヒトに大脳化をもたらした。 ティム ホワイトも、ヒトは石器を持つ2足歩行する腐肉漁りするハイエナになったのだと説明した。 現在でもアフリカ狩猟民は、肉食獣の食べ残しの骨を拾ってきて、骨を砕き骨髄を食べる。 石器使用と腐肉漁りは大脳化の扉を開く鍵で、石器による肉食の効率化が、大きな脳を支えるエネルギーになった。脳はカロリーが最も必要とし、大脳化に貢献したのは、肉食化だとされている。100g当たりのカロリーは、植物は10-12カロリーであるが、果実は50-100カロリー、肉は200キロカロリーである。 人の脳は体重の2%に過ぎないが、エネルギーは全体の20%を消費している。脳の肥大化によって、エネルギー源を摂取する必要性に迫られた。肉には、カロリー源であるタンパク質と脂質が凝縮されている。食事に肉を加えたからこそ、初期のホモ属は、アウストラロピテクスをしのぐ脳を作る余力を得た。肉を入手するという新しい生計の道は、社会的な秩序と協調が必要になった。初期のホモ属は、チンパンジー同様、オスは、雌より20%大きいに過ぎなく、それほど、性的2型性が見られないことから、雄同士協力関係が強化されることがあったと考えられる。 草食と若葉食は別物であり若葉食から草食に変身するのは大変で、消化の困難な草を食べる為には盲腸を巨大化し、内臓機構の改造が必要になるので、サバンナに出た人間は、腐肉漁りするしかなかった。殺戮稼業を成功させようとする努力こそが猿から人へと進化させた。牙が退化し、腕:Armが、兵器:Armになった。直立歩行になった為、お尻は大きくなり、左右の割れ目も大きくなり、肛門括約筋がPower Upし、直腸粘膜を捲り出す自然脱肛機能を失い、お尻を拭かなければならない動物になった。

石器を手にして、腐肉動物(スカベンジャー)漁りを始めて動物性蛋白質を手に入れることが可能になり、ヒトの脳に大脳化をもたらした


幼形進化?
ルイス ボルク
1920年にL・ボルクが「人類ネオテニー説」「胎児化説」を提唱した。チンパンジーの幼形が人類と似ている点が多いため、ヒトはチンパンジーのネオテニーだという説を唱えた。すなわち、ヒトの進化のなかで、幼児のような形態のまま性的に成熟するようになる進化が起こった。ルイス ボルクによると、猿は成長過程で、脊柱尾部や膣が真っ直ぐになるのであるが、人は大人になっても胚期の脊柱尾部の湾曲状態は変化せず、又、顎が前方に突き出さず、顔面が平坦で後退傾向にあるので幼形のまま大人になった性的に成熟した猿の胎児であるという。その為、姿勢が悪くなり腰、頚部痛、顎関節症を持つようになった。顎が下がっているからバランスを取ろうと頭を前に出すので、それを支える頚部の筋肉が疲労し、頭を前に出すと顎が後退し不正咬合に発展させ、後部神経を圧迫し、顎関節症を誘発するようになってしまった。

Lactation(Milk)
人工栄養が不正咬合の原因?
母乳栄養児の吸う力は、人工栄養児の数十倍あるとされ、固形の離乳食を容易に食べることが出来、顎や脳にストレスが加わり、顎や脳が発達する。母乳を飲む時、上顎の裏側におっぱいが入り、顎が大きくなる。人工栄養を与えられた子供は、噛む力が無い。堅いものを噛む時は、舌を用いるが、人工栄養を与えられた柔らかいものしか食べない子供は、母親のおっぱいや舌による上顎の拡大もなくなり、舌の使い方も下手になり、言語が遅れ、知能が遅れ、不正咬合になる可能性が高まると指摘されている。


授乳は、3-4時間間隔で与えるが、体重が少なかったり、母乳が十分でないともっと間隔を狭めることがすすめられている。リブレは、3時間間隔で与えられた乳児は、それ以上の間隔で与えられた乳児よりも摂取量は同じでも、よく育ち、落ち着きがあることを示している。その理由は、食物を待つ緊張は、口唇の活動が不十分なために生じる緊張が少ないということである。成熟乳は、分娩10日後から出る乳で、初乳は、妊娠末期から分娩後数日間に出る乳で、粘り気があり、タンパク質、抗体を多く含み、アレルギー、不正咬合を防止する。

Evolution
顎は、4億年前のサメの先祖で出現した。魚の喉の脇にある鰓孔(エラアナ)を支える軟骨は、アーチ形をしているところから鰓弓と呼ばれる。現生では、無顎類のヤツメウナギに鰓弓が存在している。前方の鰓弓の1対が顎に進化した。軟骨魚類では、鰓弓の1番前が顎になって、顎骨弓と呼ばれ、2番目が舌骨弓と呼ばれ、3番目以降が、本来の呼吸用なので鰓弓と呼ばれる。サメの顎は上下とも軟骨からできている。軟骨魚類は、エラ蓋がなく、エラ孔が体表に並んでいる。ヤツメウナギは、エラ孔が7つ並び、目も入れて、ヤツメウナギと呼ばれる。

5億年前の無顎類の鰓弓と呼ばれる呼吸器官は、上下の捕食器官になり、哺乳類で耳小骨という聴覚器に進化した。このように、不要なものから新しい機能を備えて形態進化していく。爬虫類から哺乳類に至る系統は、下顎を構成する骨のうち、歯の生えている歯骨だけが大きくなり、他の骨は後方に追いやられ、退化する。ヒトの4週齢の胚子に顎の元なる顎骨弓が生じ、左右に軟骨の棒ができるが、発見者に因んで、メッケル軟骨というが、メッケル軟骨の後端が骨化してツチ骨になり、残りの大半は消失する。これは、サメの下顎軟骨で、4億年前のなごりが人の発生で系統発生が出現する。 胎児の時代には、片側で、4つのエラ孔がある。1番前のエラ孔である呼吸孔である第1鰓溝は、哺乳類では外耳道に進化した。第2の穴か耳、あるいは両方をもつ人は、閉じそこない頚瘻といって、飲みこんだ食物をその穴から出てしまう、魚類のエラ穴の祖先返りである。上下の顎骨は左右が別々に発生し、正中で癒合して一つになる。癒合不全が兎口といわれる。類人猿では、切歯が大きくなり、鼻や口を含む鼻づらも大きくなった。切歯が拡大した結果、下顎骨もU字になった。ヒトでは頤が顎の先が歯より前方に突出している。歯が退化し歯槽が後退した結果、取り残されたヒト固有の対内で最も歴史の浅い特徴である。 爬虫類時代は、腸管の入り口は平屋だった。哺乳類になると、腸管が仕切られ、下が食物をとりいれ、上が酸素を吸入する鼻腔になった。この仕切りを2次口蓋という。軟口蓋の先には、のどちんこ(口蓋垂)がぶら下がり、嚥下する時に跳ね上がり気道を塞ぐ。空気も食物も一緒だと、口に食べ物が詰まった時に息ができないので丸のみするしかない。口蓋によって気道が確保されているので呼吸することが可能である。口蓋が形成されたことで、ゆっくり咀嚼することが可能になり、消化効率が向上し、毛の獲得とともに、哺乳類の恒温性獲得の基礎になった。 爬虫類時代は、口腔は捕食器官だった。哺乳類になって咀嚼器官に進化した。口腔は、欲求不満を解消する愛器に進化した。咀嚼とは、臼歯ですりつぶすことで、食物の表面積が増加し、唾液と接触面積も増加し、消化効率が高まる。恒温動物は変温動物に比較して、10倍のエネルギーが要求されるので、咀嚼は、哺乳類の恒温性の為に大切になっている。咀嚼という口腔内消化によって、腸での消化時間が短縮され、食物はエネルギーに還元される。哺乳類は、咀嚼する為に、生え換わりの回数も1回に減少した。


イルカは、咀嚼しなくなって、歯が同じ形態の同型歯性に戻っている。そして、横口蓋ヒダは退化する。その為、横口蓋ヒダは、食物を保持するとされている。しかし、同じく、咀嚼しない、犬、猫のような陸生のものでは、横口蓋ヒダがよく発達している。霊長類は、異形歯性で咀嚼し、水生でもないのに、なぜ横口蓋ヒダが退化したのかわからない。横口蓋襞は原始哺乳類が多く、類人猿では10前後、ヒトでは7-10に減少してきている。胎児や新生児の方が発達し、加齢とともに、配列が減少し高齢者ではなくなっていく退化器官である。

Degeneration
退化器官
祖先のなごりとして、痕跡器官、退化器官を見ることができる。退化器官とは、作用が残り、大きさだけが縮んだ器官であり、男の乳首、足の小指、智歯は退化器官である。虫垂は、盲腸が退化した退化器官で、衰退途上にある器官。アンコウは、雄が極端に小さくなり、雌に体に寄生する深海魚である。寄生する生物は、栄養を宿主に頼るので、運動器、消化器などの器官が退化する。痕跡器官とは、胎児期やある時期に出現し、本来の機能の1部ないし、すべてが失われたもの、消滅寸前にある器官をいう。ヘビの足は痕跡器官になっており、もともとのオオトカゲのような動物から進化する過程で足を喪失した。
Bite
萌出不全
サメの皮がざらざらしているのは、楯鱗(皮歯)という小さな鱗に突起がある為で、楯鱗は、象牙質の表面をエナメル質が被覆し、歯と同じ。歯は、対表面を覆っていた楯鱗のうち、額ができた時に口の周囲にあったものが拡大し、顎の骨に根を下ろしたものである。 皮膚が発達したものがエナメル質になり、その下が象牙質、歯槽骨になる。歯を噛もうと筋肉を動かすという物理的な力が歯の形成を促進するので噛まないと歯の萌出が不完全になり、不正咬合になるのだろう。 歯を植える土手である骨芽細胞は噛む負荷で、形成される。又、食事、会話で口腔周囲の筋肉を使うという物理的な負荷によって骨芽細胞に摂取されるカルシウムの吸収率が高まる。噛むことの方が、カルシウム摂取することよりも吸収率を高める。 歯槽骨をはじめとする骨は、負荷されることによってピエゾ電位が発生し、カルシウムが沈着するが、もし、噛むという負荷が少なければ、歯槽骨にカルシウムの沈着が少なくなり、顎が狭くなり、歯並びが悪くなるということになる。 骨に力が負荷されている部分にカルシウムの沈着が起こり、負荷がなくなれば骨を喪失する。だから噛めというのだろう。宇宙飛行士は、無重力状態で、骨中カルシウムをかなり喪失し骨が弱化する。汗を出すと塩分のみならずカルシウムも喪失する。マラソン選手だった増田明美は、引退後、マラソンのすばらしい解説者になったが当時、検診で足に7箇所の疲労骨折があり、骨質は65歳だと診断された。特に女性のスポーツ選手は、脂肪量が減少し、女性ホルモンの分泌量が少なくなり、骨内のカルシウムが失われることが原因で、歯周病、骨粗鬆症に似た症状を呈する。

Posture(Habit)
Uplight
姿勢の良し悪しはその人の手の位置だけでも判断することができる。頭を前に出す前方頭位の姿勢を保っていると、肩が落ち、猫背になり、喉の筋肉が緊張し、顎を後退させ、出っ歯になってしまう。重い頭を頚部の筋肉が牽引して、その部に発痛点を形成し、偏頭痛を誘発する。前から見て、親指から後方の指が真っ直ぐに平行であれば、肩の位置が正しい。もし、すべての指が見える様であれば、肩が落ち、頭が前を向き、胸の筋肉を圧迫する悪い姿勢であることになる。


Head Posture
前方頭位にしていると、顎が下方成長し、姿勢が悪くなり猫背、腰痛、顎関節症を誘発する。このような姿勢では、胸式呼吸にならざるを得ず、腹式呼吸に使われる腹腔の筋肉や肛門挙筋、更に、腰や肛門の筋肉を弱化させ、腰痛、痔に発展させる。横隔膜、腹直筋、肛門挙筋で腹式呼吸を使用することによって、これらの筋肉を機能的に向上させ、腰痛、顎関節症を予防する。腹式呼吸は、鼻呼吸を促し、免疫活性化する。


Finger Habit
動物は、したい行動が出来ない時、転位行動をとる。自然な条件下で現れる行動がなんらかの障害で行えない場合、転位行動として別の行動を行うのである。猫が、獲物を取れない時、転位行動を取る。認められない時、ひねくれる、非行する。嫌いな歯科医が繁盛すると、歯軋りする。子供は不安になると、指しゃぶりして不正咬合に発展させる。非行、習癖とされる行動も、転位行動も転位行動である。歯科医院で働く仕事の出来ない子は、無意識に患者減らしするような反対の行動をしてしまうのも転位行動である。飼育下の動物が行う、過剰な性行動、ヒョウは自分の尻尾を噛むというような行動は転位行動である。

胎児期には舌、舌骨は上方位にあるのであるが、その高位舌が持続されている、あるいは、胎児期に戻ったりする場合、舌が上下顎の歯牙の間に舌前突癖が出現し、前歯のすきっぱ:空隙歯列弓にしてしまう。舌前突癖は、舌が後から上がってくるのではなく、すでに舌は高い位置にあるのであることが多い。高位舌であるということは、舌骨が上位に位置していることを意味する。舌位を下げてやる舌の先端も後方に行き、歯牙に悪影響を及ぼさなくさせる。その為に、舌骨筋群を訓練し、高くなっている舌位を下げる必要がある。

Tongue Posture
Tongue
有袋類、コウモリ、下等なサルは、舌が2枚あり、下方の方を下舌という。キツネザルは歯で毛づくろいし、同じ長さの下舌で歯の掃除する。霊長類の起源のツパイの下舌は、ギザギザがある。新世界猿は、下舌がなく、采状ヒダになって下舌のなごりになり、この逆V字形のヒダを采状ヒダという。旧世界猿は、采状ヒダも欠けてしまう場合が多い。テナガザルは、采状ヒダは胎児だけにみられ、成体では退化する。オラウータンは、退化している。ゴリラやチンプは、極めて小さい。ヒトの下の裏側に、下舌のなごりの采状ヒダは、誕生直前に目立つが、その後、縮小していく退化器官である。日本人で4人に一人は欠けるのに対し、20人に一人は顕著だとされている。 咀嚼する為に食物を歯列にのせるのが舌と外側の頬筋で、食物の保持に口蓋雛壁が機能する。 魚類の舌は、口の床の粘膜に始まり、魚の舌には、筋肉がないので、のどの骨、鰓弓からできる舌骨から離れて動かすことができない。両生類になると、舌は筋肉質になり、動かせる。横口蓋ヒダ同様、咀嚼時のすべり止めになる。 加齢によって舌は、重力に逆らえず、下方に位置する低位舌になる。下げる筋肉は舌骨下筋Infrahyoidであり、舌骨が下がると舌が下がる。通常、舌位は、口蓋から3.5mm位の位置にある。しかし、絶えず、口を開けていていると上下顎の顎間距離:フリーウェイスペースが広くなっているような人は、舌を低位に位置させるようになる。低位舌の人は、4-5mm位下方にあり、嚥下時に、顎で閉口するよりも舌をいきなり上げて、密閉して陰圧を作って嚥下するようになり、下の前歯の歯並びが悪くなる。 顎がポキッとクリック音が生じる原因の多くは低位舌であり、それで正しく開口しない場合に生じる。低位舌の場合、下顎を動かすと顎が前方滑走を始め、顆頭は前方に動いて音がする。しかし、口蓋雛壁に舌が付けられて、開口が5mm以内なら、ヒンジ運動をするので音がしない。通常、開口が40mmで、クレストの直下少し前方当たりに来るのであるが、低位舌の人は、40mmの開口でクレストを超えて音がする。低位舌は、開口時の回転と滑走のタイミングが変わっているので、人口の約35%の人にクリッキング音が生じている。舌を口蓋に接触させた状態での開閉運動の訓練は音を消失させる。下顎骨を前突させずに、開閉運動するように指導するのである 空隙歯列を生じさせる舌前突癖は、舌前突させるオトガイ舌骨筋の緊張が達成する。舌前突はオトガイ舌骨筋が機能亢進を意味する。下顎のオトガイ結節に繋がり、舌が前方に牽引される。生体では作用に対して反作用が行われる。オトガイ舌骨筋によって、舌を前突させようとすると、舌を後退させる筋である茎突舌筋による後方に牽引しようとする反作用がなされる。舌を上げる筋肉は舌の両側に付着している咽頭に行く咽頭舌筋、口蓋にいく口蓋舌筋がある。上げる筋肉があれば、拮抗する下げる筋肉がある。下げる筋肉は舌骨下筋である。舌骨が上がると舌が上がり、舌骨が下がると舌が下がる。嚥下をする時、舌骨筋が機能して舌骨は、前上方に動く。

うつ伏せ寝すると、酸素濃度が減るので口呼吸を誘発する。片咀嚼したり、頭を傾けていたり、横向きの睡眠は、下側の鼻腔の静脈血の鬱血させ、その側の鼻腔を閉塞させる。おしゃぶりを止めると口呼吸が発達し、1歳位から右ききの人は、右噛みくせが始まり、右側の頚部筋が短縮し、右側を下にして寝る癖が誘発する。

おしゃぶり
おしゃぶりは、偏咀嚼、口呼吸、悪習癖を防止、改善する。 オーラルスクリーン(ちゅっちゅ)
おしゃぶりは、前歯部開口という不正咬合を誘発することがあるので、オーラルスクリーン(ちゅっちゅ)を使用するべきである。おしゃぶりは、3-4歳くらいまで使用させる。不正咬合が心配される場合は、ちゅっちゅを5歳くらいまで使用させ、表情筋、咀嚼筋、頚部筋を発達させる 。

Position
Diviation
顎が右側偏位する為には、舌骨が右側に偏位することによって達成される。舌骨を偏位させるのが、喉頭の筋肉であり、右側偏位は、右側の舌骨上筋、下筋群が緊張、収縮し、舌骨が右側に偏位することによって達成される。特に、右側のDygastic Muscleの恒久的な活動によって、矢状面での偏位が生じる。喉頭には、発音器官が存在し、舌骨の位置は発生に関与し、偏位によって、喉頭筋の緊張が持続されれば、構音に問題が発生する。

個人の器質Allergy
乳幼児の時期に食品アレルギーを起こすと、3-4歳になって、ダニによる気管支喘息、口呼吸、不正咬合、大人になると花粉症と年齢に応じて、行進曲のように、アレルギーが連鎖する可能性が高まる。

食品アレルギー
食べ物は、体にとって異物だから、本来、アレルゲンとして攻撃を受けるのであるが、腸から吸収した食べ物に対し、攻撃しないような仕組みになっているが、そのしくみがうまく働かなくて生じるのが食品アレルギーである。1歳までは腸管が不発達であるので、離乳食は、蛋白質の抗体を形成する。乳児は噛めないので、唾液や胃酸で消化されない蛋白質が腸内に侵入する。通常、腸内粘膜下の分泌性細胞から免疫グロブリンが分泌され、それが、蛋白質、異物、細菌などと結合して排出されるが、乳児は、母乳から摂取する免疫グロブリンが少なく蛋白分子が腸内のマスト細胞を通過し、ロイコトリエン、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、リンパ組織を炎症、腫脹させる。腫れたリンパは気道を閉塞し、口呼吸を誘発する。Ⅰ型アレルギー反応が結膜で生じれば結膜が充血して結膜炎となり、気管支で生じれば、筋肉の収縮で気道が狭窄して粘膜の分泌によって呼吸困難になり、喘息の発作に発展する。鼻で生じれば、鼻粘膜が腫脹し、鼻水などの粘液の分泌が旺盛になり、鼻詰り等の鼻炎が発症して口呼吸が誘発され、口が開きだせは、口唇や口腔周囲筋、舌による歯並びのガードレール効果を失い、不正咬合に発展する。食品アレルギーを改善しておかないと後のアレルギーマーチに発展させることがある。

アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは、食べ物による食品アレルギーが原因になって、皮膚に湿疹ができる病気である。食品アレルギーを誘発するアレルゲンは、卵、牛乳、肉、大豆などの高蛋白、高栄養バランス食品であることが多い。乳児に発症するアトピー性皮膚炎は、通常は5-6歳頃に消失する。

気管支喘息
乳幼児の時期に食品アレルギーを起こすと、3-4歳になって、ダニになどによる気管支喘息を出現するが、これも通常、加齢によって改善される。

アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎が出現し、開口を誘発し、不正咬合に発展させる。アレルギーを起こす人とそうでない人が居るのは、体質の違いで、遺伝的にアレルギーを抑制する力が強い人と弱い人が居る。異物である食物に攻撃しかけないか?食べ物に対し、攻撃をしかけないようにしているのが、1.消化酵素、2.免疫グロブリンA、3.経口免疫寛容である。1.消化酵素は、アレルゲンである蛋白質をアミノ酸に分解し、アレルギーを起こす活性を失わせる。2.免疫グロブリンAは、腸が入り口でアレルゲンが入ってこないよう阻止するバリアになる。3.経口免疫寛容は、アレルゲンが腸壁をすり抜けて入ったら、アレルギーのもとになる抗体が形成されるはずであるが、腸には、経口免疫寛容という抗体を作らないようにするメカニクスがある。両親がアレルギー性鼻炎だとしたら、子供は、アレルギー体質を受け継ぐことになるので、アレルギー体質、その傾向を呼び起こさないように気をつける。その為に、換気をよくし、ダニ、埃、花粉、カビ、タバコに子供を晒さない。タバコは、腫脹した鼻粘膜を更に、刺激し、腫脹させる。乾燥状態は、刺激し、鼻炎、鼻つまり、風邪にも罹患し易くなる。鼻の湿度を維持する為に、乾燥する時期には、加湿器を使用する。外に出る時、マスクを使用させ加湿状態を保たせる。子供の場合、オーラルスクリーンを使わせ、口を開けず、鼻呼吸の癖をつける。 アレルギー性鼻炎には、ダニ、カビ、ハウスダストによる通年アレルギー性鼻炎と花粉症による季節性アレルギー性鼻炎がある。季節性アレルギー性鼻炎による花粉症には、スギ花粉症(2-4月)、ヒノキ花粉症(3-5月)、イネ科花粉症(4-7月)、ブタクサ花粉症(8-10月)、ヨモギ花粉症(9-10月)、これらが重複して併発することが多い。アレルギー性鼻炎は、腫脹した鼻粘膜を更に、刺激し、腫脹させる、鼻閉、口呼吸、そして不正咬合に発展させることになる。 交感神経と副交感神経の2つの自律神経がバランスをとって、ホメオスタシス,恒常性を保っている。交感神経は、昼間の体が活動している時に優位に立ち、副交感神経は、夜間に優位に立っている。交感神経と副交感神経の入れ替わりである、明け方や夕方に自律神経のバランスを崩壊しやすい。特に、ストレスは、自律神経のバランスを崩し、アレルギー性鼻炎の症状を誘発、あるいは悪化する。

Allergy Examination
アレルギー性鼻炎の3大症状1.くしゃみ、2.鼻水、3.鼻づまりで風邪の3大症状と同じ。花粉症は3大症状に目のかゆみがある。風邪は、粘り気のある黄色の鼻水は、2週位で消退するが、アレルギー性鼻炎の場合は、花粉症は、鼻水が2.3ヵ月、ダニや埃が原因する通年性のアレルギー性鼻炎は、1年中続く。症状は、鼻や目に集中し、発熱はない。アレルギー性鼻炎には、ダニ、カビ、ハウスダストによる通年アレルギー性鼻炎と花粉症による季節性アレルギー性鼻炎がある。季節性アレルギー性鼻炎による花粉症には、スギ花粉症(2-4月)、ヒノキ花粉症(3-5月)、イネ科花粉症(4-7月)、ブタクサ花粉症(8-10月)、ヨモギ花粉症(9-10月)が重複しがちである。 アレルギー性鼻炎の検査法は、1.血液検査は、血液中の好酸球、免疫グロブリン:IgE量で抗原抗体反応が生じているか検査する。2.鼻汁細胞診で白血球数を検査する。アレルギー性鼻炎の鼻水は、好酸球が多く、白血球が少ない。感染に拠る炎症:蓄膿症等の鼻汁には白血球が多い。3.鼻誘発検査では、抗原を直径3mmの濾紙に付着させ、それを鼻粘膜に付着させ、5分後の反応を観る。皮膚反応検査は、2種類あるが、4.スクラッチ法は、花粉症の抗原液を皮膚に乗せ、注射針で引掻き15-20分後、発赤が生じると陽性(+)で、原因が花粉症であると診断する。5.皮内法は、抗原液を皮膚に注射してツベルクリン反応同様、発赤で陽性と判断する。

Allergy Treaty
アレルギー反応は、危険に対する防御。体に異物が侵入すると大食細胞が包囲し、蛋白質を処理し、T細胞に渡す。T細胞は、蛋白質をB細胞に渡し、B細胞が異質な蛋白質に対し、抗体を作る。免疫グロブリン(IgG)であるが、ある種の物質に対し、IgE抗体を作る。IgE抗体は、血中を循環し、好塩基性白血球と呼ばれる別の細胞の表面につくか、肥満細胞の表面につく。アレルゲンが再度やってきて、肥満細胞に表面にある2つ、それ以上のIgEと結合すると、細胞は少なくとも10種類の異なる化学物質を混合したものを放出し、細胞を攻撃、血小板を活性化、他の白血球を引き付ける、平滑筋を刺激する。人口の25%が、IgE抗体によるアレルギーを抱える。 エリック オッティセン(寄生虫学者)によるとアレルギーの発症率が増加した原因は、カーテン、絨毯、カーペットで敷き詰めた室内で暮すようになったため、コナダニが発生するからであるという。腸内寄生虫が撲滅され、IgEシステムの本来の標的を失ってしまったので、このシステムを制御している機構が不活性になり、IgEが無害なものをも攻撃するようになったのだという。ミルクで育てられると、母親から抗体をもらわないので、自分自身の抗原を対処するときに、免疫的な過ちを犯しやすくなる。

●Livestokization
ペット、食用動物、観賞用動物は、家畜化されているが、人は、自己家畜化である。動物園の大中型哺乳類は、母子分離がうまくいかなっている現象は、家畜化であり最近の子離れできない親が増えているとされているが、この場合自己家畜化である。現代の子供の実態は、ペットに酷似している。世話のいい届いた構造的に人工化、ペット化された閉鎖的な系で生活している。食事は、ペットフードのような加工食品、柔らかく、甘いといった人工化されたものを食べているので、顎が発達せず、歯並びが悪くなる。 野生の馬が家畜化される四肢が長くなるが、最近の子供は、脚が長くなっている。動物園で家畜化された動物は、性周期のぼけ、乱れ、発情周期の増大、季節周期が消失し、早熟になる。最近の子供の性成熟、性行動が早まっているが、動物園のかばも、乳飲み子が妊娠する。豚、犬が家畜化されると体毛が薄くなり、肥満する。犬は、3万年の犬の家畜化の中で300種類の品種、さらに800の形質の異なる郡に人為的介入で、容赦のない淘汰を受けないので分化が進行する。生活様式、行動、形質も適合したものになったものが家畜化である。

Mouth Open
Cold
風邪は万病の元を云われる。初期の風邪は粘膜の炎症から始まり、策は、安静と栄養。風邪をひいた時の咳は、喉に落ちた鼻汁の刺激が咳の原因であり、この鼻汁は痰でない。この咳による飛沫感染で、空気中の細菌、ウィルスで伝染され、1回のくしゃみで、10万個のウィルス、細菌の入った唾液の飛沫が拡散される。中耳炎、蓄膿症、気管支炎、腎臓病、肺炎、髄膜炎などの誘因になるこれらの感染症のバリアになるのが鼻である。
慢性鼻炎:Chronic nasal catarrh は、急性鼻炎である鼻かぜの慢性化である。症状は、粘膜に炎症が来している為、鼻汁、鼻詰りが見られる。慢性鼻炎の鼻汁は、粘着性がある為に、出ずらく、喉に落ち込み、後鼻漏が生じる。慢性鼻炎には、単純性鼻炎と肥厚性鼻炎がある。単純性鼻炎は、粘膜が腫脹し、放置しておくと悪化し、肥厚性鼻炎に発展する。スプレー式の血管収縮剤を服用するが、使用しすぎると肥厚を増長する。肥厚性鼻炎とは、単純性鼻炎の粘膜が肥厚していったもので、薬が効かなくなる。
鼻呼吸
鼻毛は、大きなごみを、鼻粘膜は、小さなごみ、細菌、花粉などの除去する。鼻の奥にある厚さ1mmの粘膜で、ごみや細菌を粘膜の表面にある細かい毛によって、鼻から喉の奥へと運ばれ、気管から運搬されてきた粘膜と一緒になり、痰として排出する。鼻の中に、襞の凹凸があり、入った空気は、襞に衝突し孤を描き、渦巻いて加温、加湿し喉や気管に直撃しないようする。口呼吸の人は、乾燥しやすく、喉が腫れ、ウィルスに感染する。 鼻は空気を換気するが、吸気は、気管、気管支を通って肺胞に到達し、ここでガス交換を行う。外気が直接、肺胞に接したら、障害を誘発してしまうので、鼻腔は吸気を加温加湿し、肺を直撃することを防止し、鼻毛、鼻粘膜によって、外気のゴミをとらえ、鼻粘膜の殺菌作用によって、吸気を浄化する。鼻腔が小さければ、呼吸器疾患に罹患する確率も高まる。加温は、鼻粘膜下に縦横に走る血管によって、加湿は、鼻粘膜下に滲出する組織液を吸収し、湿度は90%を帯びる。鼻腔上部には、嗅部があり、匂いを嗅ぐ。

口呼吸
口呼吸は、鼻詰りを誘発し、不正咬合、粘膜の腫脹、肥厚性鼻炎、鼻中隔湾曲症、蓄膿症に発展ささせる。鼻詰りは、逆に、口呼吸を誘発し、口呼吸は、不正咬合を悪化し、いびき、息苦しさが恐い夢を見る夜驚症、学業に影響する鼻性注意不能症、ぼけ、呼吸器、循環器への影響し、肺や心臓に負担をかけて高血圧を招く、頭痛、臭覚障害、乾燥した空気が喉を直撃する為に、扁桃腺が腫れ、風邪に罹患し易くなり、分泌物が排出されずらい為、風邪の治りかけに、急性蓄膿症を併発する。口呼吸は、目、耳にも影響する。 口呼吸の吸気は肺尖まで届かず、持続的な酸素不足を齎し、学習能力に影響する。先祖は、湿度、温度が高い熱帯の森林の樹上に生息し、鼻への負担が少なかった。乾燥したサバンナに降りてきて漸次高経度地帯に移動し、冷涼な地域に侵入した為、吸気の環境は悪化し、鼻口腔機能は向上しなければならない事態が生じ、口呼吸が始まった。酷寒で、乾燥地帯は、鼻腔の負担は増大し小顎化が進行しても、鼻腔は拡大する必要が生じ、咀嚼器官が縮小した為に、外鼻が残ってしまった。黒人の鼻は低くみえるが、鼻梁傾斜度は変わらない。白人は、上顎骨が縮小したので、白人の鼻が高くみえるだけなのである。 口呼吸の子、耳が詰ったような感じがする。鼻閉が、上咽頭と中耳を繋ぐ耳管が機能しない為、鼓膜の内側と外側の気圧の差が出来て生じさせているからである。鼻閉は、耳管に拠る気圧の調整がうまく出来ないので、離着時の気圧の変化に耳管が対処出来ず、中耳炎を引起しやすい。飛行機の中で、スッチーがキャンディーを配るには、唾液を飲み込ませて耳管を開けさせる為である。子供の耳を守る為には、1.鼻をそっとかませる(中耳、鼓膜を圧迫せず、中耳炎の予防の為)。2.鼻をすすらせない(鼻の炎症が、耳管を通過して耳に押し上げられるのを防止する為)。3.矯正治療で、鼻腔を拡大し、鼻腔を拡げる。 鼻孔から咽頭迄、鼻腔、副鼻腔など15cmの長さを通過し100%に加湿される。鼻呼吸者は、常在菌が鼻腔の扁桃部の粘膜が呼吸のたびに粘液で流され、黴菌が鼻汁として、食道、鼻の外に排泄される。鼻腔の繊毛上皮の被服によってバクテリアの侵入を防止するのであるが、口呼吸者の場合、その機能を失うことになる。臭覚の発達した動物は、本来の臭覚とは別に生殖行動を誘発するヤコブソン器官である鋤鼻器官が発達している木に登った霊長類は臭覚が衰え、性行動の誘発は、視覚に移り、鋤鼻器官は退化した。女性は、この器官を利用して男性を選りすぐっていることが判明している。 器質的な原因による口呼吸は不正咬合を誘発するので、手術が検討される。口蓋扁桃摘出術、アデノイド切除術は、再発し、再手術が必要になることがある。 鼻中隔矯正術は、湾曲した鼻中隔軟骨を切除する。下鼻甲介切除術は、肥厚部分の切除する。鼻粘膜焼灼術は、鼻粘膜の焼灼する。茸切除術は、鼻腔内の鼻茸を切除する。鼻内副鼻腔術は、慢性副鼻腔炎において鼻腔、副鼻腔の病変個所の摘出する。咽頭形成術(UPPP)の口蓋垂肥大は、口蓋垂切除し、長い軟口蓋に対し、口蓋弓切開して、いびきを減らす。

中耳炎
鼻から分泌される粘液には、殺菌作用がある。早期に鼻が詰まってしまって、口呼吸の習癖がついてしまう子供がいる。鼻腔が使用されないため、分泌物が蓄積し、さらに通りが悪くなる。乾燥して固まった粘液は、細菌の温床になる。細菌は、炎症を誘発し、扁桃腺を腫れさせ、アデノイドになる。口呼吸は、唾液が蒸発し、胃に飲み込まれる唾液も減少する。頻繁に唾液が飲まれることによって中耳の汚れが耳管を通して排泄され、換気も行われる。1989年、オランダチームは、習慣性口呼吸が乳児の中耳炎を誘発していることを発見した。
Nasal Septun
鼻中隔症の原因は、頭が鼻よりも発育が早い為、鼻は頭の重さに対抗して形成される為、湾曲してしまうのである。原因が鼻曲がりである場合、とりあえず、歯科的アプローチとして、矯正装置で、鼻腔を拡げる。手術は、通常、鼻の成長完了時に行ってもらう。

Snore(いびき)
いびきの原因は、口呼吸、鼻閉である。口呼吸して睡眠すると喉の奥の粘膜の襞部分、いわゆる喉ちんこが振動して生じる。喉ちんこの部分が肥大している人は、大いびきを掻く。鼻呼吸者も襞を振動させる。襞が長い、幅の広い人、喉の気道が狭窄している場合は、振動しやすく、鼾に発展する。加齢によって筋肉、粘膜は弛緩しだし、鼾を発生しやすくなる。アルコールは、血管を拡張させ、鼻粘膜を拡張させ、通気が悪くなり口呼吸にする。その際、粘膜も拡張するので、空気が通過する毎に、振動し、いびきを発する。疲労もアルコール同様、筋肉を弛緩させ、舌筋、軟口蓋(喉の襞)の筋肉が弛緩し、襞が垂れ下がり、いびきを誘発する。 鼾の原因は、鼻、あるいは喉のどっちか?点鼻薬や矯正装置で鼻腔を拡大し、軽減されれば、原因が鼻であると特定し、軽減されなければ、喉に原因があると判断する原因が鼻中隔湾曲症、鼻粘膜肥厚:肥厚性鼻炎、蓄膿症、アレルギー性鼻炎、鼻ポリープであれば、矯正治療で使用する拡大装置で鼻腔を拡大し、それでも改善されなければ、医科の先生に紹介する。長い襞が原因である場合、襞を切除し、縫い縮める。肥大した襞が気道に落ち込んで、呼吸停止する睡眠時無呼吸症候群を誘発することがあるので、この場合、鼾と同様に粘膜の襞を切除してもらうことになる。

Sinustitis(Nose Obstraction)
鼻に、鼻腔と鼻洞があるが、蓄膿症は鼻洞に生じる病気で副鼻腔炎とも言われている。鼻洞の中の1.上顎洞(頬の下の骨にある洞)が最も頻発する。次は、2.篩骨洞(目と鼻の間にある洞)、3.前頭洞(額にある)、4.蝶形骨洞(目の奥と鼻腔の奥に接する)に発症する。蓄膿症は、1.急性蓄膿症、2.慢性蓄膿症に分類され、1.急性の原因は風邪で、鼻の周囲の洞に膿が風邪による炎症で鼻粘膜が腫脹し鼻から排出しにくくなる蓄積する疾患である。風邪は、大小の急性蓄膿症を誘発し、鼻汁が排出困難、臭覚障害、頭痛を生じる。黄色い粘着性の鼻汁は、急性蓄膿症の罹患を意味する。スプレーで粘膜の腫脹を消退させ、鼻から洞に水を入れ、膿を洗い流す。 蓄膿症が慢性化したら、手術しないと直りにくくなることがある。手術は、上顎洞の発育が完了した17歳頃に行うのが普通である。鼻腔と上顎洞の境界の骨を開け、新しい交通路を形成し、鼻汁が蓄積しないようにするのである。鼻詰りの原因が粘膜の腫脹であれば、肥厚性鼻炎の手術をする。鼻中隔湾曲症は、急性時の鼻汁の排出が困難で、慢性に移行する。 慢性蓄膿症の原因は、急性からの発展である。鼻風邪による鼻腔の鼻粘膜の炎症が、骨洞の粘膜に炎症が波及し、粘膜が炎症を被ると、粘着性の鼻汁に変化する。黄色い粘着性鼻汁は、急性蓄膿症の罹患を意味するが、1週間以上粘着性の鼻汁が続いていれば急性蓄膿症が悪化を意味する。前頭洞:額の骨の洞に膿が蓄積すると、頭痛が生じ、下を向いた時に、額から頭に頭痛に炎症が脳迄波及すると、脳膜炎:髄膜炎に移行することがある。矯正装置で、上顎、鼻腔を拡大し、血管収縮剤で、粘膜の腫脹を消退させ、鼻汁を出しやすくする。洞内の鼻汁を吸引する。消炎酵素剤で、粘着性の鼻汁を奨液性の鼻汁に戻す。
扁桃腺
扁桃腺などのリンパ組織は、外界から侵入する細菌、ウィルスに対する抗体を形成する機能がある。子供のこれらのリンパ組織が大きいのは、各種の抗体を形成しなければならないからである。咽頭扁桃の肥大のピークは、3-7歳で、次第に縮小していく。これら、咽頭扁桃、口蓋扁桃の肥大は、鼻閉、口呼吸を誘発し、虫歯、歯周病、口臭、不正咬合を誘発する。その為、酷い場合、外科切除を行うのであるが、完全に除去してしまうのでなく、残存した部分が機能するから問題は無いのであるが、それを回避する為に、矯正治療の拡大装置で、鼻腔を拡大する。
Nose
鼻腔の幅径において、東洋人は白人よりも5mm広いが、その分、鼻が低くなる。成長期の子供において、鼻腔は平均、年間0.7mm広がる。2年で約1mm、10年で約5mm広がる事になる。横向きになっていると、上方に位置している側の鼻の通りがよくなり、下方の鼻が詰まる。これは蝶形骨洞の液が上顎洞、蝶形骨洞と通じて反対側に流れたことを意味している。通常、鼻は1側は肥厚し一側は萎縮しているので、鼻の通りは左右で変わる。鼻は、1側の鼻のみが機能していることになる。鼻腔の中にある下鼻甲介から分泌された粘液は、口の中に落ちてくる。アデノイドが肥大し、下鼻甲介が肥大すると、気道が閉塞され、口呼吸を誘発し、不正咬合を増悪する。
Mouth Brething
乳児は、喉頭と鼻が口蓋垂で繋がっている為、口呼吸が不可能である。胸式呼吸は、口呼吸を誘発する。口呼吸は、口蓋扁桃、咽頭扁桃などのリンパ組織が乾燥し、細菌感染し、風邪などの病気を誘発し、リンパ組織の炎症、腫脹が進行し、さらに、口呼吸では表情筋を使用しないので、機能低下し、鼻腔を開ける能力を失い、口呼吸に拍車をかけてしまう。口呼吸は、歯のガードレールである口腔周囲筋のバランスを崩し、不正咬合に発展させる。
Muscle Parafunction
三木成夫は、骨は負の形であり、筋肉の機能によって骨形態が決定されることを示した。Wolf(ベルリン大学教授)の唱えたWolfの法則、機能適応の法則とは骨の形態は、機能によって、適応した形態に変化することである。骨形態は、筋肉の使用形態によって影響され、筋肉は、骨を支配することを示した。筋肉によって、骨の大きさ、歯並びが決定される。筋肉は、神経に支配される。三段論法からすると、神経が骨、歯並びを決定することになる。
筋ジストロフィー
筋ジストロフィーは、筋肉が無力になる先天異常で不正咬合を誘発する。外側の筋肉が緊張していない為、歯列が外側に拡大され、空隙歯列弓になる。

皮筋は、馬の体にアブが止まると、その皮膚が揺れて、アブが止まれなくする。食肉類、有尾猿、類人猿などの高等哺乳類になると、この皮筋が顔面に集中し、分化して、顔面筋(表情筋)に進化した。類人猿は、顔面筋の分化が顔で表現できるようになった。顔面筋は、骨と骨との間を走る普通の骨格筋と異なり、骨と皮膚との間を走る。言語行動には、高度な中枢神経だけでなく、発声の為の頬、唇の発達が必須だった。新人類では顎が、急速に縮小化し、言語の使用が向上した。その結果、不正咬合が出現するようになった。顔面頭蓋は退縮し、オトガイが形成される。

ロビン ダンバーは、他個体とのかかわり方をする必要性が大脳化を進めたとする「社会的脳仮説」を唱えた。脳の大きさはグループサイズに相関することを示し、関わる個体の社会的情報が多くなることで、新皮質が大きくなったことを示唆した。Byrneらは、霊長類の新皮質の相対的な大きさは、社会の中での裏切りの頻度と正の相関があることを示し、新皮質の拡大が社会的な課題によって大きくなったとする「社会的脳仮説」を支持した。Byrne,R., et.al.,(2004)Neocortex size predicts deception rate in primates.Proceedings of the Royal Society B:Biological Sciences 271:1693-1699.長年雌雄つがいになっている種が、脳が肥大化している。異性とつれあうということが、脳に社会的情報処理能力の必要性が高め、エレガスタ以降において大脳化させた。Shultz,S,et al.(2007)The evolution of the social brain:anthropoid primates contract with other vertebrates.Proceeding of the Royal Society B:Biological Science 274:2429-2436.脳の拡大は、消化にかけるエネルギーを節約でき、それを脳に回せることが条件だった火を獲得し、調理という行動が社会行動面で変化をもたらし、エネルギーを脳に回せるようになった。脳容量は、体の2%であるが、摂取されるエネルギーの25%のエネルギーを消費している。類人猿よりも大きな脳容量を獲得したホモ エレガスタ以降(190万年前)である。Aiello,L.C., et.al., (1995)The Expensive Tissue Hypothesis.Current Anthropology 36(2):199-221.

エドワード O.ウィルソンは、言語は、真核生物の出現に比肩するほど、進化の大躍進だとした。リーキーが発見したモエレクトスは、ブローカ言語野が発達し、言語を使っていたとされる。言葉を理解するには、右脳のウェルニッケ言語野が必要、思考を言語に変換するには、左脳のブローカ言語野が用いられ、言語を機能する為に、この2つがつながって、脳が大きくなる必要があった。20歳でパリ大学を卒業したブローカは、言語障害は左側脳、ブローカ野に障害があるとしてブローカ失語とした。左脳のブローカ野は、言葉と複合的道具の製造をコントロールするので、左脳は、何を言ったかを処理し、感情にラベルをつけて分類し、右半身を支配する。 ダーウィンは、文化は生物の進化を逆転させることがあることを示した。人は、分析よりも、模倣によって同調する。人は、文化的はシンボルを追求しようとするのは、集団に同調するように本能が命じるからである。親族、民族集団に同調しようとする本能は、繁殖で有利に立つ為に、他の集団を虐殺しようとする。エレクトスが、本能よりも文化に依存するようになった為に、言語能力や、抽象思考の為の神経機能が増大し、脳が肥大化した。脳の肥大化は、食糧としての肉を増やさざるを得なくなり、狩、言語、文化学習が増し、再び脳を肥大化させざるを得なかった。脳が肥大化、非対称性化は、鼻腔の矮小化、非対称性化に、さらに、口呼吸を誘発した。 脳は、アウストラロピテクスの400ccから、初期のホモエレクトスの800ccまで進化し、先史時代の脳は3倍に増えたことは、言語が脳の増大をもたらし、認知能力の向上を反映している。道具作りは、わずかな脳組織で可能であるので、技術が脳を増大させたとする説は不適切と考えられる。人は左脳が大きいのは、言語をつかさどる脳が左にあるからであり、9割が右利きである。言語に関する左脳と右利きが関係して脳の非対称性化を推進し、頭の顔の顎のそして、かみ合わせの非対称性に発展させる。 ラルフ ハロウェイは、1972年、トゥルカナ湖で発見された200万年前のホモハビリスの頭蓋にブローカ領があり、左右の脳の大きさが非対称性に異なって、チンパンジーより高度な言語を使用していたことを示した。ハロウェイは、言語は、アウストラロピテクスの出現と同時に始まったとしているが、リチャード リーキーは、ホモハビリスが言葉をもたらしたと主張した。ニコラス トスは、オルドワン石器伝統の担い手は右利きであり、左脳が少し大きいことを示した。左右の脳の機能分化から言語能力は、すでに発生していたことを示した。 類人猿と人類の脳の構造は基本的に同じで、左右に分かれ、左右に4つの葉がある。類人猿は後頭葉の方が前頭葉よりも大きいが、人類は、前頭葉の方が後頭葉よりも大きい。大脳化とは、大きな動物分類群が新たに出現する時、脳の相対量が増大する進化、現象である。大脳化が最も進んだのは、霊長類であり、哺乳類の2倍である。人類は、類人猿の3倍の脳に大脳化した。大脳化と小顎化は、相対する現象で、この大脳化現象によって、人類は、不正咬合を特徴とするようになった。

Cranial Base
ジェフリー ライトマンは、人類の頭蓋底は屈曲しているが、アウストラロピテクスの頭蓋底は平坦であるので、人の言語様式を特徴づける母音の一部が発音できなく、音声が限定され、類人猿に近い。頭蓋底の変化は、ケニア北部で出土した200年前のエレクトスの最古の化石に認められる。ライトマンは、ホモエレクトスの喉頭の位置は、現在の6歳児と同位置であり、言語能力は、ホモ属の出現と同時に発生した、と考えた。ネアンデルタールは、頭蓋底から判断して、数10万年前から生存した古代型ホモサピエンスよりも言語能力が劣るとした。頭蓋底は、鼻閉を誘発し、不正咬合を誘発するようになった。

Downward Jaw Growth
下方成長
Nature Vol.428,p417,2004で、顎が小さくなったなった理由を2004年、米国チームが「ネイチャー」誌に発表した。研究チームが顎の筋肉を形成するミオシンというたんぱく質を作る遺伝子を調べたところ機能していないでジャンク領域になっている。チンパンジー、オラウータン、マカクザルや犬などで働いている。手足や心臓などの筋肉の場所によって異なるミオシンの種類は異なる。ヒトでは、顎の筋肉で働くべきミオシンの遺伝子が突然変異によって、ジャンク領域になっている。類人猿では、この遺伝子が作りだす強靭な筋肉が頭骨を被覆している。小顎化をもたらした突然変異が生じたのは、240年前、猿人が原人に進化し、大脳化始めた頃と一致する。
Malocclusion Type
Alveolar Protrusion
類人猿を始め、動物は突顎(Prognathism)が見られる。ホモエレクトスは、突顎が後退し、歯槽のみが突出した歯槽性突顎(Alveolar Prognathism)がある。現代人は、突顎が後退し直顎(Orthognathism)と言われる。口唇閉鎖にオトガイ筋を使用するようになり、オトガイ筋は歯、歯槽を後退させ、オトガイ隆起形成する。歯、歯槽の後退は不正咬合を誘発する。オトガイ隆起は、アウストラロピテクス、ホモエレクトスの時代にはなく、ホモサピエンスの段階、クロマニヨン人になって出現した。歯槽は、退化が進行していたが、頤は退化が遅れ、残されてしまった。退化が遅れた理由は、この部に咀嚼筋が付着し、咬合圧に対し下顎骨の強度を保つ必要があるからである。
Canine Protrusion
犬歯の巨大化
先祖様が、魚を捕食していた時代から爬虫類の時代までは、同じ大きさの歯が並ぶ同型歯である。歯種の分化は、哺乳類型爬虫類といわれる原始的な盤竜類で生じた。肉食とされる種類では、逃げないように突き刺しておく必要性から上顎骨の前方の2歯の巨大化し、犬歯として進化した。やがて、下顎にも犬歯が出現し、哺乳類に受け継がれた。特に、ハーレムを作る霊長類のオスの犬歯は威嚇用として巨大化する性的2型が見られるようになった。犬歯が巨大化すると、顎の側方の動きが制限され、犬歯の前方に歯隙が残る。空隙を霊長空隙され、乳歯がみられるが、永久歯には見られなくなる。乳歯時代にその霊長空隙がないと不正咬合になる。 チンパンジー、ゴリラの雄の犬歯は、雌より大きい。形質における雄と雌の違いを性的二形成といい、すべての霊長類に見られる体格上の違いであり、一夫多妻制、雌をめぐる雄同士の戦いに由来している。オーウェン ラヴジョイは、テナガザルは一夫一婦制で、戦う理由がないので雄の犬歯が小さいのだ。初期人類の犬歯が小さくなってきたのは、一夫一婦制になった証拠だと主張した。リチャード リーキーは、咀嚼の仕組みの変化に求め、大きな犬歯はすりつぶしには不向きであるので、噛み切るよりもすりつぶす動きが必要なった為に、犬歯が縮小したとした。
Mandibular Retrusion
歯周病は、骨芽細胞は破骨細胞の働きについていけなくなり、破骨細胞が削り取った部分を完全に回復できなくなってしまう現象である。その結果、骨量が減少し、強度が低下する。海面骨の密度は若い人でも低く老化によって骨量が低下すると網目構造が喪失し、機械的強度は低下する。両親が歯並びがきれいだからといって、自分はそうなるとは限らないのは、平均への回帰があるからである。平均への回帰とは、各種の遺伝的特徴について、ベル曲線の端に位置づけらる両親から生まれた子供は、真ん中に位置づけられることが多いという経験則である。 破骨細胞が骨を破壊し、骨芽細胞がその部を骨で埋めていく。リモデリングは、破骨細胞、あるいは、骨芽細胞の機能のどちらかが強いか、弱いかである。カップリングとは、破骨細胞によって骨破壊されると、破壊された骨の成分の何かが信号になって骨芽細胞に伝達されることである。一方が機能する時と他方も働き、一方が働かない時は他方の機能も弱まるのである。破骨細胞と骨芽細胞の機能は全身を回るホルモン、成長因子・サイトカインと骨に負荷されて発生する電位によって調節される。 破骨細胞の機能を高め、その数を増加させるのが副甲状腺ホルモンである。サイトカイン・インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)、腫瘍壊死因子のプロスタグランディンの一種・プロスタグランディンE2は、近くの細胞に働きパラクリンの作用によって破骨細胞の機能を高め、骨吸収を誘発する。インターロイキン-4は骨吸収を抑制する。カルシウムと活性型ビタミンD、エストロゲンを服用すると、副甲状腺ホルモンが分泌されなくなり、破骨細胞による骨吸収が抑制される。 下顎後退症は、顎が喉を圧迫し気道狭窄を起こさせるので、歯科治療で成長が見込めない場合、下顎骨前方移動術を施行する。
Deep Bite(過蓋咬合)
側頭筋が頬骨を前側、外側と押し出し、顔の幅を広げ、奥行きも増加させる。咬筋が発達すると、咬筋が付着している頬骨の幅が広がってえらが張る。徳川家康から、200年後の12代将軍、家慶(よし)、13代、家定、14代、家茂(もち)の顔は変化し、頬骨の後方に付着している側頭筋が細くなり、顔の幅も狭まり奥行も減り、下顎が後退した。老化は成長が止まると開始するが、筋肉や靭帯の付着部位や刺激を受けるところの骨が増殖し、顔では、えらが張ったり、腰が大きくなったりする。白髪が増え、眉、鼻毛、耳毛が長くなる。目も水晶体が硬くなり、老眼になり、白濁すれば、白内障になる。唾液の分泌が少なくなり、口臭がひどくなり、歯周病が始まる。
Open Bite(開口)
指の第1、2関節が肥大し、握手してその関節に疼痛が伴う場合、変形性関節炎に罹患している。その場合、顎関節に波及し骨関節炎をきたしている。顎関節に捻髪音や関節痛があれば、顎関節に骨性の変化を来し、骨関節炎ということになる。骨関節の症状は、指先の末端に近い2つの関節のみに出現する。相手の手をしっかり,握手するようであれば,関節炎ではないかもしれない。手のこぶしや手首の骨、足では、足のこぶしから下迄、骨が肥大し、その箇所に疼痛が出現する場合、リューマチ性骨関節炎であるかもしれない。顎関節の顆頭が、りんごをかじった状態の様1になり、下顎が後退し、前歯部開口になり、口を開けることが困難になっている。 臼歯部開口の原因は、1.耳の炎症。2.円板に顆頭が乗り上げている。あるいは、3.関節に損傷、捻挫を来し、関節腔に浸出液が貯留して浮腫が生じ、筋肉によって関節を保護する為に、筋肉を収縮して開口制限が生じている。この場合、冷却して15から20秒後の開口させ、ストレッチしてみる。次に指を挿入して咬筋をマッサージする。リラックスさせる為に抗炎症剤投薬を投与する。これらによって、臼歯部開口が咬合するようになれば、問題は筋肉にあったことになる。
Muscle
不正咬合、顎関節症の最大の原因は、Muscle Parafunction:筋の異常機能である。筋肉の成長をコントロールしている遺伝子はミオスタチンと呼ばれる。身体が正常な量の筋肉を発達させるとミオスタチンが働いて、筋肉細胞がそれ以上成長するのを阻止する。研究者は、この遺伝子をノックアウトしてミオスタチンのないマウスが作った。骨格筋が2-3倍のマウスが生まれた。このマウスは、行儀よく、優しく、意気地なしで、他のマウスを攻撃しようとしない。研究者からつつかれたり、いじられたりしても反応が鈍かった。筋肉は、細胞内にカルシウムが多いと、筋肉細胞が縮み、少ないと伸びることが日本で発見された。進行性筋ジストロフィーは男性のみに見られる筋肉疾患で、細胞内にカルシウムが蓄積しすぎることにより筋肉の機能が低下する。
Dentition
サメ
サメの皮がざらざらしているのは、楯鱗(皮歯)という小さな鱗に突起がある為で、楯鱗は、象牙質の表面をエナメル質が被覆し、歯と同じ。歯は、対表面を覆っていた楯鱗のうち、額ができた時に口の周囲にあったものが拡大し、顎の骨に根を下ろしたものである。歯のうち、多生歯性は、魚類から爬虫類まで、何度の生え換わりの歯(代生歯)が生え変わる。2生歯性は、乳歯から、永久歯まで一度しか生え換わらない。1生歯性は、哺乳類の中には、うさぎ、歯くじらのように、1度も生え換わらないものをいう。垂直交換とは、大半は、歯が抜けた後、同じ場所に下から萌出してくる。代生歯は、象や海牛類のマナティなどは代生歯が後ろから前に萌出してくる。
爬虫類〜哺乳類
多くの魚や蛇の歯は端生といわれ、軟骨や骨の上に繊維で結合している。爬虫類では、側生といわれ、歯の外側に骨の壁が立ち上がり、歯の側生へと付着面積を増やす。ワニや恐竜、哺乳類は、槽生といわれ、歯の周囲を歯根膜が形成され、骨が取り囲む。爬虫類の歯は元来、捕食に用いられ、咬頭が一つしかない単咬頭歯で、上下で互い違いのすべての歯が同型歯である。単弓類は哺乳類に進化する過程で、恒温動物として体温を保つために、咀嚼して影響を吸収しエネルギーが必要になり、犬歯より後方の歯牙が咬頭をもつ多咬頭歯に進化した。ヒトの多歯症は祖先返りである。
哺乳類エオマイア
約1億2500万年前の最古の羽恐竜が見つかった中国、遼寧省(りょうねいしょう)と同じ白亜紀前期の地層から哺乳類の15cmのネズミに似た最古の哺乳類と考えられているエオマイアには、歯の革新が見られ、臼歯を獲得し、すりつぶしが可能になっていた。臼歯は、代謝の向上につながり、熱、エネルギーを生み出す能力を獲得した。エネルギーが余剰に生みだせるようになって、脳が発達した。脳が発達して人化したわけであり、歯、臼歯がカギだった。脳は、哺乳類最古のアデロバシレウスの2倍になっていた。大脳新皮質がみられるのが、哺乳類以降であり、人の脳の特徴は、大脳新皮質の発達である。脳の重さは、体の2%であるが肺が吸入する酸素の20%消費する。
哺乳類
繊維質の多い食物や穀物を咀嚼する為に、臼歯を使用し、歯冠が高くなり、エナメル質の肥厚してくる一連の連動している形質特徴をゲラダヒヒに因んで、Tコンプレックス(テロピテクス コンプレックス)という。爬虫類の同形歯から、草食性哺乳類は臼歯を、肉食性は鍬状の歯を発達させた。犬歯は、霊長類になっても、爬虫類の形態をとどめており、先端が鋭く、爬虫類の捕食的機能をする。ゴリラの犬歯は、草食性であるにも関わらず、逆に発達している。雄の犬歯は大きく、性的2型を示している。ホモエレクトスの犬歯は小さくなっているが、歯根は大きい。霊長類の小臼歯は、爬虫類の捕食性タイプから、2咬頭性の破砕性の臼歯化が始まった。草食性が進行し犬歯も臼歯化した
霊長類
先祖様が、魚を捕食していた時代から爬虫類の時代までは、同じ大きさの歯が並ぶ同型歯である。歯種の分化は、哺乳類型爬虫類といわれる原始的な盤竜類で生じた。肉食とされる種類では、逃げないように突き刺しておく必要性から上顎骨の前方の2歯の巨大化し、犬歯として進化した。やがて、下顎にも犬歯が出現し、哺乳類に受け継がれた。特に、ハーレムを作る霊長類のオスの犬歯は威嚇用として巨大化する性的2型が見られるようになった。犬歯が巨大化すると、顎の側方の動きが制限され、犬歯の前方に歯隙が残る。空隙を霊長空隙され、乳歯がみられるが、永久歯には見られなくなる。乳歯時代にその霊長空隙がないと不正咬合になる。
哺乳類〜類人猿
哺乳類になると、歯の位置で歯種の分化が生じる。歯の位置はテコの原理で説明され、前方は顎関節から離れ開口ができるが咬合力は弱い。後方部は、開口量が小さいが咬合力が強く、多咬頭の臼歯に進化した。類人猿の臼歯部は直線的で、後方で狭まり、前歯部と臼歯部の直線があるが、ヒトは、放物線状で湾曲する。アファール人はその中間型、アフリカヌスは放物線状で、歯隙も10%以下に減る。ヒトでは、犬歯が退化し、犬歯の誘導によって、歯ぎしり、くいしばりなどの側方運動ができるようになる。八重歯は、側方運動が阻害され、咬耗、楔状欠損、あるいは、顎関節機能障害を起こすことがある。犬歯はヒト化の過程で退化した新しい退化器官である。
類人猿
ガーンとルイス(1958)は、化石の推定身長と下顎第1大臼歯の歯冠の大きさの間の相関係数を-0.56であると、増身と同時に、歯の矮小化が進んでいる。ヒト化してから切歯と犬歯が退化傾向が出現し、上顎第3大臼歯の遠心舌側咬頭が退化が始まっている。アウストラロピテクスの時代に犬歯は矮小化が進行していた。斬新世以降のヒト上科の化石の犬歯は小さいことから、現代の類人猿に見られる大きい犬歯は、進化の過程で2次的に獲得したと特徴と考えられる。
退行とは、器官が、短小、単純化する現象である。変異と淘汰は進化の要因で、この過程で環境に適応する。より高度な機能を営む為には、1部の器官を単純化、小型化を要する。顎や歯の退化は、適応という観点から見ると脳の発達と同じ方向に沿った変化であるので、この場合、進歩的退化(Progressive Reduction)と言われる。顔面の進化の原因は、咀嚼器官、特に、歯の退化に求められ、形態学的に3つの要素に分けられる。1.歯が矮小化したこと、2.歯の形態が単純化したこと、3.歯数が減ったことがあげられる。ヒト化以降、アウストラロピテクスでも、後方歯の退化が進み、歯の矮小歯、欠損歯は、クロマニヨン人の時代から目立ってきた現象である。
ヒト
こどもの歯は、乳前歯、乳犬歯、乳臼歯の順で萌出する。ヒトの歯式は、2・1・2・3(前歯、犬歯、臼歯)で合計32本である。胎盤類は、3・1・4・3で合計44本である。アウストラロピテクス ロブストゥスは、第3大臼歯が最大であるが、ホモ エレクトスは、第2大臼歯が最大になる。ヒトは第1大臼歯が最大、黒人、アボリジニは、第3大臼歯が最大。親知らずは、有無、形態に個体差があり、典型的な退化器官ということになる。 ヒト化してから切歯、犬歯の退化傾向が出現している。ホモエレクトスになると、上顎第3大臼歯は、第2大臼歯よりも小さくなり、上顎第3大臼歯の遠心舌側咬頭の退化が始まっている。ホモエレクトスは火の使用が始まっていた。鋭利な石器の使用するようになって前歯の負担が軽くなったのは、最近のことなので、前歯の退化の時期を遅らせることになった。ホモサピエンスになると、第2大臼歯も小さくなり、3咬頭性の第3大臼歯が出現している。
ホモサピエンス〜弥生人
20万年前に出現したホモサピエンスは、5万年前にアフリカと旅立ち、アジアに到達した。3万年前、その1部がシベリアに向かった。-50°の環境に熱を放散しないように、手足を短くして顔の凹凸を減らし、鼻を低くし、皮下脂肪を増やした。角膜は血管が少ないので目の周囲の皮下脂肪を厚く、目を細くして一重まぶたにして寒冷から目を保護した。シベリアでは、凍った肉を食べる必要があり、動物の皮を噛んで、みかわの成分を取り除いたのを飲んで、繊維部分だけを残して、衣服を縫った。歯、顎、頬骨が発達し頑丈な顔に発達した北方アジア人の顔、体つきが出来上がった。遺伝的な変化に伴う進化があった。遺伝子が変わらないと進化とは呼ばない。 2800年前、シベリアで、この特徴を獲得した先祖が日本にやってきた。その時、すでに、縄文人が住み着いていた。縄文人に渡来系、弥生人がまじりあった。親知らずが存在している。江戸時代の人の歯列は、親知らずが入らなくなってさらに、顎が小さくなって退化が進んでいることを示している。徳川家康の顔は短顔型をしているが、12代将軍の徳川家慶は、顎が後退し、長顔型になっている。家康から250年経っていた。食生活の影響で顔が変わってしまった。将軍は刺身、炊き立てのご飯、庶民は、魚、玄米を食べていた。眼球の大きさは2.5cmで、両方で5cm、鼻腔、側頭筋が必要であるので、顔の幅は少なくとも9cmは必要である。
シナドント
ターナー(アリゾナ大学)は、モンゴロイドの歯をスンダドントとシナドントに分類した。オーストラリアアボリジンは本来の大きなスンダドンドの形態を保っている。東南アジア人には、小さくなったスンダドントがみられる。縄文人もスンダドントの特徴を有しているが。シャベル状の前歯を持ったりして、シナドントの特徴も有し縄文人の祖先がすでに混血していたことを示唆している。シナドントは日本人、中国人らの北東アジア人にみられる。アメリカ先住民もシナドントを持つ。ベーリング海峡が地続きだった頃に、シナドントを持つ集団が、北アジアから北米大陸に移動したものである。典型的なシナドントの歯を持つのが北アジアから渡ってきた渡来系弥生人である。 現在のインドネシア諸島、フィリピン諸島の多くが、インドシナ半島と地続きになっていた。今、海に沈んだこの亜大陸はスンダランドと呼ばれている。アフリカを出発した人の一群は、このスンダランドに辿り着き、スンダランドから北へ南へ移動する集団が出現する。島づたいに海峡を越え、4万年前、南に移動しオーストラリアに辿り着いのがのが、現在のアボリジニの祖先であり、モンゴロイドである。北に移動した者は寒冷適応を受けて北アジア人となった。
現代人
鼻腔は加温、加湿するため、口腔は、食べるために必要なので、大きさを保持する必要がある。幅が減った分、長さで稼ごうとする。口は後退するが、鼻の容積を稼ぐために、白人の顔に近づいていく。顔が小さくなっていくので、脳の容積は減らないので、頭が球形に近付いていく。最近の若い人の顔は細長い顔になっている。不正咬合、歯周病、顎関節症、睡眠時無呼吸症候群に発展させる。顔が後方に成長し、睡眠時に気道が閉塞され、呼吸ができなくなってしまう。こうならない為にどうするか、固いものを食べる、口を閉じれるようにする。この変化は遺伝子の変化ではなく、食生活環境が変わったことによるのでその習慣を変えればもとに戻る。
Jaw(顎)
Bone Formation
カルシウム不足で、血中カルシウムが低下すると副甲状腺からホルモンが分泌され、破骨細胞が骨を溶解し、血管にカルシウム沈着が生じる。動脈の柔軟性は、エラスチンというたんぱく質に起因するが、エラスチンは、血中カルシウムと結合すると弾力性を喪失する。心臓から出された血液は、弾力性が低下した動脈を膨らませることができなくなり高血圧になる。カルシウムと結合したエラスチンは、動脈壁にひびを形成しコレステロールが侵入し、動脈硬化が進行する。動脈硬化は、腎臓や脳への血流を低下させ、腎機能低下、腎性高血圧、脳血管障害を誘発する。牛乳、ヨーグルトからカルシウムを摂取している地域では、痴呆の出現率が低い。 骨は、骨に負荷が加わっている場合はカルシウム沈着し、骨を強化しようとする。骨はコラーゲン線維と結晶になったハイドロキシアパタイトとで形成され、負荷が加わることで、弱い電位、ピエゾ電位が発生し、カルシウムを呼び寄せ沈着させる。雲母のような繰り返し構造の結晶に圧迫力を加えると弱い圧電位、ピエゾ電位が発生することが110年前に発見された。繰り返し構造のコラーゲン線維、ハイドロキシアパタイトを圧迫することによって骨に電位が発生することは、60年前、日本で発見された。カルシウムは、体の中でもっとも多いミネラルであり、サプリメントを利用している人が多いが、1997年、タケダ ライフサイエンスセンターの木村恵美子は成長期にカルシウムを多量に摂取しすぎた鼠は、成長が阻害されることを示した。牛乳を沢山飲む子に鉄欠乏性貧血が見られるのは、牛乳の中のカルシウムがノンヘム鉄の吸収を阻害するからである。カルシウムは金属であるが、人体ではリン酸と結合してハイドロキシアパタイトという結晶になっている。99%は骨中にあり、残り1%は血中で溶けている。2個の電子を喪失し血中でCaイオンとなり、筋肉を収縮させ、神経から神経にシグナルを伝達し、血液を凝固させ、血圧をコントロールしている。カルシウムの役割は、骨を作ることである。骨は、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルのバンクをして機能し、不足すると血中に出てくる。小腸にあるエンテロサイトという細胞は、ビタミンDの協力でカルシウムを吸収する。ビタミンDが不足するとカルシウムを沢山摂取しても排泄されるので、同時に摂取する必要がある。骨からカルシウムが流出すると骨粗鬆症、Osteoporosisに罹患する。Osteoとは骨、Porosisは穴という意味。エストロゲン生産減少が拍車をかけ、女性が5-6倍も罹患する。顎関節の骨関節炎もこの女性ホルモンが原因になる場合が多い。カルシウムを含む食品に、乳製品、ブロッコリー、昆布、わかめ、いちじく、えび、かになどがある。 骨の成長には、カルシウムを吸収して骨組織の中に取り込む必要がある。腸でカルシウムを吸収するにも、血液から骨に移すにもビタミンDが必要である。成長期にビタミンDが不足すると骨の発育が損なわれ、顎関節症に罹患しやすく、ひどい場合は、クル病を発病し、やわらかく曲がりやすい骨になってしまう。成人でも、骨組織は、分解と新生を繰り返しているので、ビタミンDが欠乏すると、歯周病、ひどい場合は、骨軟化症になり、背骨が体重でつぶれ、脚が曲がったりする。20世紀初頭、ロンドン病、あるいは、イギリス病として、大気汚染が進んだロンドンで、脚が曲がったり、頭や胸が変形した子供が出現した。ビタミンDには、数種類あるが、骨の発育に関係するのは、海草、魚などに僅かに含まれているD3と呼ばれるカルシフェロールで、食物だけから摂取するのは、難しい。ビタミンDは体内で合成され、皮膚組織の中にある7・デヒドロコレステロールという物質が紫外線を吸収して光分解反応で変化した結果、ビタミンDが生成される。ビタミンDの量は、皮膚組織に達する紫外線の量によって決定される。白人の皮膚は、先史時代、高緯度地方に移住した人々が、弱い日射条件のもとで、ビタミンDを合成する為に獲得したものである。歯周病は、骨芽細胞は破骨細胞の働きについていけなくなり、破骨細胞が削り取った部分を完全に回復できなくなってしまう現象である。その結果、骨量が減少し、強度が低下する。海面骨の密度は若い人でも低く老化によって骨量が低下すると網目構造が喪失し、機械的強度は低下する。両親が歯並びがきれいだからといって、自分はそうなるとは限らないのは、平均への回帰があるからである。平均への回帰とは、各種の遺伝的特徴について、ベル曲線の端に位置づけらる両親から生まれた子供は、真ん中に位置づけられることが多いという経験則である。
骨代謝とは、古い骨を溶解して、新生骨を形成することであるが、骨代謝において、骨吸収が骨形成に先行する。骨芽細胞が優勢であると、骨が増加する破骨細胞の機能が優勢であれば骨が退縮する。骨には、ハバース管という孔があり、その中に存在する破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成、骨吸収が行われる。ハバース管の中で、破骨細胞、骨芽細胞の細胞群の1セット(このセットを骨再構成単位:オステオンという)で達成されることになる。骨形成の方策には、1.運動、咀嚼などで骨に負荷を加える。2.食事で、ビタミンD、カルシウムを摂取する食事療法の効果は期待できない。3.投薬で、骨芽細胞に刺激、破骨細胞の機能を抑制する。 人の脳の大化を支えているのは、頭蓋縫合の遅延で、類人猿では子供期の早期に頭蓋縫合は完了するが、人間は20歳位迄開いたままで、20歳を過ぎてから縫合し始め27歳位に縫合が完了するので、顎を拡大することができる。

口蓋裂の原因
ビタミン不足が口蓋裂の原因?
葉酸は、7つのビタミンのうちのひとつで、ホウレンソウのような緑の葉の野菜から発見されたことから名前が由来している。葉酸は、細胞の規則正しい再生、遺伝物質の製造に不可欠である。妊娠8週までは、葉酸欠乏症になりやすく、その時期は、顔、脊髄、脳の成長が著しく、母親が欠乏すると、口蓋裂、脊柱の奇形、脳障害を被った赤ちゃんを生むことになる可能性が高くなる。葉酸が不足するとポリープの癌化を促進する。たばこの煙に包含する酸化作用物質は、葉酸を欠乏させる。愛煙家は、気管支の内側に形成異常(異型)細胞がいくつかある。葉酸を摂取する時期が長いほど、形成異常(異型)細胞が少なくなる。 形成異常(異型)細胞が喫煙、大気汚染の刺激によって形成された場合、葉酸の効果が目ざましい。そのため、葉酸を含んだホウレンソウ、ブロッコリーなどの葉酸を多量に含んだ食品を食べる必要がある。口蓋裂は神経管欠損によってもたらされる奇形のひとつで、神経管は妊娠第8週までに発育する。胎児の脊髄となる神経管は葉酸が不足すると正常に発育することができない。ビタミンB群の仲間である葉酸は、通常の食事でも不足しがちで、スモーカーは著しくなり、その胎児は影響を受けることになる。