MMTB(Modified Magnetic Twin Block)の開発、その診断と治療方針
固定式矯正装置は米国で、機能的矯正治療はヨーロッパで発展した。機能的矯正治療は賛否両論あり、疑問を向ける歯科医も多い。機能的矯正治療は、患者協力を強いる。すべての人に効果があるわけではない。改善される人と改善されない人の診断や適用後に安定したとする判断が不明である。治療による成長か個人の成長か判断できない。治療しなくても成長が起こるのでは。成人に使用するとDual Biteが作られてしまう。前もって上顎拡大治療や、治療後の第2期の固定式治療が必要になる。治療メカニズムが解明されていないなどの問題点がある。 しかし、ClassⅡ症例に用いられるClassⅡゴム治療は整形的効果がほとんどないことが側貌規格写真の普及によって明らかになっている。この治療は、上顎前歯が後退させ、上顎前歯に叢生が生じる。さらに、前歯の歯根が舌側の皮質骨に衝突させ、上顎前歯が歯根吸収させることが多くなる。また、上顎の垂直的過成長、後方臼歯の挺出により下顎の下後方回転が生じ、この垂直的不調和は前後的な不調和をもたらし、下顎後退症が増悪する。固定式矯正治療自体、顔面軸を後方回転させ、下顎を後退させるのである。ヘッドギア治療も上顎第1大臼歯の挺出、口蓋、咬合平面の前下方への傾斜、下顎骨の後方回転、それによる下顎下縁平面の急傾斜、前下顔面高の増大が生じさせ下顎劣成長を悪化する。 ProfitはClassⅡ症例のすべてが下顎後退症であることを示している。
Profit WR,Fields HW,Moray LJ:Prevalance of malocclusion and orthodontic treatment need in the United States:estimates from the NHANE-Ⅲ survey,Int J.Adult Orthod Orthogn Surg 13:97-106,1998.
もし、成長が残されているのであれば、頭蓋顔面の縫合、下顎頭、フォッサ嘉、歯槽骨の成長発育影響することが判っている機能的矯正治療を試みるべきである。Williams,S.and Melsen,B.Condylar development and mandibular rotation and displacement during activator treatment.An implant study.Am.J.Orthod.81:322-326,1982.
機能的矯正治療は、下顎後退症のClassⅡの成長期であれば、顎の成長、機能の抑制因子を除去し、成長を刺激して適応させ、垂直的、前後的不調和を解消し、機能を回復することができる。
Complianceを得られるようにするために装置をツインにし、磁石をくみこんだ。 ツインにし、磁石を組み込むと、Over Correction傾向が強くなり、構成咬合の前後距離は半分で済むようになった。また、前後的、垂直的コントロールが容易になった。
Darendelier,M.A.& Joho,J.P.Magnetic activator deviceⅡ(MAD) for correction of ClassⅡ Division Ⅰ malocclusions. Am.J.Orthod.103:223-39.1993
Darendelier,M.A.は磁石で、骨格的開口の治療ができることを示している。
Dellinger,E.L.A clinical assement of the active vertical correction,a non surgical alternative for skeletal open bite treatment.Am.J.Orthod.89(5):428-436,1986.
Clarkは、斜面や磁石の位置、角度の変更で反対咬合にも対応できるとしていた。
ツインブロック機能療法 William J.Clark,氷室利彦訳 第19章 マグネティックツインブロック 301-307
この機能的矯正治療の成功の鍵は、患者のComplianceと成長が残されているかである。
機能的矯正治療の目的は、骨格構造に影響を与え、上顎の前下方への成長を抑制し、下顎の成長を促進、コントロールして異常な成長を抑制することである。
こ固定式矯正治療は、下顎を下後方回転下顎後退、垂直的な不調和を誘発し、垂直的な不調和は必ず、前後的な不調和を誘発し、顔面高が大きくし、下顎劣成長を悪化するが、機能的矯正治療は、骨格に整形力を加え、上顎の前下方への成長を抑制し、下顎の成長、回転をコントロールして異常な成長を抑制することができる。
MMTB Configulation
→ | ||
治療前 |
治療後 |
問題を解消するためにTwinにしてComplaianceを得られやすくし、マグネットを付加して、垂直的コントロールを容易にした。
Horizontal Line |
Vertical Line |
顔の成長方向をコントロールするため、装置に組み込む磁石の角度の決定
1.FX |
2.OP |
3.FX Perpendiqular |
4.Angle of FX Perpendiqular to OP |
顔面の垂直的形態によってマグネット角度を決定するために、
1.FXFacial Axis)を引く。
2.OP(Occlusal Plane)を引く。
3. FXからOPに向かう垂線を引く
4. FXからOPに向かう垂線とOP(咬合平面)との角度を計測する。
この角度がマグネットの角度になる。
上顎骨を変えたくなければ、上顎の抵抗中心を通るような力が加え、抵抗中心からずれていなければモーメントは0になるため、上顎骨の角度は変化しない。 抵抗中心を通り上顎の成長方向に拮抗する負荷をかけ、上顎の垂直成長を抑えれば、前下方の成長を抑制することができる 。この場合、マグネットはFXからOPに向かう垂線に対し平行にする必要がある。 顔面軸に相対させると平坦になって垂直成分が強くなり、水平成分の下顎のアドバンスが不可能になるので、マグネットを付加する必要がある。
Horizontal Growth Tenndency(Brachy Face)
マグネット角度:直立傾向
相対する装置の面を平坦にし、 上顎の抵抗中心に対して、力の方向はCenter of Resistanceより前方に移動させ上顎骨を前方回転させる。 上顎骨の傾斜度を変える、あるいは、水平成分も不十分になるのでMagnetが必要になる。
Vertical Growth(Dolico Face)
マグネット角度:水平傾向
口蓋平面の傾斜度、上顎後方部が下方回転によって、上顎歯の過萌出が促され、それによって、下顎骨の下方回転が余儀なくされ、垂直成長、下顎後退、開口が誘発される。上顎骨が上方傾斜しているので、1ブロック型の機能的矯正装置の治療を行うと傾斜度を強くし、開口をひどくしてしまうことがある。 このような場合、下顎からの相反力は、上顎の抵抗中心の後方を通るようにし、上顎骨後方部を上方回転させ、前方部を下方回転(Clockwise Rotation)させなければならない。 クラークはツインブロックの角度を70°にして急斜面にしているが、マグネットの角度は70°が限界で、それを超えると下顎をアドバンスすることができなくなるので、マグネットを付加し、上顎の傾斜を変える場合、抵抗中心から離れたところに、圧下力がかかるようにする必要がある。 この治療によって、垂直成長傾向を正常に変更することはできないが、傾向を弱めることはできる 垂直成長が強い場合、上顎臼歯部をレジンブロックし、さらにひどい場合、上下臼歯ともブロックし、後方部にMagnet付加するのも一法かもしれない。 水平成長が強い場合、LingualのResinを削合し、臼歯のExtrusionを促し、Bite Openingする必要がある。
Treatment Step
FA Treatnment Procedure | 1a.Maxillary Expansion |
MMTB |
構成咬合 |
1.Pre FA Treatment
a.Maxillary Expansion
ClassⅡ症例に上顎幅径が狭く、約半数は臼歯部交差咬合を見る。 下顎は拡大してもRelapseするがこの治療の目的はAnterior Alignmentである。咬合が悪化する犠牲を払ってでさえも、鼻の通気性が低下していると疑われる場合、適用する価値があると思う。拡大すると頬側傾斜が生じるので、Fixedが必要になる。
Expansion Screw:90°/1W
Labial Archが後退し、前歯にRetractionの力が加わる。前歯を後退させたい場合、Lingual Resinを削合する。通常、Labial Archと前歯にスペースを作っておく。
Screw Adjustment(Rotation)
1日14時間未満装着する:1/W
1日14時間以上装着する:2/W
Lundberg J.O.e coll.によると上顎骨拡大は、鼻呼吸を促し、NO:一酸化窒素吸収の吸入を促し、NOは肺血管拡る機能があり、血中酸素濃度を上昇させ、脳冷却機構に作用し、IQが良くなることが見られる。
Lundberg J.O.e coll.Inhalation of nasally derived Nitric Oxide modulates pulmonary function in humans.Acta Physiol.Scand.,158(4):343-347;1996
Gray L.P.によるとNOは、殺菌性、抗炎症性を有し、RMEによって、扁桃炎、中耳炎が減少する。
Gray L.P.Results of 310 cases of Rapid Maxillary Expansion selected for medical reasons.J.Laryngol.Otol.,89(6):601-614;1975.
ConstractionBite(構成咬合)
通常の半分、しかし、垂直的に3mm位必要、前歯部、臼歯部にブロック、トルキングスプリングを入れる場合、+2mm。ミッドラインコレクションは1mm未満で行わなければならない。さもないと耳介側頭神経圧迫,あるいは、内障などのTMD Troubleに見舞われることになるかもしれない。Macandrew App.のMacandrewは、矯正治療はTMDを誘発しないとAJOで発表している。
ClassⅡ Vertical Growing Case
1st Exam:2012.6.10. 9.3Y(2003.3.17B) |
2012.8.11 |
FX:80、垂直成長
FD:77、下顎後退
MD:87:上顎骨は正常
下顎前歯は、Dental Compensationで前突している。OPT、CVTとも96°で、Straight Neckの前方頭位。気道が狭くて、頭を前にだし、舌骨筋が緊張することによって、顔が長くなって下顎後退が生じる、チリのサンチャゴのマリアノロカバドのいうTight Hyoid System。
Diagnosis:Vertical Growing,Mand Ret.前歯前突、特に下顎前歯
Treatment Plan
FX PerpendiqularをOPに引くと45° Vertical Growthであるので、+10°にして、Magnet Angleを55°にして、Max Lineを前方回転させようとした。
Treatment
Evaluation
Vertical Control としてFXが80°から88°に改善。FDが77から83になりMandibular Advancementが見られる。Max.Depthは変化せず、上顎骨に前後的な整形力は見られない。
Open Bite Vertical Growing Case
FX:80:Vertical Growing
FD:76:Mand.Retro
MD:89:Normal
Vertical Growing によるRetro,Open Bite
FX Perpendiqular to OP:40°。Open Biteを改善するため、MPを前方回転させるため、Magnet Angleを50°にした。
Pre FA Treat(Expasion) |
Post Pre FA Treatnebt |
MMTB Treatment |
Post MMTB Treatment,2015.2.15,12.8Y(10M MC Treatment Post) |
+Fixed Combination Normal Growth Case
ClassⅢCase
Variation
Toisherは上顎前歯に力が加わって舌側傾斜しないように前歯部WireをTSに変えている。Dellingerは咬合面に磁石をくみこんで、臼歯をDepressionしてOpen Biteを改善している。もし、Maxillary Planeを前方傾斜させたければ、後方の咬合面にMagnetを組み込む。もし、Max Planeを後方傾斜させたければ、前方の咬合面にMagtnetを組み込むこんでみています
結論、まとめ
改良したMMTBは
前後的CBは短くて済む。
しかしVertical Openingは3mmと大きくする必要がある。
さらに咬合面にMagnet,Anterior Torquing Springを組み込む場合、+2mm必要になる。
Magnetを組み込むと治療期間が短縮され、Over Correctionされる。
FX,FDがControlされる。
上顎前突はControlされなかった。上顎骨を後退させるには、HGがよいと思われた。しかし、ほとんどのClassⅡは下顎後退であるので、成長期であれば、この治療方法は勧められる。