矯正治療のリスク、問題点

矯正治療は歯周病を誘発して歯を動かすので必ず歯周病が生じていることになる。その為、矯正治療は、4R:Recession:退縮、Resorption:骨吸収、歯根吸収、Relapse:後戻り、Recurrence:再発が必ず起こすことになる。その酷さは、年齢、骨質、骨密度、歯牙の移動距離に左右される。人は、何らかの損失をもたらすリスクを回避しようとする性向があるが、その一方で、危険を冒す行動、「Risk Taking Behavior」をとる。それが強い歯科医がいることによって進化してきた。 例えば、リンガル矯正治療を発明した藤田欣也先生、新羅システムを考案した阿部晴彦先生、Osseo Integration Implantを日本に導入した小宮山弥太郎先生のような開拓、挑戦精神のある歯科医に依って日本の歯科も進化してきた。歯科治療をやっているかぎり、失敗やトラブルに巻き込まれることになる。歯科治療、歯科医院経営で巻き込まれるトラブルに、無頓着な歯科医もいれば、必要以上に不安を抱いていたりし、自殺する歯科医もいる。私の友人の矯正歯科医は自殺してしまった。トラブルで、ネガティブな感情をもたらされ、傷つく歯科医もいれば、ケロッしている人もいる、しかし、それは自分を成長させるチャンスであるとされている。

歯科医 歯科医

開拓精神のある歯科医

オッセオインテグレーションインプラント

 

リスクの認知、リスク=被害や損害の重大性×生起確率で、大きな事故の生起確率は低く、被害は大きいものの、生起確率は低い。通常、リスクが高いものは、便益が高く、リスクが低ければ便益も低いということが多く、リスクとべネフィットの間には、一方が高くなると一方も高くなるという正の相関関係があり、矯正やインプラント治療は高額になる。
リスクの認知、リスク=被害や損害の重大性×生起確率で、大きな事故の生起確率は低く、被害は大きいものの、生起確率は低い。通常、リスクが高いものは、便益が高く、リスクが低ければ便益も低いということが多く、リスクとべネフィットの間には、一方が高くなると一方も高くなるという正の相関関係があり、矯正治療やインプラント治療は高額になる。Human Errorとは、計画されたものが、意図した結果に達成できなかった動作、行動、判断と考えられている。
Norman,D.A. 1981 Categorization of action slips. Psychological Review, 88

エラーの分類
スリップ(slip)
意図が実行されるその過程で自分の思いとは異なる行為をしてしまうエラー。歯牙を牽引中に、歯牙を倒してしまった、あるいは、歯根を露出させてしまったような場合
ミステーク(mistake)
意図や計画がはじめからまちがったものである。骨格的ClassⅢ症例で、下顎前歯を舌側傾斜させてしまうような場合。 Norman,D.A. 1981 Categorization of action slips. Psychological Review, 88,1」James Reasonは、「ヒューマンエラー」を「計画されて実行された一連の人の活動が意図した結果に至らなかったものとした。 スピード違反などの規則違反は、意図的に規則を違反する行為でヒューマンエラーでなく、「ヒューマンエラー」は意図したものを達成できなかったことを指し、危険を承知して意図的に規則を破ることは「リスクテーキング行動」になる。www.iryokagaku.co.jp/frame/03-honwosagasu/376/376_35-45.pdf  注意には上限があり、向けられる注意の量が制限されるため、重要な作業には適切な注意を向けるようにしておくことが重要になる。習慣化することで、それに払う注意を少なく済ませることができる。矯正治療を始めたばかりのころは、唇側の矯正治療に集中するが、慣れてくると、アライナー矯正や舌側矯正治療、インプラント矯正などを手掛けるたりしてしまう。慣れた作業には、最小限の注意しか払われないため、慣れがもたらすスリップは、熟達者に無縁なものではない。 http://kiotech.net/kioku/science.html

藤田先生

リーズンの分類
James Reasonは、「ヒューマンエラー」を「計画されて実行された一連の人の活動が意図した結果に至らなかったものとした。 スピード違反などの規則違反は、意図的に規則を違反する行為でヒューマンエラーでなく、「ヒューマンエラー」は意図したものを達成できなかったことを指し、危険を承知して意図的に規則を破ることは「リスクテーキング行動」になる。

リーズンの分類

 

www.iryokagaku.co.jp/frame/03-honwosagasu/376/376_35-45.pdf 

注意には上限があり、向けられる注意の量が制限されるため、重要な作業には適切な注意を向けるようにしておくことが重要になる。習慣化することで、それに払う注意を少なく済ませることができる。矯正治療を始めたばかりのころは、唇側の矯正治療に集中するが、慣れてくると、アライナー矯正や舌側矯正治療、インプラント矯正などを手掛けるたりしてしまう。慣れた作業には、最小限の注意しか払われないため、慣れがもたらすスリップは、熟達者に無縁なものではない。 http://kiotech.net/kioku/science.html

「スリップ」
「スリップ」はやろうとしていたことが実行する段階で失敗してしまうエラーで、スリップの主な原因は、注意の欠如、注意不足と言ったものという。考え事をしていて、ほかに、注意を取られていると、肝心な作業でスリップが生じやすい。単調な作業が続いたり、疲労やストレスが溜まっているとその作業に適切な注意を払うことができず、スリップが生じやすい。急いでいるとき、焦っているときも注意を払うことができなくなる注意の欠如によって生じるエラーとされている。
記憶段階は、①(獲得/記銘):覚える段階、②(固定/保持):その記憶を蓄える段階、③(再生/想起):思い出す3段階がある。
「ラプス」
「ラプス」は、記憶による失敗で記憶を取り出せないことに起因するエラーで、記憶の欠如、必要なときに必要なことを思いだせないことによって生じるエラーなので、たとえば、患者さんに協力を強いることを指示することを忘れたりすることで生じるエラーである。記憶段階の3段階のいずれの段階においても生じる。 www.humanerror.jp/classification.html

「ミステイク」
「ミステイク」は、思い違いで、正しいと思ってやろうとしていたこと自体が間違っていることによるエラー。知識経験を生かして能動的に理解する性質があるからである。下図の漢字を何色で書かれているか答えさせると、多くの人がスムースに答えることができないのは、漢字の知識が邪魔をして葛藤が起きてしまうからで、この現象を発見したジョン ストループの名前を取って「ストループ効果」を呼ばれている。漢字を知らない外国人にはエラーが生じない。

ストロープ効果

JR西日本安全研究所は福知山線事故後、JR西日本安全研究所の研究員は、平成16-18年の運転手のヒューマンエラーを分析した。経験年齢別にヒューマンエラーの発生率をみると経験年数2年未満と経験年数5年以上にエラーが多いことが分った。経験を積むことによってエラーは減少するが、慣れることによってまたエラーが増加することを明らかにしている。2年未満は知識・経験不足で正しい判断がなされなかったのが多かったのに対し、5年以上のベテランになると勝手に判断、都合のよい解釈によってエラーが生じてしまうことを明らかにした。判断という認識がないままに行動してしまったという条件反射的なもので、知識、経験が生かされていないで悪い方向に働いてしまったもの多い。当事者の未熟さ、怠慢、不注意によって生じるものが多く、エラーを減らせることはできない。エラーを犯した当人を懲罰、叱咤激励だけでは、エラーを軽減できない。誰がエラーを起こしたかではなく、なぜエラーが起こってしまったのか原因を追究し、原因を除去したり、軽減する努力が必要と考えられている。

福知山線事故


ハインリッヒの法則
ハインリッヒは、1つの重大な事故・災害には、30の軽微な事故・災害があり、300の大事に至らなかったヒヤリハットがあることを示し、「Heinrich's lawハインリッヒの法則」として労働災害における経験則の一つを報告した。ハインリッヒの「災害トライアングル定理」または「傷害四角錐」とも呼ばれている。「ハインリッヒの法則」は、とても実践的な法則と言え、この法則から導き出せる教訓として 軽微な事故を防いでいれば発生しないものであり、この法則は色々なものに適用することができると考えられている。
「スイスチーズモデル」
James Reasonは、エラーに至るプロセスを穴の開いたスイスチーズを使って説明した。リーズンは、即発的エラーと潜在的原因によるエラーをスイスチーズの穴に見立てた。チーズの穴はバラバラなので、チーズ1枚1枚が防護壁の役割を果たし、貫通はしないはずだ。チーズの穴はさまざまなので、幾重にすれば、貫通することが不可能になり、エラーは最小限にすることができる。それでも尚、穴の位置が一致してしまうそのため、穴を見つけたら、ヒヤリハットの段階で防ぐ。エラーを分析、修復していく仕組みを歯科医院の中で作り上げていくことが必要になるhttps://www.think-sp.com/2011/02/10/swiss-cheese

ハインリッヒ ハインリッヒ

 

Perception of Risk
リスクが物理的、客観的にどの位、リスキーなものであるか?その人がリスクをどのように認識するのか?人々のリスクの認知がどんなものか?認知と対比して語られる感情がリスク意識にどのような影響を与えているのか?保守とリベラルの人では、認知が異なる。原発、死刑、中絶、環境、経済、社会保障、安全保障。そのため、客観的姿勢に立った分析が必要になる。リスク認知にも感情が強く影響している。

「ヒューリスティック」
人には入手可能な情報があっても合理的判断はしない。客観的判断するのにエネルギーを要するからで、「ヒューリスティック」という直観的な認知方略でを判断する。「フレーミング効果」
「フレーミング効果」とは、心的に構成する枠組み(フレーム)が変わると、その対象の主観的価値が変わること。半分水が入っている、半分しかないと思うのとでは印象が異なることで、フレームとは枠で、同じ絵の額縁が異なるだけで印象、価値が異なることである。 舌側矯正治療のように、リスクが高いものは、ベネフィット(有用性、便益性)が高いもののはず。リスクが高く、ベネフィットが低いものなど使うはずがない。リスクが低ければ、ベネフィットが低いなり、RiskとBenefitとの間には、一方が高くなると一方が高くなる、一方が低くなると一方が低くなるという正の相関関係が想定され、矯正治療、インプラント治療が高額になってしまう。
リスク認知 A.原発の有用性が高いという情報を流すとリスクが低いと判断する。B.原発の有用性が低いという情報を流すとリスクが高いと判断することが示されている。判断を簡便化するために感情を利用していることから「感情ヒューリスティック」を利用した判断と理解されている。リスク認知は論理的で分析的な判断をしているつもりだが直観的で感情的なので、分析に齟齬が生じる。 狂牛病は、厚生省は安全宣言したが、一般市民はそう思わない。福島第1原発後、一定の放射線基準を超えるものは市場に出回れらない、超えるものは市場に出すことができないはずなのに、風評被害は収まらない。肉を生で食べるのはリスクが高いことを行政は指摘するが、無視して食中毒に罹患する人が多い。リスクを管理する側は正しい情報を一般市民に流せば、彼らの態度、行動が適切なものになるはずだと考えているが、人のリスク認知、行動・態度は直らない。リスク認知は、客観的認識に基づかないことを2重過程理論が説明している。

ヒューリスティック  

 

2重過程理論
スタノヴィッチの「2重過程理論」は、リスク認知は客観的認識に基づかないことを説明している。「二重過程理論」とは、ヒトの思考には、2つの異なるシステムが並行して存在し、それぞれが独自のメカニズムで働き、そのどちらもが異なる形で意志決定に影響を与えている。1.「直感型」(瞬時に働き、感情と関係が強く、至近的な利益を考慮する傾向があり、進化的に起源が古い)、2.「熟慮型」(ゆっくり働き、長期的な利益を考慮する傾向があり、進化的に新しい)。理性と本能という対比は、この二つのシステムに対応している。キース・スタノヴィッチ『心は遺伝子の論理で決まるのか-二重過程モデルでみるヒトの合理性』椋田直子訳、みすず書房、2008年。

 
二重過程理論

 


Risk Talking Behavior
リスクテーキング行動をする保母先生のような偉大な歯科医がいるおかげで、歯科も進歩した。行動経済学では規範的なモデルで説明できない人間の経済活動のエラー、バイアスという「逸脱例 :アノマリー」を形式化しようとた。様々な逸脱例が人間の経済活動にあり、行動経済学は、人が侵すエラー、バイアス、アノマリーに着目し、理論化した。

Status quo bias(現状維持バイアス)
現状維持バイアス」とは、大きな状況変化ではない限り、現状維持を望むバイアスで、未知なもの、未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたいとする心理が働く。「Bias」は、斜め、偏りや歪みを意味し、転じて偏見や先入観という意味になっている。損失、回避する傾向性があるので、1万得るのと1万失うのでは2.25倍1万失う方が大きく感じられる損失と利得の非対称性がある。挑戦欲求があるが、現状を変えることは、悪い結果の可能性もあると思う。「損失回避」傾向を持つ人は、「現状維持バイアス」が働き、現状にとどまとうする。

Sankucost Effect( サンクコスト効果) 「サンクコスト」(埋没費用)とは、支払って戻ってこない費用・労力・時間のこと。「サンクコスト効果」は、現状維持バイアス、損失回避傾向から生じ、超音速旅客機コンコルドは、損失回避傾向から、開発当初から、コストがかかり、経営面でも燃費、乗員人数で回収できないことが判明したが、投資がされており中断できずに居た。結局、運行は中止された。サンクコスト(失った費用、埋没費用)は取り戻せず、失敗することが判れば、その時点でやめれば、損失拡大を防ぐ。「サンクコスト効果」は、サンクコストを惜しむがあまり、投資を続行してしまうことであり、「コンコルドの誤謬、誤り」とも言う。日本では、もんじゅなどの原発がある。www.jaea.go.jp/04/monju

サンクコスト効果

 

 

損失回避の傾向は、ダニエル・カーネマンとエイモス・ドベルスキーの「プロスペクト理論」で説明される。この理論は「人は得をするよりも、損をしたくない思いの方が強い」という理論、プロスペクト理論とは「利益を得られる場面ではリスク回避を優先し、損失をこうむる場面では損失を回避する」という心理論。価値観数という「プロスペクト理論」の根幹を示したもの横軸は金額の客観的な価値、縦軸は心理学的価値の主観的な価値が示さている。主観的な価値、心理学的な価値とは、主観的に感じる満足感のようなもので、主観的な価値である満足と客観的な価値である金額とは、必ずしも比例しない。プロスペクト理論:人は利益を得る喜びよりも、損する苦痛の方が2倍以上強い

プロスペクト理論

 

 

決定加重関数

「可能性効果」プロスペクト理論に決定加重関数が想定されている。確率と書かれている部分が客観的な確率、決定加重が主観的な確率。低い確率は主観的には過大評価される一方、高い確率は過少評価されていることが表から見て取れる、物ごとを判断するとき、どの位起こりやすいのか正規確率に基づいて判断する。そもそも主観的な確率に歪みがある。決定加重関数では、確率と決定加重の間の大きな隔たりがある。ある病気に罹ったとき、死に至る確率は0%と、1-2%の確立で死に至ると言われれば、捕らえられた方がかなり異なる。「可能性効果」とは、1-2%でも死がクローズアップされ、主観的により大きな生起確率を感じてしまうこと。 治療成功率が100%と言われる場合と98-9%と言われる場合とでは、印象が異なる。100%は確実であるのに対し、数%でも起こる可能性がないと確率性が損なわれるからで、このことを「確実性効果」といわれている。リスクを0にすることは不可能。確率性を求める効果があるために、100%安全を示す「0リスク」を求めがちになる。数%の生起確率であっても、主観的にはづっと大きく感じられるため、それに過敏に反応してしまう。損失における可能性効果、確実性効果だったが、利得においてもみられる。それが損失であるか利得であるかでリスクに対する態度は変わってくる。
カーネマンの関係性:高い確率で利得が見込まれるとリスク回避的になる。例えば、a.10万貰えるとb.95%の確立で15万もらえるという選択肢がある場合、落胆を恐れるため、貰える額が減っても10万貰える方を選ぶ。利得を得る確率が低い場合、また、損失の能性があるとき。リスク追及的になる。何とか損することを逃れたいという気持ちからのリスクの追及が損失を招いてしまう。保険をかける状況で、僅かでも巨額の損失を犯してしまう可能性がある場合、そのリスク回避のために、「期待値」、すなわち、見返りに見合わないほどのお金を保険にかける。保険会社はそのことによって利益を得ている。 https://matome.naver.jp/odai

本田宗一郎は、リスクテーキング行動がリスクだと言っていた。人は、損失回避するために、リスクを取らない。なぜ、リスクテーキング行動をとるのか?愛着の研究しているハリー ハーローが説明した。ハーローは、好奇心、内発的動機づけと呼ばれるご褒美、強制がなくとも行われる行動の源を研究した。子ザルがパズルを解こうとするが、目の前に見たこともない、面白そうなものがあるとついつい手を出してしまう、傾向があることを猿の中に見出した。何もなく、何もしないことは極めて苦痛だ、刑務所で何もさせないと精神異常をきたすという。「パンドラの箱」決して開けてはならないと言われたにも関わらず、開けてしまったため、災いがもたらされた 。

リスクテーキング行動

 

フロー(ゾーン)
Csikszentmihalyiが提唱したフロー理論は、人は「Flow 」という経験を通してより複雑な能力や技能を持つように成長していく過程を理論化した「人間発達のモデル」、「モチベーションの理論」である。「Flow」 とは、人間がそのときしていることに完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態である。ゾーン、ピークエクスペリエンス、無我の境地とも呼ばれ、その概念は、あらゆる分野に論及されている。究極に集中したときに感じられる幸福な感覚で、困難なインプラント治療をし終わった、歯科医はあの時、「ゾーンに入っていた」と。フローとゾーンは忘我の状態。

Zone

 

「Risk Taking行動」
チクセントミハイによればフローの状態を経験するには、能力と挑戦のレベルが釣り合う必要があるという。能力に比べ挑戦のレベルが高すぎると覚醒水準が上がりすぎいらいらしたり、不安になったり、心配の種になったりする。一方、挑戦のレベルが低すぎる場合にもコントロール下にある感覚よりさらに低いと無気力になったり、退屈になったりする。高い挑戦レベルが高いスキルレベルとうまくかみ合ったときはじめて恍惚としたフロー体験が為されるという。フローのような経験を求めてしまうからリスクテイキング行動をとる。男性、若い人の方が、リスクテーキングが強い傾向がある。

Risk

 

Sensation Seeking(刺激欲求、Novelty Seeking)

Sensation Seeking(刺激欲求、Novelty Seeking)は、マービン・ズッカーマンが考案した概念で、センセーション・シーキングは時代や文化を越えて共通だが、個人差や民族差があり、神経伝達物質のドーパミン受容体の遺伝的特性との関連が示唆されている。「HSS:High Sensation Seeking」は、刺激を大いに求めること」で、「HSS」という気質は、「HSP」と対照的に刺激や変化を好む気質で、刺激的な毎日や新しい刺激を求めるためにはリスクを厭わず積極的に行動する。多様で、新奇で、複雑、かつ激しい経験や感覚の追及、また、そのような経験を求めて、身体的、社会的、法的、金銭的なリスクをとろうとする特性。ズッカーマンが提唱したHSP「Highly Sensitive Person」はとても敏感な人という意味で、刺激欲求、SSという性格特性が関係している。刺激が好きな人なので行動的な性格に見られて、魅力的な人に見えるが、リスクを顧みず刺激を過度に求めることから、衝動的な行動が目立つ。「ズッカーマンは新しい刺激を求める傾向を測る心理的尺度、「センセーションシーキング刺激欲求)尺度」を開発している。 Risk Taking Behavior
〔広田すみれ他著, 心理学が描くリスクの世界 行動的意思決定入門, p9, 2002, 慶應義塾大学出版会〕

Sensation Seeking

 

自分がコントロールされているととらえている人ほどリスクテーキング行動が獲られる。Starrは、リスクの需要度を図を著した。リスクの取られる割合は利得の3乗に比例することを示した。つまり、Risk Takingによって、利得が2倍になれば、許容度が8倍に増加することになる。リスクの許容度は、自発的なものか否かによっても左右される。自発的なリスクは1000倍程度まで許容される。非自発的なリスクで死ぬ確率は病気で死ぬよりも下回っている。自発的リスクの受容域は上に迄伸びている。

 

コントロール感

「コントロール感」は、外界の事物の対する制御できる感覚をいい、ポジティブな幻想が働く。自発的リスクの受容域が高いのは、自らの意志で選択された方が、自分の力で制御、コントロール感が感じられるからである。くじを売ってもらう実験で、半数はくじを自分で選ぶ条件に、残り半数は、実験者がくじを選ぶ条件に割り当て、抽選の直前にくじを譲ってくださいと持ち掛けた。実験者がくじを選んでもらった人に対し、自分でくじを選んだ人は約4倍の高い要求をした。自分で選んだクジが当たると思うからこそ、人に譲るのが惜しくなって高額な値段をつけることが判った。人には、外界の人、事物、事象に対する自己のコントロール能力、「コントロール感」を過大に評価してしまう。歯科医もControlの錯覚という実物よりもかなり大きい「コントロール感」がある。口腔内を見たとき、すぐにできそう、簡単だと思ってしまう。やってみると色々問題が出てきて、失敗してしまうことが多い。自分なら簡単にできると思ってしまうから、困難なインプラント、矯正治療に手をつけてしまうことになる。矯正治療も人よりもうまく、早くできると思い、高額な治療費を設定することになる。

Positive Illusion(PI)

シェリーテイラー著(それでも人は楽天的な方がいい)で、3PI(ポジティブ・イリュージョン,positive illusion)を示し、都合のいいように偏った認識が精神的適応的に生きていくうえで必要である。(1)self-aggrandizement:自己のイメージをポジティブにとらえることで、性格、特性、仕事における貢献など現実以上に肯定的に評価する。(2)unrealistic optimism:個人的楽観主義のことで、自分の将来を非現実的に楽観的に考える (unrealistic optimism)。(3)exaggerated perception of control:自己のコントロール感で、外界に対する自己の統制力を高く判断する。この3PIが精神的健康に結びついていると結論する。 自分の都合のいいように偏った認識こそが人が精神的適応的に生きていくうえで必要であるとする「ポジティブ・イリュージョン」 (positive illusion) の考え方、「肯定的な、前向きな錯覚」で「ナルシシズム・自己愛・自己陶酔」の一種で、自分のことを実際の自分よりも少しひいき目に評価すること。他者よりも否定的なできごとに合う可能性が低く、コントロール感が高いと思えるからこそ、アクティブで「リスクテーキング行動」がとれる。対象となる事物の性質、個人の特定によって大きく異なる。歯科治療においてのリスクテーキング行動、治療のエラーにつながることがある。

positive illusion

 

Risk Homeostasis Theory(リスクホメオスタシス理論)

ジェラルド・ワイルドのリスク・ホメオスタシス理論(Risk Homeostasis Theory)、リスク恒常性理論、リスク・ホメオスタシス説によると、安全対策により、人間の行動はリスキーな方に変化する。技能講習はリスクの目標水準を引き上げる。技能や装備を向上させると、かえって事故が増える。結果として、リスクは変化しないことになる。
事物の危険性に呼応して安全対策、「リスクテーキング行動」をとる。しかし、ワイルドの「リスクホメオスタシス理論」によると、危険を回避する対策をとって安全性を高める分だけ、大胆な行動をとるようになり、危険が発生する確率は一定に保たれる。ホメオスタシスの機能は「リスクテーキング行動」にもみられ、リスクテーキングは一定に保たれる。事故多発道路では速度を落として安全運転するが、見通しのよい道路でスピード出して運転し、リスクは当初のレベルに戻ってしまうので、安全対策は、無効になることも多い。歯科医も安易な勉強などで、「ポジティブイルージョン」が増し、困難なインプラントなどに手をつけてしまいリスクを背負ってしまう。

Risk Compensation

環境、治療などの内在しているリスクを認知していないことが多いが認知していることもある。勉強、実習などで、「コントロール感」が向上したと増し、リスクが低下してと認知したとき、リスキーな方向へと行動が変化することを「リスク補償」と呼ばれている。インプラント治療が成功することで、「ポジティブイルージョン」が生まれ、自分は治療がうまいと認知が生まれ、困難なインプラントに手を出して、失敗してしまうことが生じてしまう。「ポジティブイルージョン」があるからリスクテーキング行動してしまうことになる。

Risk Management

失敗などに起因する危機は、キャプランは、不安の強度な状態で、脅威あるいは、喪失という困難に対処するレパートリーが不十分で、そのストレスに対処する方法をもっていないときに経験するものだと述べた。フィンクは危機とは、個人が持つ普段有効な問題解決能力が使えない、その機能が大きく低下している心理的な非常事態を示すものであるとした。ウォルカップは、危機を過程を①精神のバランスを保つシステムに変化が起きる。②そのシステムがその人の内面からの要求と、現実に起こっている外界からの要求とのバランスが崩壊していると感知する。③このシステムは習慣的に問題解決能力使用する(能動的援助)と同時に、状況的に自分が助かるようなことが起こることを願い(受動的援助)、崩れたバランスを取り戻そうと試みる。④この両方の援助方法が問題解決に失敗する。⑤どうすることもできないような無力感や何をしても無意味に思えるような感情が混乱した行動となって現れる。

キャプランは、危機を2種類に分類した。①発達段階の危機(Maturational or developmental crises)で、②状況的危機(Situational crises)がある。①発達段階の危機は、幼児期、思春期、老年期および結婚、定年などの発達、成熟に伴う人生の特定の時期で発生する予測し得る特有の危機的状況、発達的危機の代表的理論モデルには、エリクソンの人間性の生涯発達に関する8つの段階各期に見られる発達的危機がある。②状況的危機は、失業、離婚、別離などの社会的危機(Social crisis)や、災害などの偶発的危機(Accidental crisis)があり、身体的、心理社会的に安定した状態を脅かすもの。 一般に、失敗はネガティブなものとして受け取られやすいが、その状態は時間的に限定されるものであって、転換期としての重要性を持っている。エラーによる危機を転換点として捉えることによって、成長を促進させる可能性(growth-promoting potential)が内在していると定義づけられている。トーマスは、触媒(catalyst)とみなしており、古い習慣を動揺させ打ち破り、新しい反応を引き起こし、新しい発展を促す大切な要因であることを示している。
失敗などに起因する危機を特徴づけると、そこに付随する不安や恐れや抑うつなどの心理的混乱は、病的なものではなく、適応への過程における一時的な心理的防衛反応と解釈されている。しかし、様々な要因によって不適応反応から一段と悪化した心理的異常(病的反応)へと傾く場合もあり、この転換期としての危機状態に対する危機介入(crisis intervention)が重要となるとされている。

難門発生状況で、心理的恒常性の喪失から恒常性を取り戻し適応に至るまでの心的過程がある。環境に変化が起こると、自分側を変化させ、体の安定性を保つホメオスタシスが働く。恐れるとそれを適応機能、対処機能「コーピング機能」を使って、心理的安定状態、恒常性を取り戻す。失敗による危機を転換点として成熟するきっかけにもなる。人は、危機に付随して、不安、恐れ、抑うつなどの心理的混乱を経験するのは適応への過程における一時的な心理的防衛反応。要因次第で、不適応反応から悪化した心理的異常へ傾く場合もあり危機介入が必要になる。

失敗を成長に転換するには

キング&ヒックスは、失敗などの危機から発達が達成されるための3心理的必要条件は、1.人生に驚かされたと認められる、1.能力、2.謙虚さ、3.勇気だとした。1.2.は人が生きている以上、いつなんどき失敗、ミス、何があるかわからないということを意識しておくことが必要。人生目標は常に達成される訳ではなく、常に謙虚である必要がある。3.新たに、人生を踏み出していこうとする勇気も必要なのだとこの3つが揃った人が危機を経験すると、それを契機に成長が図られる、とキングらは述べている。

楽観性バイアス

人は、「楽観性バイアス」あるが故に、自分は失敗しないと思って、失敗をしてしまう。同時多発テロ前後の飛行機に乗る人が減少し、事故発生率が高い自動車に乗り、自動車事故の件数が増加した。調査したGlgerenzerは、飛行機を恐れるがゆえに、逆に路上で生命を失うことになったことを示した。私たちは、経営、治療、人的資源管理を心配することになるが、Weberが提唱した「心配総量有限仮説」によると、心配できることの全体量の容量が決まっていて、ある事象に関する心配が大きくなると、別の事象についての心配が小さくなるという。

楽観性バイアス

 

中谷内一也も、2008年と震災後1年後の2012年の不安の評定平均値を調べた。2012年の方が不安の評定値が低くなり「不安有限総量仮説」を証明し、震災によって地震、原発に不安が高まり、他のものへの不安が減少し、原発への危機意識が高まり、環境破壊への危機意識が低下した。新聞5社の記載数と不安量の関係には、正の相関があった。新聞などのマスメディアに取り上げられるハザードで不安が高まっている。マスメディアに取り上げられるハザードが緊急性が高くないがマスメディアに取り上げられることで不安が高まり、別のハザードへの不安が低下したことにより、不安有限総量仮説を再証明した。

 

少しでも、ミスを減らし、患者さんに来て貰う為には?

Bio Progressive Therapyを考案した矯正歯科医のRickettsの10 Factor Analysis以外にもう一つの10 Factor Analysisが存在している。医院戦略(広告、宣伝、コミュニケーション)をどのような方向性に持っていくか?医院戦略を実現していく上での、組織の機能、スタッフの行動を推進するドライバーとなると、組織成長の安定性やオペレーションの堅牢性が増し、医院価値が増大する。

「10Factor Analysis」医院戦略の収益、院内外要素を分析する。A.院内要素:①Clarity(概念明瞭度)②Commitment(関与浸透度)③Governance(統治管理度)④Responslveness(変化対応度),B.院外要素⑤Authenticity(信頼確実度)⑥Relevance(要求充足度)⑦Differentiation(差別特有度)イメージ、機能上、他と違うのか?どの位、相対的に強いのか?⑧Consistency(体験一貫度)中核概念を理解し、共鳴・共感がどの位のレベルで達成されているか?⑨Presence(存在影響度)⑩Engagement(共感共創度患者さんと一緒になってイメージの価値創造に参加しているか?弱点があると医院価値が下がるので、10Factor Analysisで弱点を探る。

SVS Model

Earie & Cvetkovichの「SVSモデル(Salient Value Similarity Model,主要価値類似性モデル)」とは、モノの見方とか社会のあり方、思想、主要な価値を共有が人を信頼する要素という考え方で、「価値共有認知」が信頼性を決定する。中谷内も信頼に至る順番を調べたところ、価値共有認知、動機づけ認知、能力認知の順だった。その問題がその人にとって重要な場合、その問題の賛否が社会的に分かれている場合、価値共有認知が信頼に最も強く影響する。価値共有認知、類似性が高いと判断されたら,能力や動機づけも結果的に高いと判断する。人は、自分と同じ考え、思想の人を頭いいと思う。

SVSモデル

 

 

私が学生のときは、何処の歯科医院も患者さんが多く、夏休み、朝9時に並んで、治療を受れたのは、昼過ぎていた。開けていれば、患者さんが並んだが、歯科医院が増えすぎると、工夫して患者さんを集めることが要求されるようになった。これは患者さんのニーズに対応すべきだということを示している。

歯科医院が存続、成長させるために何が必要か?それは継続的な売り上げと利益だ。それを確保するのに必要なのが、患者さんが医院を支持し、選択し、来院して貰えることだ。患者さんの支持は対価の価値に値すると感じられる医院だ。競っている歯科医院は無数存在し、その中から選択してもらうには、他の歯科医院より優れていると感じられなければならない。それには、他の歯科医院にはない価値が必要になる。「Innovation」というこれまでになかった発想、仕組みを生み出す必要が出てくる。患者さんに支持される必要条件ではあっても、十分条件ではない。
繁栄する歯科医院には、巧みな「Innovation」が存在し、2条件が必要になる。1.価値が患者さんに意味のあるもの、有用だと思わせなければならない。リンガル、アライナーと目新しいものを示しても支持されるわけではない。古典的な治療でも価値が支持される。2.もう一つの条件は患者さんにその価値が理解されなければならない。Innovationが活気的であるほどその価値を理解できないこともある。インプラント矯正が出た当時は、誰もが不安に感じ、患者さんに価値を伝達することが必要になる。患者さんの価値を発見し、それを患者さんに伝えるのがMarketingの役割だ。厳しい歯科界で生存するためには、Innovationが必要だ。


セオドア レビット(ハーバード・ビジネススクール教授)

1.患者さん志向性

ヤンミ・ムン(ハーバード・ビジネススクール教授)

「患者さん志向性」とは、患者さんのニーズを把握し、満たす治療を提供し従うべきだとという考え方。ニーズを満たして支持するわけでもない。患者さんは本質的な部分での医院間の差別化が困難で差異を見出すことができない、どこも同じだからどれでもよいという状況を「コモディティー化」「異質的同質性」とヤンミ ムンは指摘した。この状況に陥ると、価格でしか差がつけようとし、価格競争が起こり収益を圧迫する。多くの歯科医院でもコモディティー化が進行し課題となっており、単純に患者さん要望にやみくもみに応えるべきではない。どのようなニーズにこたえるべきか?

www.dhbr.net/articles/-/2063

2.利益志向性

「Patient Insight」恩蔵 直人によると、人にはニーズのレベルがあるという。1.明言されるニーズ:主訴のように、知ることができるニーズ2.真のニーズ:患者さんは、直接それを語らないが。患者さんが語る背後で容易に把握することができるニーズの事。1.2.のニーズにこたえていても差別化できない。3.学習されるニーズ:消費者の言葉から推測できない。さらに、患者さん自身も気付いていないニーズ。有意なポジションを獲得するための、第3のレベルを把握する必要がある。「Patient Insight」とは、患者さん以上に患者さんのニーズを理解する必要があり、患者のニーズに関する洞察をいう。

2.利益志向性は、2本目の柱で利益の確保が可能な方法で治療を提供しなけえればならない。治療は、利益の確保が可能な方法でなければならない。利益を度外視すれば高品質な治療を低価格治療を提供すれば患者さんは満足するだろうが、そのことによって歯科医院が存続することができなくなり、治療が提供できなくなる。患者さんと歯科医院との間にWin Winの関係を作り出すことだ。両者の利益を両立させることはたやすいことではない。両者が満足する取引を成立するのは、難しい課題で、その葛藤に対するのが3本目の柱である統合性である。3.統合性は、患者さんの満足と歯科医院の利益を組み合わせていくと考え方。

onzoseminar.web.fc2.com

Patient Value(患者価値)

「成人矯正治療における価値の創出」

歯科医院や矯正歯科医院が増え、患者さんが減少傾向にあれば、患者価値を作りだすことが必票になってくる。患者さんがその医院を選択するのは、その治療に価値を感じるからこそであり、その歯科医院にいくのは、他医院よりも魅力的だからである。患者さんに来てもらうには、歯科医院の治療の患者さんの価値を作り出すことが、来院に繋がる。歯科医院経営を維持、成長させていくには、医院の治療に価値を感じた患者さんが継続していることを意味している。その際に重要なのが患者さん満足である。

患者さんは選択肢に価値を見出し、選択し、満足に至るか?歯科治療は、患者さんに価値を提供し、自医院の価値が他医院より優れていると知覚されるために戦略を用いる。戦略で、患者さんが認めた価値が「患者価値」で、患者価値の実現は患者満足を生み出す。患者満足は、医院にロヤルティ形成され、その人が患者さんを紹介動機を作る。ある治療分野で自医院が占める患者数を「患者シェア」で、患者シェアは、患者価値と患者満足で高められる。患者シェアを高めて、歯科医院は利益を得る。患者さんが生涯、歯科医院にもたらす価値を「患者生涯価値」があり、医院は、高い患者生涯価値を生み出して貰おうとする。

患者価値とは歯科医院の行為に対し患者さんが認める価値のことを言い、知覚価値ともいわれる。患者さんが価値が見出されなければ、患者価値は生まれない。どのように患者価値が生み出されるのか?「総知覚ベネフィット」治療行為から生み出されるベネフィットと「総知覚コスト」患者さんが犠牲を意味するすべてのコストの2つの比によって算出することができる。「総知覚コスト」患者は限られた知識、予算、時間の中で、最も価値を提供する医院を選ぼうとする。「総知覚ベネフィット」と「総知覚コスト」の比を計算し、治療の評価において、最大の価値を知覚する治療を選択することになる。

患者価値を高める方法:A.知覚コストを引き下げる、1.金銭的コストを引き下げる:価格はそのままにして、値引き、学割、家族割などの価格プロモーションを実行によって分母を小さくし、分子が一定だったとしても、分子のベネフィットを高め、患者価値を高めること2.非金銭的コストを引き下げる:来院回数を減らし治療時間短縮したりして、分子のベネフィットを高め、患者価値を高めることができる。治療間の違いを患者さんが知覚できない状態にあるが、新しい治療技術は知覚ベネフィットを高める。歯科医院は、優れた患者価値を検討するために様々なベネフィットに注目することが大切だ。B.知覚ベネフィットを引き上げる。

Clinic Benefit

 

Benefit

「機能的ベネフィット」は、その治療技術が備えているベネフィットのことで、インビザラインなどのアライナー、通常の固定式矯正治療、治療時間の短縮、治療技術の革新、改良によって患者価値を実現してきた。機能的ベネフィットは、客観的な基準で評価、優劣の判断されやすいため、競合歯科医院も同じことをすることになる。インプラントや矯正治療は咀嚼できるようになるという機能的ベネフィットを有しているが、デザインやステイタスという「情緒的ベネフィット」を加えることで治療に患者価値が高まることになる。治療期間2年と3年とを比較してみた場合、治療の優秀性は、治療期間で判断することができるが、アライナー、固定式の矯正の優劣の判断は難しい。

「経験的ベネフィット」治療を受けて得られるベネフィットで、患者の精神面に働きかけ、個人的な価値を創出され、患者さんの記憶に残りやすく、医院は、「経験的ベネフィット」を創出し、他医院との差別化する。ある医院は、アロマを用い心地よい治療経験を演出するなど、非日常体験を提供し、自医院の価値を創出している。「文脈的ベネフィット」そのときの文脈に依存して生み出されるもので、サービスはそのときの文脈を豊かにし、患者さんに記憶される。患者さんがとる行動に依存して生み出される「文脈的ベネフィット」は創出されにくいベネフィット、そのため、患者教育ということが必要になるベネフィットである。

歯科医院では、患者教育によって、なぜ、疾患に罹患するか、それをどのように予防するかを教育する。AAP(米国歯周病学会)は患者教育こそが治療の第1だとしている。「社会的ベネフィット」社会的利益を考慮した歯科医院の取組から生まれるベネフィット。歯科医院主体の活動から患者参加型の活動までの形で創出される。歯科医院は好ましいポジショニングを形成するために、歯科医師会、学会、勉強会、講習会に参加する。「社会的ベネフィット」創出は、歯科医院利益と相反する結果を導くことがある。


患者さんは、他医院の魅力的なインセンティブにさらされている状況下で患者さんを満足させることはハードルの高い課題となっている。患者価値を引き出し、治療し、患者さんを喜ばすことができたなら、患者満足を引き出すことに成功したことになる。患者満足の概念は、一人の患者を複数の歯科医院が奪い合う現状のおいては重要な概念である。患者満足を獲得すると、患者さんは歯科医院を信頼し、競合歯科医院へのスイッチが少なく、治療費のこだわりを減らし、歯科医院にアイディアを提供してくれたり、好意的な口コミを流す。患者さんを紹介してくれるということは、好意的な口コミを流しているということになる。

期待不一致理論

「期待」治療前に治療から得られる価値の予測で、知人、口コミ、プロモーションなどで形成、歯科医院は、適度な「期待」を作り出し、その期待に見合う「パフォーマンス」を実現しようとする。「パフォーマンス」治療、対応に対する評価のこと。「患者満足」患者さんが経験した治療が治療前の期待を上回るか下回るかで生み出され、「期待」と「パフォーマンス」が一致すれば満足が得られ、一致しないと不満足になる。満足した患者さんは患者紹介するが、不満足だと悪く口コミに書き込みすることになりかねない。コンサルテーションで、期待値を上げてしまうと満足できない状況ができ、患者満足を持続するために患者に満足の仕組みを考える必要がある。

患者さんが知人を紹介し、その紹介された患者さんが同じ訪れていれば、「患者さんロイヤリティ」形成されていることを意味し、その患者さんは、歯科医院にとって大切な人である。その患者さんの紹介が無ければ形成されておらず、何らかの不満を感じながら治療を受けていると考えなければならない。ロイヤルティには種類があり、患者さんの態度、行動で「患者ロイヤルティ」は、①「真のロイヤルティ」②「潜在的ロイヤルティ」③「見せかけのロイヤルティ」④「ロイヤルティなし」に分類される。①「真のロイヤルティ」:医院の患者で、医院に対し好ましい態度が形成され、態度と行動が一貫していることであり、経験した満足から得られる。②「潜在的ロイヤルティ」:好意的態度があるものの、行動が伴わない場合で、治療を受けたいが経済的理由などで、治療を受けることができない場合等が該当し、問題が解決されると患者さんになる。③「見せかけのロイヤルティ」歯科治療を受けているが、医院に対する態度が伴っていない場合で、予算や地理的理由で通っているだけが該当する。より魅力的な治療が提示されたり、金銭的サービスが終了すると、他医院にスイッチしがち。④「ロイヤルティなし」。歯科医院は、患者獲得が最重要課題で、「真のロイヤルティ」形成を目指す歯科医院にとって患者満足が重要になる。患者満足、患者ロイヤルティという医院の取組を「リレーションシップマーケティング」と呼ばれている。患者満足の把握する方法は、アンケートで満足度を評価して貰い、患者満足度を数値化、満足の形成要因を把握する。Patient Satisfaction Index:PSIを調べ、歯科医院は、不満を持つ患者さんへも対応しているところがある。Webによって、悪い口コミがすぐさま拡散し、それを放置しておく状況は患者を失うことになりかねないからである。不満を感じた96%はその歯科医院に二度と行かないと言われている。賢明な歯科医院は患者様相談室の設置、フリーダイヤル、メールアドレスの表示、ウェブサイトの構築している。

歯科医院における価値形成プロセス

患者さんシェアがどの位高いかによって歯科医院に齎す収益を考える概念が「患者生涯価値」で、歯科医院にもたらされるであろう価値の総計を現在価格に換算した価値のことである。治療期間中に歯科医院にもたらされるであろうとする期待収益と歯科医院が患者さんを獲得しサービスでかかるコストとの差額で換算される。患者価値、患者満足、患者シェアまでの概念は、患者さんの歯科医院に対する評価の問題である。この患者生涯価値は患者さんが生涯、どの位収益をもたらすのかを考える歯科医院視点からとらえた概念である。歯科医院は、患者さんが歯科医院にもたらす価値を算出し、歯科医院が得られる価値を算出する。「Patient Equity」とは、医院が掘り出すであろう潜在患者さんのことで、大きなPatient Equityを得るために、患者さんと良好な関係を構築しようとする。要望に応えるようと患者心理を考えたサービスの提供しようして、他医院との格差が生れている。患者満足を実現するために、患者中心に据えた取り組みは業種、業態という枠を超えている。病院の場合は、病人は日常に憧れ、看病してくれる人を疲れさせない、安らぎの空間の演出し、フリンジ(周辺サービス)、インテリア、備品などにこだわり、患者満足を生み出す意識体制下にある。

経営戦略の構図

経営戦略:ボクシングであれば勝つことが目的で勝つために戦略を練る、目的達成のため戦略がある。勝利が目的のために手段を使う。距離を取るか?インファイト?持ち込むかジャブの出し合いに持ち込むか、カウンターを狙うか?動くか?スピードで対抗するか?手数で勝負するか?一発を狙うか?これが手段になる。どの手段を選ぶかは、対戦リングの硬さ、広さ、対戦相手のタイプ、パンチャーかアウトボクサー、ファイターかで、選ぶべき手段が変わってくる。手段は、状況に依存することになる。戦略は目標達成の論理であり、歯科医院も目的があり、患者獲得、そして利益である。