睡眠歯科学会演題
【演題】睡眠と情動(2024年)
【目的】睡眠は加齢、食事、疲労、環境音、温度の外部環境から影響を受け、質、長さが変化する。不安・恐怖などの情動が起因して眠れなくなる、眠れないと不安などの情動が誘発される。睡眠不足が続くと認知機能低下、ADHD類似症状、反応時間遅延、肥満、そして、食いしばりや顎関節症などの筋痛が誘発される。そのため、不安などの情動に起因する睡眠不足・睡眠障害の患者さんに認知行動療法を適用した。【方法】睡眠不足・睡眠障害に由来する歯ぎしり、顎関節症の患者さんに第3世代の認知行動療法に取り入れられているマインドフルネスなどを適用した。例えば、眠れない時、呼吸をコントロールせずに観察して貰う、呼吸に対する注意が逸れて不安という情動が出現したら「不安」とラベリングして、また、呼吸に戻す。情動を抑制するのではなく、気付いて放っておき、ある状態・ない状態を見比べ観察して貰う。【結果】不安、不眠、痛みも、体の症状にこだわる人にしばしば強く見られる。このような患者さんに対してマインドフルネスやACT(Acceptance & Commitment Therapy)を強いた。不安、痛みも体に任せてコントロールさせましょう、アクセプタンスしましょうという方法で、アクセプタンスすることだけで症状の軽減がみられた。【考察】情動に起因する問題は不安だが、不安などの情動は不眠を併発する。睡眠不足によって生じる筋肉痛、発育遅延、肥満、認知機能低下などは、この不安などの情動によっても生じている。不眠の人は眠れないから考える、考えるから眠れない、眠れなかったらどうしようという不安が負のスパイラルに入る。不安などで眠れなくなり、寝つけないと不安が高まるが、その情動を受け入れるようになることで不安が軽減され眠れるようになるのである。睡眠不足、睡眠障害の患者さんに対し、最初に行うべきことは、不安や恐怖などの情動への対処で、認知行動療法は心の働きに由来する問題に対応することができると思われた。 |