顎咬合学会 審美歯科学会 全身咬合学会 心身歯科学会 スポーツ歯科学会 舌側矯正治療
矯正学会 成人矯正学会 東京矯正歯科学会 健康医療学会 睡眠歯科学会 日本科学者会議

顎咬合学会演題

包括的歯科治療の役割(2004年)

本学会で公演したMichael Neyman先生等が数年前、本学会で講演し、歯周病が全身と関わりがあり、歯周疾患と全身疾患に相関が存在し、重大な疾患であることを示した。オーラルバイオフィルムは血流に乗り体の様様な個所に運搬され、その口腔内細菌で歯周病菌のポケットへの感染は、別のところに感染し、菌血症、心内膜炎が生じ、心臓、糖尿病に影響するという。その為、その当該歯を抜歯し、予知性の高いインプラントを施すようになったインプラントを埋入するスペースを作る為に矯正治療や再生療法がおこなわれ、歯科治療の目的である、健康、機能、審美を回復する為に包括的歯科治療が要求されている。逆説的に、歯周疾患は全身疾患であり、歯周治療によって、逆に全身状態をコントロールすることも可能になるになる、つまり、全身疾患が歯周炎という形態で出現する。歯周病が全身の健康に影響し、全身疾患が歯周病という形で出現することが判ってきた。全身疾患であるという、その為に、医科的な診断が必要になり、更に、包括的歯科治療の要求が高まってきている。

 

顎関節症のセルフコントロール(2008年)

【始めに】人は、ストレスや心理的葛藤があったりすると、食いしばりをその慰安に利用する。夕方に顎が痛くなるとすればそれによる食いしばり、起床時に痛くなるとすれば、歯軋りが誘引であることが判る。このくいしばりというパラファンクションによって円板が癒着し、開口障害に発展した場合、歯科医は、口腔内を視ることによって原因を探そうとする。もし、歯の磨耗が発見できれば前歯のかみ合わせが浅いことに起因していることを認識する。このように、診査、診断には、原始的な問診、視診、触診が非常に有効であり、我々歯科医は、聞いて、見て、触って、その人の痛みを理解しようとする。見て、何かが判るのである。【結果、考察】顎関節症だと自認している患者さんの中には、身体に過度に心配しているだけのこともある。あるいは、感情的なストレスを肉体の苦痛と取り違えていることもある。顎が痛いのは、かみ合わせが悪いからですとか、かみ合わせが悪いと頭が悪くなる、頭痛になるとかメディアや歯科医が警告していることによる社会因性の痛みであることも考えられる。その理由はセルフコントロールなどの行動指導で改善できることが多いからである。又、優しくされた経験があると、食いしばって些細な刺激で痛いと感じるようにオペラント学習し、慢性疼痛行動が出現し、良くならないことから利得を得ようと身体化表現する。又、何らかのストレスや悪い姿勢は、後頭部からうなじ、こめかみ、眉間、顎などに痛みをもたらす。痛みが持続的になると、こめかみや後頭部、首筋がしめつけられ、首や肩のこった感じという形容が伴ってくる。そして、頭や首に痛みの存在が持続していると、姿勢や顔つきまで異常になってくる。デカルトは、「ある現象(原因)は、他の現象(結果)を引き起こし、さまざまな現象の間には、因果関係がある」と言っているように、そうせざるをえなかったという見るべき必然性が横たわっている。痛みには、感情、行動などの誘因が根付いているので、顎運動解析装置と異なり、問診、視診、触診のような原始的な手段が、なぜ、痛いのか、なぜ、痛いという誘因が存在しているのか解き明かすことができるのである。

患者教育を成功させる為に(2008年)

人は、他人の事は何でも知っているが、自分のことは何一つ知らない。患者教育を成功させる為に、患者さん、歯科医院のスタッフのことのみならず、歯科医としての生物学的行動特性を知るべきである。生物学は、動物と人間との間には、明確な相違がない事を証明している。人間と動物との間に連続性が存在するだけであり、両者の相違は大脳の複雑さと社会的意識性の程度であり、動物の生活環境が、動物の潜在能力の発達に必要な課題、強化を与えるような形態になっていないだけである。患者教育は、患者さんの思考、感情に影響し、状況を説明して理解させて強化し、逆に我々、歯科医も強化されていく。行動は、他人の監視、期待によって制限を受けている。同じ種が行動する場合、背景にあるプロセスも同じある。行動は、見返りがある刺激への反応が高まるという学習プロセスと生殖行為が促進される場合に広まる。嘘と自己欺瞞は生存競争に役立ち、自然選択によってわれわれの本性に組み込まれている。嘘は歯医者と患者、歯医者と衛生士といった関係の背景に潜んでおり、あらゆる人間関係において決定的な役割を演じる。嘘は、正常な行いであり、反射的に意図しないで行われる。利益を得るために、我々、患者指導するサイドは、患者さんによく見せなければならない。歯を削れば、いくら充填しても、間隙ができてしまい虫歯を作ることになる。スケーリングすれば、歯肉の歯への付着を喪失させる。矯正治療すれば、歯周ポケットを作り、歯肉退縮、骨退縮を誘発する。歯医者として患者教育をやっていくには、この行為が正しいと自己欺瞞を利用し、人を巧妙に陥れ、誠実なまま嘘をついていかなければならない。自己欺瞞に陥っていれば、自分の言葉を真実と信じて話せば、一段と説得力が増す。患者さんを巧妙に陥れ、誠実なまま嘘をつくには、自己欺瞞によって、自分の言葉を真実と信じて話せば、説得力が増し、この技能を身につけることによって、患者教育、口腔衛生指導を成功に導く。

顔における口腔の役割(2008年)

熱帯の人は、表面積の大きな頭、小さくて前後に長い頭を持つ。寒冷地の人は、体熱の放散を防ぐ為、頭は大きく丸くなった。頭の形は、長さに対する幅の百分率で示される。短頭:81以上、長頭:76未満、中頭:その中間である。頭形は気候の影響が大で、熱帯の人は平均、77.3、寒冷の人は、81.6で、日本人は、83.8で短頭に入る。熱帯地方の人は、寒冷地域よりも小柄で、体に対する対表面積の比率を高くして放熱が多い体型にする。寒冷地の人は、大柄で、体積に対する体表面積の比率が小さく、体熱の放散を防ぐベルグマンの法則がある。エスキモーは、背は低いが脚も短く、体の割りに体表面積は小さいのは、寒冷下の体温面積に有効である。脳が肥大化し、鼻を圧迫されるように進化した為、鼻は、左右に偏り、鼻筋は曲がる。縄文時代の鼻が高かったのは、上下前歯が毛抜きのように接触する切端咬合だった為の咬合による力学的影響である。切端咬合は、鼻根部に大きな力が加わり、鼻根部が隆起し、高い鼻になる。弥生時代以後は、鋏状咬合になり、上下の歯が鉸のように接触するようになり鼻が低くなった。口腔内が熱に晒されるようになったのは最近なので、熱に対し鈍く、熱くて持てないようなものでも口の中に入れることが出来る。舌や口の中は唇や周囲よりも熱さに強い。舌の先は、温度受容器や神経線維の密度が高く、舌の真ん中と異なり、敏感で、45.9°で痛みを感じる。鼻指数とは、鼻高(鼻の高さ)に対する鼻幅の百分率をいう。過広鼻型は鼻指数が100以上、広鼻型は、85.0-99.9、中鼻型は、70.0-84.9、狭鼻型は69.9-55.0、過狭鼻型は54.9以下であるが過狭鼻型以下の人種は知られていない。日本人は、70-90の中鼻型から広鼻型で低くて短い。白人は、約66で長く細い狭鼻型である。アフリカに住むブッシュマンやピグミーは、100を超え、日本人を凌ぐ鼻の短さで、長さよりも幅の方が長い過広鼻型である。細長い鼻ほど、吸気は、鼻腔で熱と水分が与えられる。寒く湿度の低い北極圏に住むエスキモーの鼻指数は、68.5を示している。北ヨーロッパや中東の空気が乾燥し、冷たい地域の人の鼻は、肺に行くまでに加温、加湿される必要があるので、細くて長い鼻が発達した。湿度の高い、アフリカやアジアの人は、鼻は短くて広がった鼻に発達した。新古典派やルネッサンス期の基準では、鼻の幅は、両目の間の距離に等しく、顔の幅の1/4、唇の幅の2/3であり、鼻の高さと傾きは耳に一致し、鼻の長さが耳の長さと一致するとされている。

歯周病と健康を考える(2008年)

歯周病が全身の健康に関係することが判明し、AAP(米国歯周病学会)はPeriodontal Disease(歯周疾患)をPeriodontal Medicine(歯周病)に正式名称を変更した。歯周病は病気であるので、一つの要素だけが原因になることはなく、心理的、身体的、いろんな要素がからんで発症する。患者さんの態度の悲観度や反応、苦痛の状況を解決できない為に不安感を抱いていると、免疫機能が低下して歯周病などの病気になりややすい状況ができる。内在微生物は、体内でビタミン合成を助けたり、ストレプトコッコス(連鎖球菌)が宿主との間に共存を築くことによって病気を防いだりして歯と歯茎の間に感染してもなんともない人もいるのに、何かの拍子に、体内のヘルぺスを呼び覚まし、嫌気性菌のみならず、真菌、カンジタなどの真菌などが関与して、歯周組織のバリアが弱め、歯周病を悪化させ、全身の病気を誘発させたりしている人が居る。何が違うのか考えてみたい。

 

小児の口腔衛生指導(2009年)

過保護な子供は、大人になってから社会的接触において苦しむ。子供同士で遊ぶという社会的効果を経験していないと、いじめにあったり、内気で引っ込み思案となりひきこもる。過保護や虐待を受けた子は、人の本性である攻撃性や残虐性を表出させてしまう。ジェーン グルードは、人と98%遺伝子を共有しているチンパンジーが近隣の群れを惨殺し壊滅させる様を報告した。フロイトは人の残虐性は本能的気質であるから、協調性、共感性を養うことは人間社会を成立させる上で重要だとした。子供は、大人をモデルにして彼らの行いを同一視の規制が作用して模倣し、新しい反応を習得していくので、小児の口腔衛生指導を成功させる為には、成人と異なった小児の行動特性を考える必要がある。

包括的歯科治療の役割(2009年)

1952年、ブロネマルクは、骨がチタンの表面に付着することを偶然に発見した。1964年、歯科に応用され、1976年、ブロネマルクインプラントシステムが確立された。デンタルインプラントの出現は歯科の治療、方針を変え、多くの歯科医に影響した。インプラント表面の酸化膜と表面形状が骨との結合を可能にし、周囲に骨が再生される。歯周ポケットへの感染は、別のところに感染し、心臓、糖尿病の問題を引き起こし、生死に関わる重大な疾患でポケットを放置していくと、別の部位に感染が進行することが判り、歯が維持出来るような状況であっても当該歯を抜歯してインプラントを施す。歯科治療の目的である審美、健康、機能を回復する為には、インプラントのみならず、矯正、外科、歯周の包括的歯科治療の知識を要求されるようになってきている。

 

患者教育を考える(2010年)

患者さんは、不快な治療や無愛想な歯科医や衛生士さんに治療を受けていると患者さんの血圧は上昇し、感じの良い人に治療を受けていると下がる。一方、治療者側もクレマー患者さんから抗弁しなければならないという状況におかれていると、免疫系からTリンパ球が分泌され血管壁からTリンパ球を結びつける物質が分泌され、動脈の内皮にプラーク形成が始まり、歯周病同様に心臓疾患のリスクが高まる。テリー タナカは「ポケットの中に入れたスプリントが最も効く」、ヘンリー タケイは「歯医者がいじると問題が始まる」、ヒポクラテスは「第1に患者さんを害しないことだ」言った。歯科治療は、Compromiseといって、患者さんを害してしまうが、それを減らすためには両者の関係を築き、治療を円滑にするためには、患者教育が必要であり、いかにして歯科治療の中に取り入れていくか考えた

 

見えない矯正治療を臨床に取り入れるために(2011年

Appearance-concerned devices as the door for socialization

歯並びが悪いと、歯を出して笑うことを避け、不自然な笑い方を覚え、劣等感に陥ったり、ひきこもってしまいがちになる。以前、自分の子どもの悪い歯並びに悲観した母親がその子を殺した事件があった。歯並びなどの外見は人に快、不快刺激を与え、好感、嫌悪感を誘発し、扱いに影響し、良い人は良い扱いを受け、悪い人は悪い扱いを受ける。悪いと社会的出会いを回避し、不適応感を和らげる為にひきこもるというような防護策を身につけ、社会的適応度が低くなる。矯正治療を始めとする歯科治療は口元や顔の外見を美しくすることができるので、自分の外見が変わって魅力的だと思うようになると、対人技能能力は高くなり、その社会的波及効果は、社会的行動に影響して自信のある行動パターンを形成し、自己評価が安定して適応度も高くなる。このように、歯はコミュニケーションに関わる部分なので、良し悪しによって、好感、嫌悪感を持たれるので、歯並びを治したいと思っても、矯正治療を受けている人の絶対数が少ないので、矯正装置を見られるなどしてプライバシーの侵害、匿名性の権利の喪失などを経験したり、自尊心、尊厳を喪失させるのではという不安から躊躇してしまう。実際、矯正装置がからかいの対象となるのは日本に限ったことではない。矯正治療を受けることが社会的、職業的地位に貢献し、社会的に成功する手段だと考えられている。そのため、矯正装置が見えないプレートタイプの矯正装置や裏側で治療する舌側矯正治療が注目されている。

Those people with crooked teeth tend to avoid laughing, learning to laugh in a strange way (covering up teeth, or not opening mouth),and start to avoid socialization. A few years ago, we were shocked to hear an incident in which a mother killed her child with crooked teeth, being pessimistic about his/her future. In other words, people with crooked teeth tend to give a bad impression to other people, causing mal-adaptation to the society. Therefore, dental treatment, especially orthodontics, which can improve their appearance, tooth alignment and face formation will provide patients with psychologically positive effects. Once a patient starts assuring his/her appearance, his/her communication also will become effective, and s/he will start to adapt him/herself to the society much better, as s/he will have high self-evaluation about him/herself. In this way, teeth are deeply related to the issues for communication--it affects the other people’s impression. However, as few people go to orthodontists for treatment in Japan ,there is still a negative feeling about orthodontic treatment, such as fear, anxiety, and embarrassment. Having orthodontic device and showing brace on their teeth is embarrassing especially for those who already have lost their self-confidence about themselves, and it makes them feel reluctant to proceed with orthodontic treatment. It is significant to change people’s idea and perception of orthodontic treatment as it contributes to the improvement of social as well as economical status of patient.  We will propose ways to increase the number of orthodontic patients in order to restore their self-confidence, such as invisible orthodontic device, e.g. plate-shaped device and lingual brace, etc.

 

TMDにおける咬合治療の必要性を考える(2012年)

The need of  Occlusal Treatment in TMD.

はじめに

 木から降りてきた我々の先祖は立ち上がった結果、手が自由になって顎を使わなくなったかわりに群れを作って道具を使うようになった。道具を使用し集団が大きくなれば、社会的関係に対応するために脳が肥大化し頚や顎に負担が増大した。二足歩行を選び文明を作った人類の宿命とされているが、ストレスに対する防衛規制として食いしばりするようになり、咀嚼器官への負担が増大し多くの人がTMD(顎関節)を経験するようになった2)。TMDとは口腔顔面痛の一つであり、顎関節に痛みをおこす疾患の総称である。近年、TMDに対するプロトコールが明確にされ、投薬、行動療法などのメディカルモデルの治療が広まっている。歯科医が疼痛管理の専門的な知識がなくとも咬合治療というデンタルモデルを用いていかにして治療に参加できるか考えた。

 

MMTB(Modified Magnetic Twin Block)の考案(2015年)

The development of Modified Magnetic Twin Block

(目的)MMTBは、氷室利彦教授が紹介したTwin Blockに磁石を付加して改良した機能的矯正装置である。この治療の目的は、顎の成長を刺激して適応させ、ClassⅠ関係の確立することである。欠点となる患者協力を強いる、装置に治療目標をプログラムできないという点に対し対処する方法を考えた。(方法)患者協力を得られやすくし、また、治療目標を装置にプログラムできるようにするために装置を分割した。上顎骨に垂直的な力を加えコントロールしやすくするために装置に磁石を組み込み反発力を利用した。(結果)装置を分割し磁石を組み込むことで、セファロ上の治療目標を達成することが可能になる。また、Over Correctionが得られるので、前後的構成咬合量は通常の半分で済み、患者協力、治療期間も少なくて済んだ。(考察、結論)咬合平面はFixedのようにコントロールできないが、Fixedとの併用もでき、磁石の位置、角度を変えることで反対咬合、開口などの症例にも対応できることが判った。

 

小児歯科患者の理解と支援(2018年

生れて、生涯は上って下りて、生涯を閉じる。発達を捉えるとき、重要な3つの視点がある。ドイツのBaltes(1987)は、発達は「獲得と喪失」、つまり「成長と衰退」で、ダイナミックなシステムとして捕らえることが出来る「獲得・喪失モデル」を示した。加齢に伴い、できないことの出てくる一方、補償的、代替的なメカニズムが発達していく。このモデルは、厳密には、環境への適応能力(adaptive capacity)の獲得と喪失に関する理論で、環境への適応は、加齢による影響を受ける典型的なものだ。バルテスは、人間は一生を通じて発達するという『生涯発達』の観点から、人間の人格形成に関与する要因として三つの影響力をあげた。発達時期における遺伝と環境の役割を示し、遺伝、環境は、発達の時期によって影響が大きく異なってくる。A.「標準年齢的影響」発達の初期は年齢に伴う生物学的影響が大きく、年齢とともに少なくなっていくが、最後また、生物学的影響を受けるようになる。B.「標準歴史的影響」発達の中頃の青年期当たりに文化などの影響を強く受ける。スマホなどの電子機器の影響を大きく受ける。C.「非標準的影響」:加齢に伴って影響が大きくなっている。例えば、綺麗にするような個性は年齢とともに強めていく。

Baltes,P.S.et al.(1980) Life-span development psychology.Annual Review of Pschchology,31,65-100.

 

【演題名】歯科治療と食事指導(2019年)

【目的】食物連鎖の頂点のヒトは他の生物を食べ、栄養素に分解して体を再構成する。食物連鎖が成立するのは、微生物からヒトまで同じ構成化学式だからで、それを構成する食品を考察した。【方法】例えば、成長障害や不正咬合を予防するために穀物、豆類に含む消化酵素を阻害する結果、蛋白質を消化不可にするプロテアーゼインヒビターなどの自然毒を処理するために加熱を指導したりし、食品の生体調節作用や安全性を患者教育に組み込むか考えた。【結論】ブドウ糖で生存できる微生物と異なり、ヒトは外界への依存度が高い。血糖値が上昇すればインスリンで下げるが、それも食品からの栄養素による化学反応で維持する。食品、軟食化と不正咬合の相関関係があるとするが、因果関係があるかわからない。顎関節症と咬合、歯周病と健康も相関しているのかもしれない。相関しかわからない疫学に科学的因果関係を与える食品の研究から情報が得る必要があると思われる。

 

ガミースマイルの治療(2022年)

【Ⅰ目的】前歯部露出のガミースマイルでポケットがあれば歯肉切除を行う。ポケットが無ければクラウンレングセニングを行う、もし、歯冠が長くなるのであれば、矯正治療を行う。臼歯部露出まで及んでいれば、上顎骨挙上が望まれる。【Ⅱ方法】上下唇の中央に上顎切歯を位置させ、それより上に来くると短く見え、下にくると長く認知されないようにする。【Ⅲ結果】上顎中切歯は長さが10mm未満だと短く、11mm以上だと長いと認知されるので10~11mmの露出にする。【Ⅳ考察】上顎前歯の長さ、ポケットを計測し、歯周外科で長くして良いか判定する。ポケットがあれば歯肉切除し、無ければクラウンレングセニングを行う。歯周治療の適応症は、短い臨床歯冠長、過剰な歯肉縁によるガミースマイルということになる。歯冠が長ければ、矯正治療の適応で上顎前歯を圧下し、歯肉辺縁を上げる。過蓋咬合は、下顎前歯露出でもあるので、下顎前歯も圧下する必要がある。

 

認知・行動療法による異常機能・行動への対応(2023年)

持続したストレスは、咀嚼筋を緊張させ、機能異常を誘発し顎関節症を齎し、頬筋を緊張させ顎を狭め、頤筋が緊張して不正咬合に導く。歯周病をはじめ、多くの歯科疾患はストレスが発症、経過に関わり、ストレスなどによって額に皺が寄っている人は頭痛を、頤にしわが寄っている人は歯並びが悪く、口が開いている人は顔が長くなり、肩が前にきている人は顎関節症を被っていることが多い。このようなストレスで身に着けてしまった行動・認知パターン、ストレスに起因するような習癖、異常機能などを有する患者さんに対し、緊張、弛緩を認識できるように漸進的筋弛緩法、慢性疼痛に対し注意訓練やマインドフルネス₁₎を加えた認知行動療法₂₎を適用し、症状を軽減させた。かつて、私は不安などによるストレスを被りうつに見舞われ頭痛を被り、安定剤や鎮痛剤に頼っていた。草の根歯科研究会の岡田弥生先生が主催した臨床心理学者の小野恵子先生の認知行動療法(Cognitive BehaviorTherapy:CBT)の講習会に参加し、習った認知行動療法を自分に試してところ、高血圧、症状が軽減した。その後、ストレスなどに起因する異常機能、習癖などを有する多くの歯科患者さんに適用するようになった。

 

手作りアライナーの適応症と作成法(2024年)

Crafting Custom-made Tooth Aligners:Technique and Clinical Applications.

【目的】軽症の不正咬合、鼻気道障害の患者について、どのような装置が効果的か、装置を自作し適用を検討した。【方法】接触点の接触圧を弱め、歯を移動しやすくし、舌房、萌出余地を確保するため上下顎に拡大装置を用いた。顎関係の改善、叢生を促す頤筋と顎を狭める頬筋を弛緩させるためにアライナーと併用してフランケル装置を用いた。【考察】骨格的ディスクレパンシーはフランケル装置で改善した。治療の過程でしばしば、前歯部、臼歯部開口が出現すること問題であるが、歯の挺出、強いティッピング、短い臨床歯冠の歯の場合、アタッチメント装置が必要であった。拡大装置やフランケル装置の拡大効果で鼻気道障害が好転する。【結論】考案した拡大床は、軽度の鼻呼吸障害、不正咬合には効果的だが、抜歯ケースには適用できない。抜歯ケースであればインビザラインを用いるか、あるいはアナログアライナーを自作しなければならない。