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全身咬合学会発表演題

【演題】演題行動とライフスタイルの管理(2003年)

 姿勢が悪いと頚部痛や腰痛に至らせる。例えば、肩下がりやなで肩、円背等は肋鎖間隙が狭窄し、肋鎖圧迫症候群を誘発したり、足くせに問題があると、腰痛を生じてそれが頚部痛に発展させ、その痛みから逃れようと傾斜した側湾状態を示すかもしれない。その状態が歯科治療や咬合治療で治ったら治るべき時期にありプラシーボ効果と考えるのが妥当であるかもしれないが、愁訴を解消する為にも姿勢や首、肩や腰の抗重力筋を鍛える方法を指導したりすることで歯科医として治療に参加する事もできると思う。人は、加齢とともに椎間板が水分を喪失して変性し、椎体と椎体が擦れ合い、椎体の辺縁に骨棘が出てきたり、靭帯に石灰が沈着したりして椎間腔が狭窄していく。そして、椎間板が変性で不安定になった背骨に対し骨棘を作って接触面を拡大し、靭帯の石灰化や骨化によって安定を図る。この現象は加齢に拠る老化現象に対し生体が適応しようとしているのであるが、このようにして生じた疼痛は、悪い姿勢、運動不足、精神的ストレスが主たる原因である場合が少なくないので、その場合、全身を使う努力とストレス解消を指導する事によって疼痛の軽減につながる事も考えられる。又、日本人の30%が有する特定の遺伝子が歯周病を誘発するIL-1Βの産生量が多い事が判っている。口腔内のグラム陰性の嫌気性菌は歯周組織が炎症を起こすと血中に侵入するので、歯周病は心臓病、呼吸器系疾患、糖尿病、早産等の全身との関係が知られ、我々歯科医は医科的な既往歴はとる必要性に迫られている。例えば、歯周病に関連した黴菌が、血流によって運搬され冠動脈のアテローム硬化症に罹患し易くなる。又、歯周疾患に罹患すると、血中プロスタグランディンの濃度、産生が高まり、子宮の収縮が起こり早産を誘発する。そして、歯周炎に罹患している糖尿病患者は、血糖の調整が困難になるが、免疫系を好転させる事によってIL-1Βのレベルを下げ、歯周組織の反応を良くする事が出来るといわれている。逆に、オーラルハイジーン等の歯科治療によっても、IL-1Βレベルを下げ、全身へ影響することも可能であると思う。全身と関連した問題に対し歯科医としてどのようにして治療に参加できるのか考えてみたい。

 

【演題】視診の役割について(2007年)

【目的、方法】人は、ストレスや精神的葛藤があると、食いしばりをその慰安に利用する。しかし、夕方に顎が痛くなるとすれば食いしばり、起床時に痛くなるとすれば、歯軋りが誘引になる。このパラファンクションによって円板が癒着し、開口障害に発展した場合、視診によって原因を探す。もし、歯の磨耗が発見できれば前歯のかみ合わせが浅いことに起因していることを認識する。このように、診査、診断には、原始的な問診、視診、触診が非常に有効であり、我々歯科医は、聞いて、見て、触って、その人の痛みを理解しようとし、「視診の役割」について考えた。【結果、考察】顎関節症だと自認している患者さんの多くは、身体に対する過度の心配しているだけであることが多い。そして、感情的なストレスを肉体の苦痛と取り違えていることもある。顎が痛いのは、かみ合わせが悪いからですとか、かみ合わせが悪いと頭が悪くなる、頭痛になるとかマスコミ、歯科医が警告していることによる社会因性に起因していたりする。その理由は、口腔衛生指導、あるいは、行動指導などで改善できる場合が多いからである。又、優しくされた経験があると、食いしばって些細な刺激で痛いと感じるようにオペラント学習し、疼痛の感じ方、痛みに対する不安、体の事を意識する、同情を受ける、責任から逃れる、不快な行動を避けるというような経時的に慢性疼痛行動が出現し、良くならないことから利得を得ようと、身体表現、あるいは転換することもある。ストレスや悪い姿勢は、後頭部からうなじ、こめかみ、眉間、顎などに痛みをもたらす。痛みが持続的になると、こめかみや後頭部、首筋がしめつけられ、首や肩のこった感じという形容が伴ってくる。そして、頭や首に痛みの存在が持続するとこれが原因になって、姿勢や顔つきの異常になってくることがある。デカルトによるとある一つの現象(原因)は、必ず他の現象(結果)を引き起こし、現象の間には、因果関係があるといった。そうせざるをえなかったという見るべき必然性が横たわっていることになり、視診のような原始的な検査が大切だと思う。

 

【演題】視診の重要性(2008年)

【目的】ラマルクは、体を使わなければ退化すると、そして、ダーウィンは、顎は退化していると言った。人の先祖は、道具を製作し、それを使用して食物を細かく砕いで摂食するようになった。そして、火を使用して焼いてやわらかくする為に、顎の退化が進行した。さらに、家畜、牧畜を始め、食物の軟食化が進行に拍車をかけた。又、直立したことによって、手が自由になり、物の製作、あるいは、会話の使用は、脳の肥大化、非対称性化に拍車をかけ、鼻を圧迫して非対称性になり、鼻呼吸が不完全になり、口腔周囲筋のホメオスタシスを崩し、顎が後退し、気道を確保する為に体の姿勢が変化した。類人猿は成長過程で、平坦な顎が突出し、脊柱尾部や膣が真っ直ぐになるのであるが、人は、胚期の脊柱尾部の湾曲状態は変化せず、顎が前方に突出せず、顔が平坦で後退傾向にあるので、バランスを取ろうと頭を前に出すと舌骨筋が緊張して顎が後方に成長する。その状態を維持する為に頚部の筋肉が疲労し、後部神経を圧迫して顎関節症、さらに頚部痛、腰痛もちになった。加えて、ヒト化したことによって、精神活動が活発になり、くいしばりなどのパラファンクションを誘発するようなった。こういった姿勢やパラファンクションのような行為の問題に対して、咬合や顎関節の問題を示唆することができる器具よりも、原始的な視診の方が有用であり、いかにして、視診を臨床に取り入れていくか考えた。【結果、結論】多くの顎関節症は、咬合の問題よりもくいしばりなどの習癖が誘因である。意識しないで行われる行為が存在するが、顎の痛みの最大の原因であるくいしばりなどのパラファンクションは意識しないで行われる行為である。これらの行為の原因は、心の内部の傾向、緊張であり、心理的原因、意味を持ち、なんらかの精神内部の葛藤に起因している。行為は、無意識下、あるいは、意識化の欲求によって為されるが、欲求阻止の状況が続くと、代償行為が取られ、このような習癖に発展しがちである。子供の場合は、口愛的快感を欲求する為に母親を求め、満足が得られなければ指しゃぶりなどの習癖を行うので、ウィニコットは、指しゃぶりなどの習癖を母親から他者への関心が移行する段階であるとして移行対象と呼んだ。ティスモンド モリスは、口腔習癖は、動揺したりした時に出現し、自らの体を触ることで安心感を得ようとし親密性を求めるのであり、自己親密性といった。フロイトは、満足をもたらす口愛欲求の原型とみなし、子供の口愛と成人の性愛との間に連続性があり、性的快感の延長であるとみなした。このような問題に対し、この原始的な視診を用いることによって、歯科医として、治療に参加することができるようになると考える。

 

【演題】顎関節症の行動指導について(2011年)
事前抄録

【初めに】顎関節症などの疾患や病気は、悪い力やランダムな力によって生じるのではなく、過去に働いた自然淘汰のせいで起こる。疾患は、遺伝子の伝達を最大化するように自然淘汰が体を作ってきた挙句の妥協の産物で、残された子供たちのもっている遺伝子の利益のために存在する。私たちがもつ感情も、自然淘汰によって適応的に作られている。人の場合は、不安を感じると、不安を解消する為、運動連合野は、食いしばり行為を行うように運動野に指令を出す。それを受けとった運動野は、その情報を脊髄の運動神経を通して筋肉に伝え、食いしばり行動を起こす。この食いしばりに適応できないと顎関節症になる。【方法】顎関節症のように疾患の発生に心理的因子が誘引になっているか、心理的因子が治療を阻害している場合は心身症といわれる。かみ合わせが悪いから、顎がずれているから顎が痛いといって来院する人の殆どは、器質的な変化ではなく、その事実に対する心の態度から誘発し、患者さんに不安から生じ、痛みを訴えるようになっていることが多いので、このような患者さんに行動指導した。【結果】硬いものを噛んで、顎への痛みの出現したことを教えると硬いものを噛む行為が阻止されることがあった。また、多くの開口困難は、痛みという記憶によって開口障害が誘発されている。痛みという開口を躊躇させる原因がなくなったことによって、あるいは、開口しない行動を強化するものがなくなれば、開口困難は解消されることがあった。【結論】開口困難は、痛みという記憶によって開口する行為が抑制されていることが多いので、痛みという記憶がなくなったことによって、開口できるようになるからである。負の強化因が消失すれば、再発するのは、その行為を維持していた痛みの記憶という強化因が存在するからである。スプリントを入れると食いしばりを止めるが、スプリント上でその行為が再発するのは、その行為を維持していた強化因が存在するからであると考えられる。【考察】痛みの度合いや頻度は疼みを訴えた状況によって制御されている。どちらかというとヒステリー性格の場合、疼痛に誰かが同情するひとが居るとオペラント学習し、疼痛が持続される疾病利得を示す。こういった行動は、周囲が強化したものかもしれない。顎関節症の症状の一つである開口困難も、繊維性癒着のような器質的な問題よりも心理的な問題に原因があることが多く、開口困難の強化因がなくなれば、開口困難は解消されることも多いと考えられる。

事後抄録

【目的】顎関節症の90%は食いしばりによる筋痛によって誘発される。食いしばりは、心理的な誘因によってもたらされているので、顎関節症は予防もセルフコントロールもできる。そのため、患者教育による信じたことに固執するBelief Polarizationの解除、行動療法、肯定的な気分を高揚させ、不安を減少させるアルファ波の振幅を増大させるリラクゼーションなどを指導して行動を観察する必要がある。【方法】疼痛に対し、自分のパーソナリティ、認知、行動様式などの問題を認識し、認知、行動、習癖、生活様式を変える技術、適応する方法を指導している。加えて、正しい姿勢、睡眠、硬いものやくちゃくちゃして食べるのをやめる、クリック音やHypermobilityを改善するためのタングアップエクササイズなどを指導している。【結果、考察、および結論】疼痛部位を顎に訴える場合、顎関節症の治療をしても治せなかったのは、顎が原発部位で無く、姿勢などに起因する関連痛であったからであり、疼痛部位では無く、疼痛の原発部位に対する治療をするべきで、咬合ではなく、姿勢などに対して治療をしなければならない場合も少なくない。我々歯科医のみならず、患者さんも顎が痛いという原因が噛み合わせという確信から逃がれることはできない。反証を突き付けられたときに信念を捨てることはIdentityを喪失することになるのでさらに信念にしがみつくというBelief Polarization があり、また、自分が見たいと思う相関関係が勝手に見える錯誤相関関係もある。人は、偏見さらされ、自分の行動、思考はなにも理解していなく、意志は弱いが攻撃的であり、自分が有能で道徳心に富んでいると思って自我を守るために、前の治療が悪いと思ったりして他人を責め、記憶をすり替える傾向がある。

 

【演題】パラファンクションとその対策(2013年)

事前抄録

【目的】顎関節症の90%は食いしばりによる筋痛によって誘発される。食いしばりは、心理的な誘因によってもたらされているので、顎関節症は予防もセルフコントロールもできる。そのため、患者教育による信じたことに固執するBelief Polarizationの解除、行動療法、肯定的な気分を高揚させ、不安を減少させるアルファ波の振幅を増大させるリラクゼーションなどを指導して行動を観察する必要がある。【方法】疼痛に対し、自分のパーソナリティ、認知、行動様式などの問題を認識し、認知、行動、習癖、生活様式を変える技術、適応する方法を指導している。加えて、正しい姿勢、睡眠、硬いものやくちゃくちゃして食べるのをやめる、クリック音やHypermobilityを改善するためのタングアップエクササイズなどを指導している。【結果、考察、および結論】疼痛部位を顎に訴える場合、顎関節症の治療をしても治せなかったのは、顎が原発部位で無く、姿勢などに起因する関連痛であったからであり、疼痛部位では無く、疼痛の原発部位に対する治療をするべきで、咬合ではなく、姿勢などに対して治療をしなければならない場合も少なくない。我々歯科医のみならず、患者さんも顎が痛いという原因が噛み合わせという確信から逃がれることはできない。反証を突き付けられたときに信念を捨てることはIdentityを喪失することになるのでさらに信念にしがみつくというBelief Polarization があり、また、自分が見たいと思う相関関係が勝手に見える錯誤相関関係もある。人は、偏見さらされ、自分の行動、思考はなにも理解していなく、意志は弱いが攻撃的であり、自分が有能で道徳心に富んでいると思って自我を守るために、前の治療が悪いと思ったりして他人を責め、記憶をすり替える傾向がある。

事後抄録

【目的および方法】フロイトは無意識を発見し、指しゃぶり、くいしばりのみならず、ほとんどの行為が無意識に行われていると主張した。実際、何かを指示されると、運動前野という運動プログラムする箇所が動き始めて、1秒経過してから動かそうとする意識が現れ、動かそうという脳が準備を始めてから、大脳皮質で動かそうという抽象的なクオリアが生まれている。人は、緊張、不安などに誘発される転位行動の代替として食いしばり、指しゃぶりなどの無意識に口を使う。幼児も母親との分離不安を感じる状況において指しゃぶりするが、防衛機制の内の「退行」の一つで発達の段階に逆戻りする現象であると考えられている。欲求、不安に対し、口を使うことで、苦悩が深めないようにしている。レビーは乳首の孔の大きいビンで牛乳を飲ませた犬は、十分な口唇満足を得ることが出来ず、噛んだり、しゃぶったりする行動が多くなることを見つけた。Levy,D.M.:Fingersucking and accessory movements in early infancy  American Journal of Psychiatry,Ⅶ,881,1928.飼育下のヒョウなどの動物は自分の尻尾を噛む、霊長類を隔離すると、指しゃぶり、食いしばりという転位行動が見られる。捕食動物が非捕食獲物に逃げられると、置換という転位行動を取る。動物は相手のテリトリに入ると闘争、あるいは逃走しようとする衝動に陥るのであるが、このような相反する葛藤において、くいしばり、毛づくろい、体を掻くなどの転位行動する。動物行動学では、乳児は、乳を摂取する為のみならず、口愛的快感を繰り返し欲求する為に母親を求め、母からその満足が得られなければおしゃぶり、指をしゃぶろうとして、安全な胎内に戻ろうとしているのであり、欲求不満が解消されない、したい行動が出来ない時や不安を感じたとき、目標に代え、転位行動、置換という防衛機制をして、不安な時に安心する自己親密性に近い転位行動をとり、自我が崩れないようにしていると考える。フロイトによると、欲求の鬱積と緊張が高まれば、エネルギーの解放を求め欲求不満を体験し不快になり、このエネルギーの解消するプロセスで快を体験しよう口腔習癖に発展する。止めさせようとすると、欲求阻止状況にあると欲求不満に陥り、試行錯誤的に問題の解決しようとするのであるが、試行行為が成功すると行為が継続される。それでも欲求阻止されると、代替行為がとられ、さらなる口腔習癖に発展したり、その時期に固着が起こり、気まぐれで両極端で、自己顕示的な傾向を持つ、境界性パーソナリティに近い特有な口唇期性格が形成される傾向がある。禁止され、その欲求が抑圧されると、後に神経症(不安障害)といった症状に変形されて姿を現してしまうという。しかし、指しゃぶりを5歳以上になってもやりすぎると不正咬合に、オケソンは8秒以上食いしばりする人が疼痛に見舞われることを明らかにした。不正咬合、顎関節症をもたらすと判っているにもかかわらず繰り返してしまう無意味な行為がなぜ淘汰されないで残っているのか、どのようにしてその行動に対処するべきかを考えた。【結果、考察および結論】指しゃぶりは、胎児の時からやっているのであるが、続いている場合、愛情飢餓、ストレスの兆候であると考えられる、かつて、フロイトは、口腔満足が母親への愛着に関する発展を促し、この口腔満足欲求を性欲の原型であり、子供の口愛と成人の性愛との間に連続性を主張して大人の性的快感の延長であり、同質のものであるとした。ウィニコットは子供がやる布やぬいぐるみを抱く行為を母親から他者への関心が移行する段階であるとして移行対象としたのであるが、指しゃぶりはその次の移行対象で、更にぬいぐるみやおもちゃに移行する。移行対象をひきずり続ける場合、母子分離時期に、愛情飢餓が起きているという。R.F.マイヤーは、その習癖に罰したりするとその時期の習癖が固着するとした。NormanR.F.Maier,Frustration,The University of Michigan Press,1961.ソークの育児書によると、乳児期の初期に、この原始的な欲求を満たしてあげることによって、自立が促されるが、禁止すれば自立が阻害されるという。欲求不満が解消されない、したい行動が出来ない時も、転位行動によって代用目標に代え満足させようとする。代わりに代替をしなければならないので、習癖になるのである。この幼児性欲求ともとれる習癖は、性格の基礎構造、正常人格の土台を形成するかけがえのものであるので気が済むまでやらせ、問題に発展しそうなときは、指しゃぶりなどの口腔習癖に対しオーラルスクリーン、食いしばりに対してスプリントなどの代替方法の使用させる。しかし、それより、安心させることが大切であると考えられる。習癖が不正咬合、TMDや歯周病などの歯科疾患の原因に影響しているのであれば止めさせる方法を考え、指導していかなければならない。そうでないのであれば、我々の行う口腔衛生指導は、パラファンクションを止めさせて口腔満足を奪うのではなく、スキンシップを図り、口腔満足による安心感を与えることにあると思われる。

 

【演題】患者教育の役割(2014年)

【目的】病気や疾患は、生物学的要因だけでなく、心理、社会要因が複雑に絡み合って作用しているとする生物心理社会モデルが登場している。口腔疾患も環境からの外的因子だけでなく、遺伝的素質、行動、心理状態、社会・文化的要因に起因しているとし、単なる身体内に限定される問題ではなく、疾病の発生と健康の阻害に、心理、社会的要因が関与していると考えるようになってきている。口腔の健康は全身に影響し、口腔疾患の多くは生活習慣病といわれるようになり、既往歴のみならず、リスクファクターの評価が要求されている。リスクファクターには、Systematic Risk FactorとBehavioral Risk Factorあるが、歯科疾患の病因に、個人の習慣、生活、行動様式などが遺伝や社会環境と同様に関与しているので、疾患誘導パーソナリティや行動的病原をコントロールするための患者教育の役割、我々歯科医の患者教育のスキルを高める方法を考えた。【方法】生活習慣病はストレスに関連のある病気であると言われ、顎口腔系のストレス関連疾患として、歯周病、虫歯、顎関節症、舌痛症、口臭ノイローゼ、歯並びや顔などに対する身体醜形障害などが報告されている。口腔疾患が個人の生活や行動と結びついているとすれば、患者教育が要求されるだろう。患者教育は、患者の知識を増やし態度、行動を変えるために、情報を提供し、行動上のリスクファクターに対し、行動様式、習慣、性格特性などを認識させ、ストレスに対処する技術、適応する方法と、そのレパートリーを増やし、質を高めることであると考えられる。【結果】たとえば、AAPは、Periodontal Disease(歯周疾患)をPeriodontal Medicine(歯周病)に正式名称を変更した。これに従って我々歯科医は、歯周病は生死に関わる重大な疾患だとして患者教育を行っている。しかし、このような強い脅しは、相手を惹きつける効果はあるが、ショックが強すぎて与えられた情報が正しいのかどうか自分で考え、納得して行動することができなくなり、患者教育のみならず、脅しは説得力という意味では逆効果なり、恐怖を高めこそすれ効果がないが多い。また、教育する術者側の知識、技術に起因するが、知識、態度、信念、価値観などの先行因子に主眼をおいた患者教育は、恵まれた条件下にある人には有効であっても、ほとんどの人に影響を与えることはできないでいた。【考察おび結論】急性疾患の場合は、投薬のコンプライアンスを期待することができるが、術者の資質にもよるが、行動、習慣を変えようとする患者教育は、困難を極める。投薬するという指示だけでなく、行動変容をもたらすような働きかけが要求されるからでもある。しかし、バウマイスターが示したように実験的に社会的に拒否された状況を作ると、人はその状況を予測するだけで、健康行動をとらなくなってしまうことを明らかにしている。このように、人は、予期の判断、思考、イメージなどの認知が、行動の形成と維持、不適応の原因になっているとするならば、認知的行動に修正を加えて行動や習慣を変えるために、我々、術者側の患者教育のスキルを高めていく必要があると考えられた。

 

【演題】自然頭位を診断の基準線にした歯科治療(2015年)

事前抄録

【目的】矯正治療などの歯科治療の診断の基準線は、FH PlaneやSN Lineが用いられ、それらに用いられるSella、Nasion,あるいは、Porion、Orbitaの基準点にばらつきがあるので、それを基準にしたセファロと、臨床的な外観は一致しない。下顎が良い位置にあったとしても診断では違った値で出てくる。頭蓋内に求めた基準点の違いによって、値が違って出てくる。そのため、顔面頭蓋の分析に当たって自然頭位を用いて、社会に露出している顔を評価して治療した。いかにして自然頭位を基準線として用いるかを考えた。

【方法】姿勢などを評価したりする場合、壁に鉛直線の紐を降ろしたり、壁にその線を引いたりして自然頭位を基準する必要がある。写真撮影は,立位の自然頭位で写真撮影するため、歩いたり、鏡をまっすぐ見させてから行う。安定のために足を少し広げ,口唇を楽に開けた状態で横顔を撮影し、その写真上で、1.グラベラから鉛直線を引く。2.グラベラ-軟組織ポゴニオンラインを引く。3.鉛直線とグラベラ-軟組織ポゴニオンの角度を計測する。セファロ撮影では頭位をチェックすることができないので、写真撮影したときの角度を上唇を楽に開けて撮影したセファロに移す必要がある。その場合、は耳に入れないで前方に置くだけにしなければならない。セファロ上で、1.グラベラ-軟組織ポゴニオン線を引く。2.グラベラから写真上で計測した角度の線を降ろし垂直線とする。【結果】正貌セファロにおいて、篩骨鶏冠から降ろしたCG垂線は、顔の対称性を判断する。側貌セファロにおいて、自然頭位を基準線にし、それに平行に鼻下点からの降ろした垂線であるSNV (Sub Nasale Vertical)Lineは、顔貌における問題点、治療方針などを明らかにする。【考察および結論】結論進化は獲得と喪失というトレードオフが背中合わせに進んだ。直立すると咽頭が重力方向に落ち込み、咽頭の周辺領域に空洞が作られた。この空洞によって、筋肉の動きで空気を振動させ、微妙な声を作ることができるようになった。ヒトは、直立と引換えに、腰痛、内臓下垂、難産という三重苦を背負った。咽頭腔が長くなり複雑な音を出せるようになった代わり、ヒトは気道に食物を詰まらせて窒息するリスクを負うハメになった。直立すると、手が自由になり、使わなくなった顎の退化が始まった。道具作りが始まると非対称的に効き腕が確立される。ヒトに効き腕が生じ、脳、そして、顔面口腔にも非対称性が形成されるようになる。右手をコントロールする左半球が早期に発達し、左半球の方が大きくなり、顔や全身に非対称が生じ、それを基準にする自然頭位を用いるべきである。

事後抄録

【目的】矯正治療などの歯科治療の診断の基準線は、FH PlaneやSN Lineが用いられているが、ばらつきがあるので、それを基準にしたセファロと、臨床的な外観は一致しない。頭蓋内に求めた基準点の違いによって、値が違って出てくるので、顔面頭蓋の分析に当たって自然頭位を基準線として用いた。【方法】横顔写真上で、1.グラベラから鉛直線を引く。2.グラベラ-軟組織ポゴニオンラインを引く。3.鉛直線とグラベラ-軟組織ポゴニオンの角度を計測する。セファロ撮影では頭位をチェックすることができないので、写真撮影したときの角度を上唇を楽に開けて撮影したセファロに移す必要がある。その場合、は耳に入れないで前方に置くだけにしなければならない。セファロ上で、1.グラベラ-軟組織ポゴニオン線を引く。2.グラベラから写真上で計測した角度の線を降ろし垂直線とする。【考察、結論】われわれの直立した姿勢は、過去に働いた自然淘汰の結果である。1万年前、ヒトは、農耕が始めた。農耕文明は利益をもたらしたが、代償を強いることになった。その代償の一つが腰痛だ。農耕での種まき、収獲など、長時間の前かがみする姿勢をとるようになったことが、背骨の変形を招いていた。前かがみになると、体の体重を支えようと背筋が後方に牽引する。背筋の力が椎間板に大きな負荷がかかり椎間板に悪影響し、腰痛を誘発される。直立は、それらの損失を超える利益をもたらし、自然淘汰によって、適応を生みだし、維持されている。心臓、肝臓も一つで、元々、右利き、言語が持つと半球の大きさが変化し、頭の姿勢も変化し、顔を右を回す傾向が出現し、斜傾が生じ、姿勢が変化する。姿勢が変化すると、頭を維持する為に、頚部筋が緊張し痛覚刺激が加わると、頚神経が興奮し、疼痛の痛覚刺激が発生する。その状態が持続されると、支配する筋が防御反応を誘発し、2次的に挙上筋の収縮が生じ、開口障害、筋痛など顎関節症症状が出現し、疼痛が誘発される。頚部の痛みを脳は顎関節の痛みとして認識するようになる。姿勢は、顎位、咬合位も決定するので、姿勢は、咬合同様、顎関節症の1要因である。はぎしりも、舌、顎、全身の姿勢、睡眠中の姿勢が関与している。咀嚼でも、嚥下でもなく、負荷が加わっているのは、不自然な位置で顎を動かした時、はぎしりという形で、問題が発症してくる。そのため、姿勢を診断するため、自然頭位を基準にした診断する必要があった。

 

【演題】パラファンクションの管理と対策(2017年)

【目的】通常、嫌な出来事があったりすると、感情が自動思考を作り、さらに不安になったりすると身体反応としてパラファンクション、くいしばり行動を生じることがある。顎関節症の原因の約9割はくいしばりなどのパラファンクションによる筋痛であるとされ、そのパラファンクションを管理するために、どのような行動、認知に変化を起こせばよいのか?作用しあっている人の反応と環境において悪循環があると、心理的問題や症状につながることがあるが、どこがつながって悪循環を起こして症状になっているのか、いい循環に変えるにはどうすればよいか?私たちの勉強会では、問題の成り立ち、介入箇所を明らかにし、パラファンクションを管理することを考えた。【方法】環境、刺激に対する認知(スキーマ)は、感情、情動をもたらし身体反応を起こすように環境という刺激に反応して結果になる。しかし、思い込みのスキーマをもっていると感情も変わり、結果的に身体反応も異なってくる。その結果はまた、環境に働きかけ、1.問題を引き起こす刺激、2.刺激によって誘発される不適切行動、3.反応によって誘発される結果の悪循環によって問題が維持される。刺激、行動、結果の流れを図式化し、状況を単純化し、認知行動療法でパラファンクションの悪循環の改善を試みた。【結果とまとめ】人には、特有の見方、考え方、行動パターンがあるが、それが強いと疼痛を進行させたり、回復を妨げたりする傾向がある。周囲の配慮、責任感が強く、優しい人がパラファンクションを誘発する。社会に不適応的になる傾向があり過度の負担になる。そうしてことが、ストレスとなり、防衛機制としてパラファンクションをもたらし、顎関節症を誘発させている。そのため、もともともっている資質を大切にしながら、資質が裏目に出ないように、対応のレパートリーを増やすことが疼痛からの解放に役立つと思われる。パラファンクションを誘発するような不安、イライラといったネガティブな感情をコントロールすることは一朝一夕ではできるものではない。出来事は起こってしまったものなので変更できないが、考えや見方の変更は可能である。私たちの勉強会では、患者さんの言ったことを受容して認め、その状況で、どんな考えが浮かんだか?自動思考を聞き出し、患者さんが不安やパラファンクションを誘発したのが自動思考だとわかってくるように導いてあげることで、その自動思考をへこませ、アセスメントし、パラファンクションや疼痛を軽減することを試みている。

 

【演題】自然頭位を用いた口腔評価(2018年)

【目的】歯牙を配列すれば顔との調和が図れるわけではないことも多く、顔や口の美の基準を示すのは軟組織であるので、軟組織評価も要求されることもある。実際、顔の特徴を表現するのは軟組織であり、硬組織が確実に表現するとは考えられないので、歯科治療の計画は、歯牙や硬組織のみならず、軟組織評価も取り入れることも試みられている。自然頭位の状態でのSNVライン(Sub Nasale Vertival Line)の軟組織評価は、口腔顔面の軟組織評価のみならず、解剖学的な評価,そして診断,治療方針を明確にする非常に簡便な方法であると思われる。症例を通して、この簡単な診断方法をいかにして歯科治療に取り入れるかを考えた。【方法】自然頭位を用いた軟組織評価のために、横顔の写真と側貌X線写真を用いる。写真撮影は、自然頭位にするために、まず、鏡をまっすぐ見させてから撮影する。安定のために足を腰幅くらいに少し広げてさせ、口唇をリラックスした状態で横顔を撮影する必要がある。まず、横顔写真上で、1.Gr Perpen.Lineグラベラ パーペンディキュラー Lineグラベラから鉛直線を引く。2.Gr-Soft Tissue Lineグラベラ-軟組織ポゴニオンラインを引く。3.鉛直線とグラベラ-軟組織ポゴニオンの角度を計測する。次に側貌X線写真上で、1.グラベラ-軟組織ポゴニオン線を引く。2.グラベラから写真上で計測した角度の線を降ろし垂直線とする。3.垂直線に平行に鼻下点からのSNVラインを引く。4.SNVラインから上唇,下唇,頤までの距離を計測し、その値を基準値に近づける。【結果、結論】自然頭位を用いた軟組織評価は、わたしたちが介入することができる顔の審美性に関与する唇や頤の形態、位置を認識させ、治療プランニングを明確にする。このラインだけで簡単に治療プランニングでできると思われる。

 

【演題】鼻気道障害に対する歯科医の役割(2019年)

【目的】医師の今井彰によると、考案した舌挙上訓練を目的とした「あいうべ体操」で、鼻づまりや口呼吸を改善し、アデノイドを消退させ、アトピー、うつ病、鼻性多動症、学習障害を改善して普通学級に戻している、治せない2割は、上顎拡大装置を装置で解消しているとし、歯科医にこのデンタルモデルでのネイザルケアを勧めた。一色泰成によると、日本で最初に矯正歯科臨床教育を始めた榎本美彦は、不正咬合は鼻づまりによって誘発された口腔周囲筋、舌の異常によって生じているので、矯正治療以前に、鼻呼吸障害の改善が先決だとしていたという。Jeffersonは、鼻づまりがREM睡眠を減らし、前頭葉機能障害を誘発し、頭痛や不安障害、情緒障害、うつ病、学習障害を引き起こすことを示した。山田哲郎は成長期のニホンザルで、鼻づまりの酷さが顎顔面成長異常や歯並びの酷さと相関していることを実証した。テリー田中によると、アデノイド肥大が耳閉塞感を誘発し、それを解消しようと歯ぎしりしだすのだという。眠時無呼吸症候群を定義したGuilleminaultは、成長期は、骨が軟らかいので、デンタルモデル治療の介入で眠時無呼吸を予防し、脳血管や心臓疾患などを未然に減らせるとした。McNamaraによると成長期の患者の多くは上下顎の緩徐拡大を行うことで多くの矯正治療を回避できるという。私たちの勉強会において、鼻づまりや顎が狭い成長期の患者さんに対し、上下顎を拡大し舌を拳上して咽頭肥大を消褪させ、舌が気道を閉塞しないように下顎を前方に位置させ、鼻気道障害や不正咬合を予防しようとした。【方法】鼻づまり、いびき、歯ぎしりが多いという成長期の患者さんに緩徐拡大装置を装着した。拡大率は、1週間に半分、1か月で1mm、半年で約6mmで、夜間のみ使用させ、その後、半年間、夜間のみ保定させた。下顎後退が治らない患者さんに対し、磁石の反発力を利用して前方位を維持した。成長期かどうかは、McNamaraらが考案したCVM(Cervical Vertebral Maturation)で判断し、CS1からCS4までの成長期にある患者さんに適用した。【結果、考察】上顎が拡大され、舌が拳上されて鼻呼吸が促されることによってアデノイド、扁桃腺が消褪し、いびき、無呼吸、歯ぎしりなどが解消された症例も多かった。McNamaraは、成長期に顎を拡大すると、ClassⅢは治療中に、ClassⅡは保定時に次第に改善されるとしていたが、ClassⅡがさらに酷くなる症例もあり、鼻づまりを改善しても再発することもあり完治させることはできないと思われた。

 

歯科治療患者さんの行動の管理(2010年)

【目的】新型コロナウィルスの感染の拡大、それに伴った経済不安によってストレスを被っている人も多いと思われている。国連のグテーレス事務総長は、各国政府にメンタルヘルス対策を呼びかけた。世界保健機構WHOも新型コロナのストレスによる、うつ病、自殺などの急増を警告し、メンタルヘルス対策を要請した。WHOは、健康とは身体的・精神的・社会的に良好な状態であり、単に病気・病弱ではないと定義した。そのため、私たちの勉強会では患者さんのメンタルヘルスに影響する行動に配慮したりして如何にして歯科医として治療に参加できるか考えた。【方法】認知バイアスとは、状況をどう解釈するかによって、同じ状況が全く違って見える周囲の状況を認知するときの癖、傾向である。それが、性格、行動、そして、痛みの感じ方にも影響することが知られ、人によっては、物事をネガティブに、あるいは、ポジティブにとらえる傾向がある。私たち歯科医も患者さんが記憶のバイアスがかかってしまってネガティブなことが記憶され、悲観的な主訴を聞くことがしばしば経験している。例えば、矯正治療で顎がおかしくなった、顎が痛くなった、歯を抜かれてしまったとか、認知バイアスが強い場合、ネガティブな考えに疑問視できるようになって貰うため、私たちの勉強会では、日記に書いて貰ったり、マインドフルネスなどを実践して貰ったりして選択的な記憶バイアスが働いていると認知できるように促している。

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【結果とまとめ】ネガティブに考えるかポジティブに考えるか認知バイアスに左右される。認知バイアスとは、自分の思い込み、不安などのために論理的な判断を下せなくなる心理パターンとされている。患者さん指導は、患者の認識にバイアスがかかっていること、ただのバイアスでしかなく、思っているほどやっかいなものではないということを気づかせることだ。顎が痛いという慢性疼痛を被っているような患者さんに日記につけてもらうことによって選択的な認知バイアスが働いていることが判るようになることが知られている。悪いことしか起きないと考えていた患者さんも、日記を書くことによって、記述の中に悪いことだけでなく良いことも探しだすことできるようになることがある。良いことに意識的に向き始めるとポジティブな出来事に気づくことができるようになり、注意バイアスを転換させるきっかけになる。適度なネガティブな考えは非常に大切であるが、思いこみは、健康を脅かすことが知られる。日記で記述した中にポジティブな記述もあることでネガティブなことに心を奪われることなく公正に見ることができるようになる。

 

【演題】認知行動療法の歯科治療への応用(2021年)

【目的、方法】

認知行動療法の第1世代は、行動療法で、外に出現した行動を改善しようとする行動療法、第2世代は、行動に影響する認知を取り入れ体系化された認知行動療法。第3世代は、マインドフルネス認知療法やACT(Acceptance Commitment Therapy)など、マインドフルネス瞑想を取り入れた介入プログラムでマインドフルネス認知行動療法とされ、マインドフルネス(気づき)を基礎に置き、心に浮かぶ思考や感情に従ったり、価値判断をするのではなく、ただ思考が湧いたことを一歩離れて観察する¹⁾、図1)、この技法を取り入れ、否定的な考え、行動の再発を防止する。認知は、精神的健康に影響することからその内容を変更することが提案されていたが、現在、認知を変える対象から観察するものとして扱う。例えば、顎関節症はくいしばり、不正咬合は開口癖などの情動行動がみられるが、このような行動に対し何かのこだわり、機能、意味があると捉える。¹⁾Kabat-Zinn, J (2013).Full Catastrophe Living: Using the Wisdom of Your Body and Mind to Face Stress, Pain, and Illness. New York: Bantam Dell.「日常で瞑想自分客観視」『読売新聞』2018年3月20日付朝刊、くらし家庭面。

【方法】認知行動療法では、ABCモデルで問題の意味、原因をどう考えるかどう受け止めているかという認知的側面を理解しようとする。口腔衛生が悪いのは、くいしばりするのかを理解するには:どんな時に、B:どんな事をして、C:どんな結果になったかと捉えることによって、行動の役割、意味、機能の仮説を立てる。

問題がどのように発現し、悪循環となり維持されているかを説明するメカニズムに関する仮説を作る。認知行動療法で行う機能分析は、刺激-反応-結果の繋がりと認知・感情・生理反応・行動の繋がりに基づいて問題の発現・維持を整理し、悪循環を〇、□の中に記入し、図を作る。「刺激-反応-結果」と考え、環境・刺激→認知・思考し、→感情・情動が起こり→生理反応・身体反応→行動・表現→環境に戻ってきて、問題が維持されることを考察する。緊張や不安などの防錆規制で食いしばりしてしまうと筋肉が過緊張、過使用することで顎の筋肉が痛くなる顎関節症を起こす。その痛みは不安を誘発し、行動表現としてくいしばりを誘発し、その行動、認知を維持させてしまう。その悪循環に対する対策として顔面、頚部の緊張を弛緩させるために、リラクゼーションや漸進的筋弛緩、ゆっくりの呼吸を指示する。呼吸法の効果、手順を説明し、この呼吸法を起床時、寝る前、ベッドで行うことなどを宿題にした。【結果】この技法の一つのセルフ・モニタリング法などを自分のうつ病に適用したところ、血圧、脈拍、体重に変化が見られた。効果を実感し、認知行動療法の技法を歯科患者さんに適用しだした。顎関節症の患者さんのNRSの数値の変化である。歯科治療現場でも来院患者の中にいろんな問題を抱えている患者が存在し、違った背景、特徴、ニーズがあるそれぞれに展開していくことが必要になる。認知行動療法は、多くの問題は習慣、パターンになっていて、正の強化法などを適用して変えていくのである。痛くないといわせるたりさらに、痛くないと思うように念じてもらうと逆に痛いと思うと痛くなる。しかし、痛みを観察させてみましょうというと、積極手的に受け入れるようになる、治療において、痛いと思わせると痛くなる、どんな痛みが教えてくださいというと痛がらない。内的に気づき、注意を向け、内的体験を言葉でラベルづけし、自分がしていることに自覚し、思考や感情に対して良悪などの評価を下さないで、思考や感情に動じたり、振り回されずにそのままにしておくことだ。

 

【演題】歯科治療におけるストレスマネーメント(2022年)

【目的】私は、うつに襲われ、高血圧や頭痛を被り、安定剤や鎮痛剤に頼っていた。岡田弥生先生が主催した臨床心理学者の小野恵子先生の講習会に参加し、自分に適用し症状を軽減させた。その後、リラクゼーション、注意訓練や瞑想などをストレスに起因するような習癖、異常機能などを有する患者さんに適用した。歯科疾患もストレスが経過、発症に関わり、米国歯周病学会は歯周病の原因にストレスを挙げる。ストレスは体を調節する間脳に機能障害を起こし、抵抗力、免疫力、ホルモンに影響する。機能的障害とは働きの異常だが、顎関節症や頭痛に見られ、症状が誘発されてもX線所見に器質的障害が見られず、見られても症状はないことが多い。これらの病態にはストレスが関与し、如何にしてストレスに対応していくのか、ストレスで身に着けてしまった行動パターンをどう変えていくのか?考えた。【方法】額に皺が寄っている人は頭痛を、頤にしわが寄っている人は歯並びが悪く、肩が前にきている人は顎関節症を被り、これらの多くは、ストレスが経過に関わり、生活習慣の是正、それでもよくならない場合はリラクゼーション法、瞑想を適用した。このような方法は、毎日続ける習慣化が大切で、日中の仕事などの合間に漸進的筋弛緩法、寝る前に5分の瞑想を強いた。【結果・まとめ】ストレスが加わると心身の慢性緊張状態が誘発され、それを弛緩することでストレス状態が緩和される。漸進的筋弛緩法に適用している肩の上げ下げするボクシングのショルダーブロックで筋緊張させ、ノーガードのスウェーで筋弛緩させることで緊張・弛緩を認識させ、体を揺らすことでリラクゼーション効果を高めることができる。瞑想は、認知機能を向上させ注意力を高め、疼痛を客観視させ軽減させることができる。人には、特定の思考、行動パターンがあり、認知行動療法は、特定の思考・行動を、認知リハビリテーションは、思考のベースとなる前頭葉機能の認知機能を鍛え、生活習慣を整えセルフケアを促進する。これらは、非適応的な行動・思考パターンを系統的に変容する行動科学的治療法で、系統的に変容とは練習で変えるという意味だ。歯科患者さんも非適応的で習慣的な行動・思考パターンや食いしばり、開口癖等の行動パターンがある。それらを維持している理由を理解し、練習によってよい方向に導く。改善されなければ、練習の方法に問題があるという立場をとる。